ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

気の毒だわ、大家さん。

2017-10-31 21:58:10 | 日記
27歳の男が9人の人間を殺害、遺棄したというニュースで
今日のテレビは持ちきりだった。

狂ってるわぁ。

これが、私の最初の感想。

そして次に湧いた感情が、“同情”だった。

被害者に対して、ではない。
この犯行が行われたアパートの大家さんに、である。

過去にも同様の事件はあったけれど
考えてみたら、大家さんの怒りを聞いたことはないし
大家さんに同情する声を聞いたこともない。
(ように思う)

でも大家さんだって、いや大家さんこそ被害者じゃないか!?

だって、これからその物件はどうなるのか?
事故物件といって安く貸し出すのかもしれないが
そんな凄惨な犯行が行われた部屋だ、
私ならタダでも借りようとは思わない。

今回の現場であったアパートは
ニュースで見る限りまだ新しい。
となると潰すわけにも行かないだろう。

こういう場合、何等かの保険が下りるのか?
賠償金を請求することができるのか?

無知な私はあれこれと考え
そして、アパート経営なんかするもんじゃないなと
具にも付かない感想で落ち着くのであった。


ハルオの受難は続く

2017-10-29 22:40:25 | 日記
夜勤中の午前1時
ハルオからコールがあった。

注:ハルオは手足拘縮でほとんど寝たきりの90代男性。

助けてくれ~~~!!!

絶叫にも近いコールを受け、私は居室に走る。

と、そこにいたのはケイコ日記でお馴染みのケイコ。
認知症により著しく理解・判断・記憶能力の低下した
ハルオの妻、ケイコである。

ベッドに横たわるしかない大木のようにデカい夫・ハルオ
その身体に覆いかぶさるようにして
「この子を連れて帰ります!」と、ケイコは叫ぶ。

ハルオは拘縮した手足を必死にバタつかせながら
助けてくれ~!と抵抗している。

今は夜中だから、明日にしましょう
そう説得を重ねて
やっとの思いでケイコを部屋に連れ帰ったが…

もはや、朝だか昼だか夜だかわからず
目の前にいる男が夫だか息子だかわからず
夜毎、アグレッシブな行動を繰り返すケイコ。

ハルオの受難はまだまだ続く。


ホテルのランチブッフェ

2017-10-28 00:46:14 | 日記
来週の土曜、名古屋から小学校時代の友達がやってくる。

目的は大学の同窓会だが
2年に一度のその機会に
彼女は必ず、私にも会おうと連絡をくれるのだ。

私と過ごすのは昼間の数時間しかないが
せっかくの機会だ、心をこめてもてなしたい。
おととしは横浜のラーメン博物館に案内した。
その前は、確か有名な和食料理屋さんの昼定食をご馳走した。
さて、今回はどうしようか。

食べることが大好きな肉食系の彼女
そうだ、お洒落なホテルのランチブッフェを楽しんでもらおう。

そこで休みであった今日
私は午後からずっと
ネットで都内のホテルのランチブッフェをやっている店を探し回った。

ところが…
1週間前であるにもかかわらず、店はどこも予約でいっぱい。

うっそだろー!?
世の中には、ホテルのランチブッフェを楽しもうという人が
そんなにいっぱいいるのか?
3000~4000円もするのに~!!!

舐めてましたね、私。
この日本、私が思うほど景気は悪くなさそうだ。

ALLWAYS 三丁目の夕日

2017-10-23 23:43:23 | 日記
今年の春から、利用者さんのために映画鑑賞会を開催している。

ウチは施設ではなく住宅だから
本来は事業所主催のレクリエーションなんぞ考えなくたっていい。
でも、住人であるジイチャン、バアチャンから
「生きる張り合いがない」とか
「ここは生き地獄」とか
そんな悲しい言葉を聞かされ続けたら
よっしゃ、なんとか少しでも笑顔になれる時間を!
と、思ってしまうわけで。

提案したのはこの私だから
当然、上映作品のチョイスにも力が入る。

初回はリクエストが多かった「ローマの休日」。
次からは「カサブランカ」、「サウンド・オブ・ミュージック」
「男はつらいよシリーズ」と
私が過去に観たものの中から
高齢者や認知症の人でも楽しめるような作品を上映し
どれも好評だった。

「カサブランカ」はどーかな?という思いもあったが
90近い女性から
「人はあそこまで人を愛せるのか、考えさせられたわ」
なんていう感想をもらうと
高齢者だから理解するのは難しいだろうと思うのは失礼だよね
と反省もしたりして。

(ただし、それを聞いた俄か映画通のヘルパーが推薦した
「英国王のスピーチ」は
難しかった、高尚過ぎてよくわからなかったと不評だったが)

さて、10月の映画はどうする?とマネージャーから相談され
私はこの間から考えていた作品を提案した。

それが、「AIIWAS 三丁目の夕日」である。

昭和33年、建設中の東京タワーの足元で暮らす人々の
温かいストーリー。
これだ!!!
駄菓子屋、模型のプロペラ飛行機
近所の人たちと一緒に観る、力道山のテレビ中継。

この時代におそらく結婚したり子どもを育てたりしてきた
今の高齢者は
懐かしさに胸を熱くするだろう。

はい、やってきました上映日。

仕事中、私は気になって幾度も上映場所である食堂に足を運ぶ。
みんな、食い入るようにスクリーンを観ている。
そしてラスト。
エンドロールが映し出されたとき
会場から、すすり泣きと共に拍手が沸きあがった。

「いい映画だったわあ」
「懐かしくて涙が出たわ」
みなさん、かなり喜んでくださったようである。

朝起きて、ご飯を食べて、ちょっとゆっくりしていると今度は昼ご飯
そのうち夜が来てまたご飯を食べて…
そんな毎日を送っている高齢者に
涙するほど感動的な時間を提供できたと思うと
準備に費やした時間も体力も全然惜しくない。

ああよかった!と自己満足しながら
皆さんをお部屋にお連れする。

ボロ泣きしていた認知症のミネさんをお部屋にいざないながら
感想を聞いてみた。

するとミネさん
「へっ? 私、映画みたの?」

あっちゃ~~~!!!

ま、仕方ないか。これが認知症だ。

記憶にとどめることはできなくても
喜びや感動の時間が確かにあったのだから
うん、それでいい。

さあ、来月は何の映画を観てもらおうかしらね。

看取り

2017-10-22 01:16:22 | 日記
カニエさんは末期癌。
まだ60代の男性なのだが
もはや癌は脳にまで転移しており
家族がウチでの“看取り”を希望して9月に入居してきた。

入居当時はまだ自力で歩き、食事もとれていた。
ところが今月に入ってから急激に衰え始め
食事はとれても数口
歩こうとして転倒、転倒
発語も支離滅裂で、コミュニケーションが取れない状態だ。

それでも、人間の生命力のなんと強いことか。

余命3日と告げられたのは2週間前のこと。
そのときでさえ主治医は言ったものだ。
「この状態で生きているのは奇跡です」と。

正直言って、介護するこっちはキツイ。

医師や看護師が常駐していない環境で
本人や家族が治療も緩和ケアも希望しない状況で
“看取り”だけをお願いされているのだ。

日に日に弱っていきながらも
必死に生き続けているカニエさんを
私たちは見守っていくしかないのである。

カニエさん、もう、頑張らなくたっていいよ。

彼に向かって心でそうつぶやく私は間違いか?

ああ、今日は夜勤。
カニエさんの手を、ギュッと握り締めよう。