ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

わからなくなっちゃう。

2018-10-30 00:51:18 | 日記
バアチャンたちのトイレについて、前から疑問に思っていた。

1、なぜ、トイレットペーパーを少ししか使わないのだろう?
 (だいたい20~30センチ。長く切って渡すと、もったいない!
  と言ってホルダーに戻す)

2、なぜ、あんなにゴシゴシ、ゴシゴシ
 時間をかけて力を入れて、おまたを拭くのだろう?
 (しかもペーパーが短いから、ほとんど指で拭いているのと同じ)

3、なぜ、拭き終わったあとで汚れたトイレットペーパーを
 流す前に観察するのだろう?
 (目の前まで持っていき、じっと見つめるのだ)

ものがない時代、衛生状態が良くなかった時代に育ったからか
80才以上のオバアチャンたちは
だいたい、こうした行動をとるのである。
もっともウチでトイレ誘導するのはほとんどが認知症の方なので
そうでない方がどんな排泄処理をしているかわからないが。

排泄処理といえば
サナエが今日、こんなおかしなことをした。

サナエは、食べて着替えて風呂に入って洗濯することは自分でできる。
しかし、診断こそ受けていないものの
記憶障害は著しく、明らかに認知症だ。

その彼女が夕暮れ時
白いものが一杯に詰まったゴミ袋を背負って
ゴミの集積所に向かっていた。

絶対に、あやしい。

そう踏んだ同僚が
ゴミ集積所でサナエのゴミ袋をしらべてみた。

なんと、ゴミ袋の中には
使い終わった尿や便まみれのトイレットペーパーが
ギュウギュウに詰まっていたという。

おまたを拭いたトイレットペーパーの捨て方が
わからなくなってしまったのだろう。

この職につくまで
認知症とは、極端な物忘れをすることだと思っていた。
いやいや、いやいや。
忘れちゃうんじゃなくて、わからなくなっちゃう。
その方が、適切な言い方かもしれないな。

わからなくなっちゃう。

それはどんなに怖いことだろう。






ママさん、キレる!

2018-10-22 23:45:31 | 日記
キヨハル(96歳)は私のことを“ママさん”と呼ぶ。
大好きだった母親とどこかしら似ているんだそうだ。

ま、好きに呼べばいい。

きのうの夜勤は、そのキヨハルと大喧嘩した。

移動は車椅子に頼らざるを得ない彼のために
夜間、オムツ交換に行ったときだ。

尿量の多い彼は、夜間
テープ式のオムツにパッド、そして男巻き(チン巻き)で寝る。
ぐっすり寝ていても
イチモツに巻いてあるパッドだけを交換すればいいわけだ。

しかし、たまに夜中に目覚めて車椅子でトイレに行き
自分でオムツからリハビリパンツに交換してしまうことがある。
「起きる時間だから」
「自分でできるから」
それが、理由らしい。

きのうもそれをやってくれた。
部屋に行ってみるとすでにトイレの便座に座り
ヨイショ、ヨイショと小さな掛け声を発しながら
一生懸命リハビリパンツに脱ぎ替えている。

それを見た私は、もちろん、ストップをかける。

あのね、まだ朝じゃないの。
まだ寝るでしょ?
リハビリパンツだけで寝たら、オシッコ漏れちゃうから。
オシッコ漏れちゃったら、冷たくてイヤでしょう?

しかしキヨハルはウチで一番の頑固ジジイ。
赤ちゃん言葉で駄々をこねる、困ったジジイである。

なんと言っても聞かず
聞かないどころかヒステリックに怒り出すのだ。

「イヤだよ、イヤだよ。
僕はオシッコなんか漏らさないもの。
だから僕の好きにするんだあ!」

好きにしてあげたいところだが
このまま放置したらパジャマもシーツもビチャビチャになること必至。

よ~し、そこまで駄々こねるなら受けて立とう!
私はキレた。
介護職に就いてからはじめてキレた。

あ、そう? じゃあ好きにすればいいわ。
だなあんて言わないよ。
今回は絶対譲らない。
アナタと喧嘩しても、アナタから嫌われても
私はアナタの好きにはさせない。
だって、オシッコでビチョビチョになって
冷たいまま寝かせるわけにはいかないからね。
はぁ? 私が頑固者だって?
そうだよ、今夜の私はアナタ以上の頑固者だ。
なんて言われてもいい。
とにかく、つべこべ言わずにベッドに戻れ!

彼が履こうとしていたリハビリパンツを奪い取り
私は啖呵を切った。
(実際のところ、ここまで怒るとエネルギーの消費は激しく
そのあとどっと疲れたのであったが)

日ごろママさんと慕う私がここまでキレたので
圧倒されたのだろう。
勢いを失ったキヨハルはしおしおと車椅子でベッドに戻った。

まな板の鯉のごとく
元通りのオムツ姿にさせらている最中
彼は私に言った。
「ごめんね、ママさん。わがまま言って、ごめんね。
ママさんは僕のことを本当に思ってくれているから怒ったんだね」
そして突然、号泣。
「ありがとう、ママさん。(グスグス)ありがとう、ママさん」

私も言いすぎたね。
じゃ、これで仲直り。
そう言って彼の手を握ると、またしても号泣。
「鼻紙ちょうだい。ママさん、鼻紙~!」

やれやれ。

仕方ない。アナタを看取るまでこの仕事続けるわ。





認知症、陰と陽。

2018-10-20 23:55:03 | 日記
エツ子の壊れ方は、まるでホラーだ。

おとといのこと。
夜勤のS子が定時の排泄介助に行ったら
エツ子はベッドに座っていた。

ただ座っていたのではない。
頭と片方の腕を
ラップでぐるぐる巻きにしていたのだという。

いったい何が起こったのか!?
S子が尋ねると、エツ子はこう答えたそうだ。

「おにぎりをサランラップで巻いておこうと思ったんです」。

それも、どんよりと暗く、抑揚のない声で…。
闇の底にずるずると引きずられそうな
くぐもった声で…。

プロとして言い方は正しくないが
認知症にもかわいいタイプと怖いタイプがある。

「ありがとさ~ん」を繰り返すトヨは
かわいいタイプの筆頭であり
毎日毎日同じ言動を繰り返すカヨもミネも十分に許容範囲。
“ケイコ日記”でお馴染みのケイコだって
手は焼けるが愛おしい。
食堂でズボンを脱いで排便してしまっても
食べる、歩くという簡単な動作がわからなくなってしまっても
それでもかわいいし
死ぬまでお世話したいとさえ思っている。

しかしエツ子はかわいくない。
かわいくないどころか、怖い。
死ぬまでお世話?とんでもないわ!

この違いはなんだろう?
職員の何人かで話をしたことがあった。

陰気だからじゃないですか?
誰かが言った言葉に、一同、そうだ~!

キツイ介護の仕事だからこそ
私たちは微笑ましいエピソードに摩り替える。
こんなことがあってさぁと
ことごとく笑いに変えて乗り越える。
じゃなきゃ、やっていられない。

しかしエツ子の場合は、それができない。
暗すぎて、こっちまで引きずられてしまうのだ。

ああ、明日はわが身。
もし認知症になったとしても
せめて笑いに変えられるタイプでありたいものだが…。











ハルオ、逝く。

2018-10-14 22:29:21 | 日記
ハルオが逝った。

夏は越せないと思われていたのに
低空飛行で命を繋ぎ
先週、眠るように息を引き取ったのだった。

脊椎損傷による下半身拘縮のため
援助はかなり大変だった。
しかし入居生活が5年と長かったこともあり
また穏やかでやさしい人柄もあって
どの職員も親しみを持って接していたし
寄り添おうとする思いが大きかったと思う。

私にとっては、忘れられない思い出がある。
それは5年前の大晦日。
まだこの仕事に就いてわずか3ヶ月のときだ。

夜勤で一人廊下を歩いていたら
ハルオの部屋から「助けてくれ~」と大きな叫び声が。
行ってみると、ハルオがベッドからずり落ちている。

新米の私はどうしていいかわからない。
大きくて重くて下半身拘縮のおじいさんを
どうして一人でベッドに戻せるものか!?

仕方なく、ハルオにはそのまま朝まで
床で寝てもらうことにした。
風邪を引かないよう、布団やらセーターやらバスタオルやら
ありとあらゆるものをかぶせて。

しかし忍びなくて、一人置き去りにすることができない。
他の利用者の排泄介助を終えては
事務所ではなくハルオの部屋に戻り
添い寝のように寝そべって拘縮した足をさする。

「ごめんね、ハルオさん。
こんなところで寝かせて本当にごめんね」

そのつい1週間前に父を亡くしたこともあり
ぽろぽろと涙が出てきたっけ。

ああ、ハルオさん、いろんな思い出があったねえ。
あれから5年。
私も少しは介護職員として成長したと思うけど
アナタの目には、どう映っていましたか?

さて、私たちは感傷に浸ってばかりいられない。

ハルオの妻で、ここに頻繁に登場する認知症のケイコ。
彼女は夫の死を受け入れることができるのか!?
混乱して、とんでもない行動をとることも予想される。

2日後に、その死は娘より知らされた。

その時はさすがに号泣したというが
すぐに忘れていつも通りの生活を送っているケイコ。

ただ、ハルオに何かが起きたことだけは
ぼんやりわかっているのだろう。

葬儀があったきのう
娘夫婦や孫たちが迎えに来た。

ケイコが娘に尋ねる。
「ハルオ君(なぜ“君”づけ)がいなくなっちゃったの。
どこに行っちゃったのかしら」
娘が「天国に行ったのよ」と答えると
「一人で行ったの? 大丈夫?」と心配顔。
娘が「○○や△×がお迎えにきてくれたから大丈夫よ」と
すでに亡くなっている親族の名前をあげて言うと
「ああ、それならよかった。安心だわ」
ケイコはそう答えたのだった。

ハルオさん、今まで本当にありがとう。
そして
ゆっくり休みたいところでしょうけれど
ケイコさんのこと、天国から見守ってあげてくださいね。








無様だ!

2018-10-10 23:53:19 | 日記
私は猛省している。
(このブログで結構反省しているので
またかよ! 懲りないヤツだな!と思われるだろうが)

実は、近くのスポーツクラブに入会した。

目的は、椎間板ヘルニアを改善するための腹筋・背筋強化。
これに尽きる。

家で自主トレしようかと思っていたが
筋金入りの怠け者根性が、その計画をあっさり打ち砕く。

ならば人とマシンの力を借りようと
体験入学を経て入会の運びとなったのである。

さて、いよいよ明日からスタート。

マシン・トレーニングのあとに
プールで水泳やウォーキングをしようと
ネット・ショッピングで水着を買った。

今日届いたそれを着てみたら・・・
なんじゃあ、この体型!?

いつもは私を褒めちぎるおっさんも
その水着を着て登場した私に絶句するではないか!?

私は身長160cmで体重は45kg。
健康診断では痩せすぎと言われる。
しかし、体重が軽ければスタイルがいいわけではない!
体重が軽くても筋肉より脂肪が多ければ見苦しいだけ!
それを、思い知らされた。

鏡に映った己の水着姿を見て思う。
無様だ。

齢(よわい)60。
それでもかっこ悪いのは絶対イヤだから
怠けて無様になるのはイヤだから
明日から筋力アップに励みます。

せめて10年前に着ていた水着を着てもおかしくないくらいに。