ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

エロ・キングの援助で今年を締めくくる。

2016-12-30 23:08:34 | 日記
1年の締めくくりにこんな話どうかと思うが
暗い話よりいいだろう。

今日、96歳のジイチャンの入浴援助に入った。
年末年始で登録ヘルパーがボコボコ休暇をお取りなさるので
このところ常勤職員もフル回転。
これまでほとんど接する機会がなかったそのジイチャンの援助も
いつものヘルパーに代わって私が受け持つことになったのだ。

このジイチャン、エロくて有名である。
ずいぶん前にもここに紹介したことがあるのだが
96歳にして80代と40代のカノジョがいるという
ウチの“キング”だ。

さてその“キング”の入浴援助。

お風呂ですよ~!と声掛けすると、キングはいきなり脱ぎ始めた。
そしてスッポンポン状態でベッドに仰向けになると、言った。
「あんた、美人だねえ」

あ~ら、ありがとうございます。
もはや58歳の私には、そよ風で頬を撫でられたくらいのお愛想でしかない。

しかしさすがはキング。
「ああ、あんたとヤリてえよぉ」「拝ましてくれよぉ」
と、エロい言葉を連発してくる。

それでも色をなさずに風呂の準備をしていると
今度は違う戦法で攻めてきた。

「あんた、若いころはさぞかしキレイだったんだろうなあ。
女優さんでもしてた?。
オレが若いころによく見た田舎芝居の女優さんによく似てるんだよねえ」

はい? なんとおっしゃった?
若いころはキレイだったろう?
“田舎芝居”の女優?

おい、こら、じじい! いい加減にしろよ!

しかし1時間ほどの援助中
自分の股間をさらし、エロトーク満載であるにもかかわらず
実際には触れてくるなど猥褻行動などこれっぽっちもないキング。
援助が終わると
「ありがとね~」「また来てね~」と引き際のいい態度を見せるキング。

かわいいわぁ。

★2016のブログはこれにて終了とさせていただきます。
 また来年お会いしましょう。
 どうぞよいお年を。






クリスマスキャロル

2016-12-25 01:29:41 | 日記
おっさんと二人で過ごすクリスマス・イブ。

どこかでご飯を食べようか?ってな話も出たが
いやいやいや、やっぱり家でのんびりと…ということになり、結果
ケンタッキーのバーベキュー・チキンにラザニア
アップルパイ、チーズ、大根とパクチーのサラダ、ワインと
いつもの3倍贅沢なご飯を堪能しながらクリスマス映画を観よう!
ということになった。

さてそこで迷うのが、映画である。

これまでに観た映画の中から選ぶとなると
「ポーラー・エクスプレス」
「素晴らしき哉、人生!」
「34丁目の奇跡」
「東京ゴッドファーザーズ」
あたりが即座に思い浮かぶ。

う~ん。悩むところだ。

散々悩んだ末
今夜二人で鑑賞したのは
テッパンのクリスマス映画「クリスマス・キャロル」。

ケチの極みである金貸し・スクルージーのもとへ
過去・現在・未来それぞれの世界へ彼をいざなう3人の精霊が現れ
自分の現在と過去がどんなに醜悪だったか
そして自分の未来がどんなに惨めになるかを見せつけられたスクルージーは
初老となったクリスマスの夜に改めて
金より愛が大切であることを知るってな物語である。

クリスチャンではない私
そして“金より愛が大切”とは思っちゃいない不謹慎な私であるが
クリスマス・シーズンに「クリスマス・キャロル」を観ると
そーよね、そーよね
クリスマスに家族と温かいご飯が食べられるって
それだけで幸せなことなのよね、と
妙にしみじみしてしまう。

クリスマス・キャロルというと
稲垣潤一の「クリスマスキャロルの頃には」しか
思い浮かべられない世代が多くなってしまったようだが
原作であるチャールズ・ディケンズの小説はもちろん
それを元にした映画(アニメやミュージカルバージョンも含め)も
この時期、ぜひ楽しんでいただきたいものである。












そのボタンこそ、押してくれるな~~~!!!

2016-12-20 00:11:31 | 日記
徘徊癖のセツコが、ついにやらかしてくれた。

夜中に近隣住人のチャイムを押すだけでは
飽き足らなくなったのか
ついに、火災報知機のボタンを押してしまったのである。

その日の夜勤は3ヶ月前に入社したばかりのK子ちゃん。
どんなにパニクッたことだろう。
ああ、かわいそうなK子ちゃん、気の毒なK子ちゃん。
そう哀れみながらも
己の夜勤日でなかったことに胸を撫で下ろす
性悪のワタシであるが・・・。

私にしたってそうした事態には不慣れだが
入社まもないK子ちゃんが緊急時に適切な対応をとれるはずもなく
現場を確認して通報が誤りであったことを
消防署に連絡すればよかったところ、それをしなかった。
がために、何台もの消防車に分乗して
20人ほどの消防隊員が集結してしまったという。

坂を上りきったところにある小さな町は
けたたましいサイレンに大騒ぎ。
もちろん住宅に住む高齢者たちも
「また誤報か?」
「いや、こんなにサイレンが鳴り止まないのだから
今日こそはホンモノの火事に違いない」
と、てんやわんやだったらしい。

しかし、これはセツコの仕業である。
深夜2時、2階とされる火災現場に1階に住むセツコがいたというのだから
それは、疑いようがない。

あ~~~、やってくれちまったねえ、セツコよぉ。

介護職員がどんなに頭をひねっても
医療の力を借りても
今のところ、なすすべなし。

カンカンに怒る他の利用者たちが言うように
セツコのドアに外から鍵を掛けてしまえばいい。
火災報知機のボタンを何かで覆ってしまえばいい。

しかし、いずれも法に触れるということで許可が降りない。

こんな一大事を抱えて
法もへったくれもあるかよ!と思うのだが。

入居当時まだここまで認知症が進んでいなかったセツコは
それは上品で腰の低い女性だった。
コミュニケーションに難はあっても
人に迷惑をかけることなど微塵もない女性だった。

それがこんなことになってしまい・・・
腹立たしいやら悲しいやら哀れやら
いやいやそれ以上に
次の夜勤が怖ろしくてならない私である。

そのボタン、簡単に押してくれるな!

2016-12-16 19:04:59 | 日記
なんという爽やかな夜明けだろう。

実際はまだ太陽は頭も見せていない、ただただ黒い空を見上げ
私は夜勤明けのタバコをふかす。

眠れない、お腹が空いたを一晩中繰り返すリツもカヨコも
死んだか!?と思うほど大人しく寝ていた。
徘徊によって職員は愚か利用者の皆さまに多大なる迷惑をかけ続けるセツコも
きのうはなんとか1時半に寝てくれた。

介護の神様、ありがとう。
アナタは私たちを苦しめるばかりじゃなかったんですね。

しかし、いやいやいや・・・
やっぱり世の中そんなに甘くない。

平穏な夜勤明けに感謝しながら
次々とやってくる登録ヘルパーを迎えようとしていた朝7時。

コールは鳴った。

へりくつ王・ジュンヤだ。
この爺様とかかわると話がとんでもなく長くなるので
日ごろは挨拶程度にしているのだが
ああ、よりによってヤツからのコールである。

どうされましたと電話を取ると
「足が動かなくなった。助けてくれ!」と言う。

転倒か!? 急げ!!

イザというときの合鍵を使って部屋に入ろうとしたら
なんと、U字ロックキーがかかっている。
これでは入れない。

わずかに開いたドアの隙間から叫ぶ。
「ジュンヤさあん、どうしました? 立てないんですか~?」
「ロックがかかっているからお部屋に入れないんですけど~?」

頭の中では、専用の特大バサミでU字ロックキーを切る覚悟でいた。
非常時だ、あれを使うしかない。

ところが、中からこんな返事が。
「あ、そうか。待ってて。今開けるから」

立てなくなったから助けに来いと言ったはずのジュンヤは
すたすたと歩いて玄関まで来ると
平然とロックを外したのだ。

ジュンヤさん、足は? 

「いやあ、そうなんだよ。
なんだか痛いような痺れるような・・・
朝起きたら立てないような感じだったんだよね。
まいった、まいった。さあ、入って、入って」

入って、だとぉ!?
脊柱管狭窄症で日ごろから痺れを訴えてるその足
思いっきり蹴ったろか!!!

しかし、言っても仕方ないことだとわかっちゃいるが
どうしてジイサマ、バアサマたちは
緊急ボタンの意味を理解してくれないんだろうか。









年末―おっさんに感謝を送る。

2016-12-15 01:37:26 | 日記
おっさんが折り紙先生としてデビューした。

近しくしている画材屋ら折り紙教室の講師として招かれ
8人の生徒に正月用のお飾りやポチ袋の折り方を
教えてきたのだ。

趣味でやっているだからいいですよ、と固辞したらしいが
2時間ほどの時間を費やして、受け取ってきた講師料3500円。

やったね、折り紙先生としてはじめてもらったお金じゃん!

2日前、私は彼を褒め称えた。

そして今日
休みだった彼は仕事から帰ってきた私を飲みに行こうと誘う。

「この間の講師料、お前のために使いたいんだ。
オレがこんなに幸せになれたのは、お前のお陰だから」

え、え、え、あら、そう?
そこまで言うんだったら、ゴチになろうかしら?

かくして
駅前にありながら8年間行ったことのなかった小さな飲み屋へ。

正直、そこはあまりにもお粗末な飲み屋だった。
けばけばしい化粧を施した老女が一人で切り盛りする店で
出てくる料理も「これで金を取るのか!?」と
どつきたくなるような代物だった。

でも、そんなチープな雰囲気がかえってよかったのかもしれない。

おっさんと二人、いろいろな話をした。

オレは今、人生で一番幸せ!というおっさんに
ほろ酔い加減の私は思いの丈を打ち明ける。

私も幸せよ~。

アナタが破産する前まで毎日スポーツクラブに通い
映画、演劇、旅行、友だちのランチや酒と
贅沢三昧の生活をさせてもらってきたけど
でも、アナタに気を遣う毎日だった。
エラそうで大酒のみで、実際、大金を稼いでくれてきたアナタに
逆らう気力も体力もなかった。

それが今、アナタのご機嫌をうかがうことなく
仕事も友だちとの交友も楽しむことができる。
生活は決してラクではないし将来を考えたら絶望感がないとは言わないが
日々の暮らしだけを考えたら
ありがと~~~!だわ。

レモンサワーをおかわりしながら
「ごめんな、あのころは本当に悪かった」と笑顔で謝るおっさん。

いいんだよ、
私が選んだ夫だもの。私が選んだ人生だもの。

これからも仲良く生きていこうぜ。
だけどね、おっさん
アナタが日ごろの不摂生によって介護を必要の身となったら
私は容赦なく捨てる。

それだけは、覚えておけよ。