ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

カッコイイ年寄り

2017-07-29 22:54:09 | 日記
おとぼけ爺や性悪婆ばっかりじゃない。
まれにではあるが
こんなカッコイイ年寄りだっているのだ
という話題を二つ。

ノブは孤高の人である。
群れることを嫌い、食事の席も気の向くまま。
人を選ばず、言いたいことはハッキリ言う。
だから自立組の中には彼女を嫌う人もいる。
「あの人は本当に我がままで好き勝手よね」と。

しかし自立の人、認知症の人、身体が不自由な人
男、女、利用者、職員、責任者
相手が誰であろうと隔てない。ぶれない。
そこがカッコよく、潔くて
私なんぞは特に、ノブが好きなのである。

きのうはこんなことがあった。

ナンでも人に頼ろうとする老婆Aが
車椅子の自走に手間取って、ノブに助けを求めた。
自らも車椅子のノブは
「ほら、こうするんだよ。自分でやってみてごらん」と
ハンドルの使い方を熱心に教えた。
そこへ性格の悪さではウチで1、2を争うジャイアンみたいな老婆Bが
後ろから意地悪く口を挟んだ。
「この人は元教師なんだってよ。それが一人じゃ何もできないんだね」

するとノブはキッとBを睨みつけて言った。
「そんなことは言わなくていい。
昔のことは関係ないんだ。
年とったら、みんな過去を切り替えて生きなくちゃいけないんだよ」

減らず口の老婆Bが、思わず口を閉じた。
キャ~、カッコイイ! いよっ、ノブ!!!

もう一つは、先週入居してきたばかりの95歳のサダコ。
この人も言いたいことはハッキリ言うらしいと前評判を聞いていた。

歩行が安定しないので食事の送り迎えをしているのだが
その道すがら、性悪女・キワがするすると近寄ってきて
いきなり「ねえ、アナタおいくつ?」と、不躾な質問。

サダコとキワは部屋も食堂の席も離れているから
まだ面識はないはず。
いや、もし仮に挨拶程度はしていたとしても
道すがら「アナタ、おいくつ?」は失礼だろう!?

しかしサダコはウザイ!と思ったのか、2、3度その質問を無視したあと
歩行器を止め、前を向いたまま、ひと言だけ言い放った。
「歳は関係ない!」

詮索好きで性悪の老婆キワも、さすがに押し黙った。

イエイ、サダコ! バンザイ、サダコ!

高齢になってウチのようなところで暮らすことになっても
不安なのか、群れたがる人が多い。
そして陰で仲間の悪口を言う人が少なくない。

実に不快。
もしかしたら自分もああなるのではないかと思うと
年取るのがイヤになる。

群れず、人の悪口を言わず
そして嫌われることを恐れずに己の道を生きる
そんな高齢者になれるよう、今から修行を積んでおこう。





私はオソマツさん

2017-07-19 23:41:40 | 日記
ケイコの通院に同行しようとして
駐車場で派手に転び
整形外科で点滴注射まで打たれたというオソマツなあの日から
まだ10日も経っていない。

つくづく、私はオソマツな女だと思う。

夜勤明けで、炎天下の中を這うように帰ってきた。
化粧は剥がれ落ち、いまだ痛い足を引きずり
おそらく見るも悲惨な中年女だ。

しかし人からどう見られたってかまわない。
やっと帰ってきたぞぉ、ビール飲んで布団にもぐりこむぞぉ。
頭の中にあるのはその思いだけだ。

ところが、玄関まで来て気がついた。
か、鍵がない。

夜勤入りのきのう、おっさんは休みで、外は雷雨。
「すごい雨だなあ、雷に打たれないように気をつけていけよ」
「うんうん、じゃ、行ってくる」
そんなやりとりをしていたものだから
すっかり、鍵をもつのを忘れてしまったのだ。

このドアの向こうに、私の安楽がある。
けれども私は、このドアを開けることができない。

もはやパニくるエネルギーさえも持ち合わせておらず
私はぼーっと、ドアの前に立ち尽くしたのだった。

しかし人間ってのは
こんなときにでもなんとか生き延びる方法を見出すもので
しばらくドアの前で佇んだあと
近くのサイゼリアに行ってグラスビールをあおった私は
そうだ、スパに行こう!と思いつく。
(幸い、家から10分ほどのところに去年オープンした人気のスパがある)

結果、そのスパで湯に浸かり、テレビを見ながら惰眠をむさぼり
携帯でコトの次第を伝えておいたおっさんが帰ってくる時間を見計らって
無事、生還!

めでたし、めでたし。
いや、違うだろー?

お前、高齢者の世話をする仕事をしていながら
自分がこんなにボケていてどーすんだよ!?
我ながら、オソマツさにあきれ返る。

介護を学んだ職業訓練校の鬼教官からも
「アナタはそそっかしすぎる!」と
こっぴどく叱責されたことがあったっけ。

ああ神様
老いていくのは受け止めます。
ふけ顔になっていくのも受け止めます。
でもこのそそっかしさ、なんとかならんもんでしょーか・・・


躾に厳しい母親

2017-07-15 20:52:56 | 日記
派手に転んでGパンの膝に血が滲むほどの怪我をし
あんまり痛いので整形外科に行ってきた。

そんな情けない話はどーでもいいとして
その病院の待合室での話。

連結したイスの隣に40代くらいの女性がいて
そのまた隣に、小学生らしい彼女の息子が座っていた。

息子のほうは落ち着きがなく
ちょろちょろと席を立っては
また戻ってきてドス~ン!と勢いよく座る。

「ちょっと、もっと静かに座んなさい。
ドンドン響いて他の人たちに迷惑でしょ!」
母親は厳しく注意した。

そーね、そーね、その通りよ。
アナタの躾は正解だ。

しかししばらくすると
今度は身体を揺さぶられるほどの激しい振動が。

な、なに!?
驚いて隣を見ると
なんとその母親がスマホゲームで力いっぱい連打しているではないか。

唖然、呆然。
お~い、オマエこそ誰かに躾け直してもらえ!!!



深夜の訪問者

2017-07-08 23:06:29 | 日記
夜勤の午前0時。

ウチで最も介護力を必要とするマルオの排泄介助を
汗だくになってやっていると
エントランスのチャイムが鳴った。

なんだ? こんな真夜中に。
警戒心100%でピッチをとると
(どこでも緊急コールやチャイムに応答できるよう
職員はみんなピッチを持っている)
「すみません、開けてください」と男性の声。

家族なら鍵を持っているはずだし
それ以外の来訪者がこんな時間に訪ねてくるはずはない。

恐る恐る、聞く。
あの、どちら様でしょうか?

「サワダです」
サワダ? ああ、サワダといえば利用者のオトボケ・M三郎。
たまにやってくるM三郎の弟か。

こんな時間に不躾な!?と思いながらも
私は丁寧に対応する。

あ、サワダ様ですね?
申し訳ございませんがただいまワタクシ一人で
しかも利用者様の援助をしているところですので
10分ほどお持ちいただけますでしょうか。

「はい」

なんとかマルオのトイレを済ませ
汗を拭き拭きエントランスに向かう。

と、エントランスの自動ドアの前で私を待っていたのは
M三郎本人ではないか!

徘徊癖と脱走癖のあるオトボケ・M三郎は
その夜も車椅子でふらふらと建物から出て
しかし幸いにも敷地内から出ることなく、戻ってきた。
ところが出るのは自由だが
入るには鍵が必要なウチの建物。
鍵なんぞ持ち歩く習慣のない認知症のM三郎は
困り果ててチャイムを押したようである。

あらあらM三郎さん、アナタ、チャイムを押すことを覚えたのね?
徘徊しても、一人で帰ってこれるようになったのね?
偉いわ~!

じゃ、ねーわっ!

おいこら、ジジイ、この愛すべきジジイ
とぼけるのもいい加減にしろ!




キワよ、お前が大嫌いだ。

2017-07-06 23:48:59 | 日記
久しぶりにこの人にご登場いただこう。
性悪女・キワ。

かつて食事を共にしていた利用者たちは
キワの性格の悪さに愛想を尽かし
一人、二人とテーブルを去っていった。
しかし一番いじめられていたユキエだけは
職員が気の毒に思って別の席に案内するようになった今も
キワに話しかけられると
ニコニコとかわいい笑顔で応じる。
激しい記憶障害があるから
どんなに暴言を吐かれても忘れてしまうのだ。

今回もそんなユキエが標的にされた。

おとといのこと。
キワは食堂からの帰り道
ツツッとユキエに寄っていった。

「ねえねえ、アナタ出身はどこだっけ?」
突然の質問に即答できなかったユキエに向けて
キワは追い討ちをかける。
「あ、答えられないんだ。ということは日本じゃないんだ」
「わかったぁ、きっとチョーセンね?」
ポカンとしているユキエをあとにして
キワは「チョーセン!チョーセン!」と歌うように繰り返しながら
歩いていったのだった。

このバーサン、息子や娘たちにどういう教育をしてきたのだろう。
こんな性悪女が母親だったら
子供は人間のクズとして成長するに違いない。

先日はこんなこともあった。
新しい入居者にさっそく目をつけたキワは
いかにも面倒見のいい人間を装って
彼女に建物内の案内をはじめた。

その建物案内というのがなんとも性悪。
居室の連なる廊下を歩きながら
利用者一人ひとりの悪口を言って回ったのである。

「この部屋の方はツンボで声がバカでっかいの」
(ツンボはこの現代、放送禁止用語・差別用語だ。知らねーのか!?)
「この部屋の方は一人じゃ何もできないから
お手伝いさんに掃除とか洗濯をしてもらってるの」
(おおい、私たちはお手伝いじゃないぞ。わかってねーのか!?)
(お前だって掃除・洗濯をヘルパーに任せてるじゃねーか!忘れたか?)
「この部屋の方は頭がおかしいの。くるくるパーなの」
(オイ、言っておくが、お前だって認知症なんだぞ!)

一連の行動をたまたま目撃したヘルパーA子が
あまりに腹が立ってキワに注意した。
「キワさん、人のことを悪く言うもんじゃないわよ。
あなたは人の気持ちがわからないの!?」

しかしキワは怯むどころか、すかさずこう言い返したそうだ。
「アナタにそんなこと言われる筋合いはないわ」

おそらくこれまで70年、80年に及ぶ人生で
彼女は意地悪な発言を繰り返し
そのたびに周囲からたしなめられてきたのだろう。
たしなめられることなんか、もう慣れっこになっているのだろう。

キワよ。
手が掛かる高齢者はたくさんいるが
嫌いなのはお前だけだ。