ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ここは精神病院か?

2017-08-31 00:04:58 | 日記
きのうの夜勤。

事務所のある3階から1階までエレベーターで降りたら
そこに、ケイコが寝ていた。

ケイコといえば「ケイコ日記」でお馴染みの
妄想激しいおばあちゃんであり
専門医に診てもらうようになってから興奮状態はやや収まったものの
いまだに驚くような言動で話題の絶えないおばあちゃんである。

エレベーターが止まる。
ドアが開く。
と、目の前のフロアで仰向けになって倒れているケイコ。
足元には毛布が広がり、バッグや洋服も散乱している。

ケ、ケイコさん、どーしたんですかーーー!???

「あ、先生」
(彼女は職員をそう呼ぶ)
「神様がお前にもできるだろうというから、やってみたんですけど
これ以上は無理です。もう帰ります」

意味不明だが
どうやら彼女は何者かの指令によって
一生懸命、いろんなものを運ぼうとしたらしい。

常日頃、私はこのままではバカになる、お仕事をはじめなければー
と言っている彼女。
夜中にむくっと起きて、仕事をしなければという思いに突き動かされたのだろう。

だからって、何も私の夜勤を狙ってこんな大仕事をしなくたってさあ…

幸い、ケイコに怪我はなかった。
しかし
左手に毛布とバッグと洋服を抱え、右手にケイコを抱えながら
彼女の部屋に向かう私。
ケイコに骨折はなくとも、こっちの心が折れるわ。

そしてサイゾー。
8月6日付のブログ「新たなる刺客」でデビューした
ベッドで、わざわざパンツを脱いで放尿してしまうジイサンである。

あれこれ考え実践してみても、彼の妙なヘキはおさまらず
最近では
ベッドからずり落ち、怪我防止のために敷いている布団の上で
ご丁寧にもパンツを脱ぎ
陰部にタオルケットを当ててホーニョーするのが常となっている。

定時の排泄介助で彼の部屋に入ろうとしたら
あれ? 鍵が開いている。
さっきの訪問時にはしっかり締めたはずなのに。

もしやと思い、事務所の防犯カメラで確認すると
廊下をフルチン姿で歩く彼の姿が映し出されていた。

歩けないからと普段は車椅子を使っているのに
オマエ~、ふつーに歩けてんじゃないかい!!!

防犯カメラによると、時刻は午前4時半頃。
くわばらくわばら。
あと30分もしたら、自立の高齢者が起きて廊下に出てくるところだった。

このジーサン、なんとかならんか!?

トリはオトボケM三郎。
徘徊壁のある彼は、このブログの最多出演者である。

朝食の時間が近づいて、登録ヘルパーさんたちがぞろぞろと出勤してきた。
ああ、これで夜勤が明ける。もう私一人じゃない。
ほっとする時間である。

しかし事件は起きた。

「M三郎さんがいないんです!」
彼の起床援助に入ろうとした登録ヘルパーのAさんが叫ぶ。

部屋はもちろん、食堂にも共用トイレにもいない。
Aさんは血相を変えて外まで探しにいってくれたが
どこにもいなかったという。

再び、防犯カメラのモニター確認だ。
ところが2時間巻き戻しても彼の姿は映し出されず…
おかしい、2時間前に排泄介助に行ったときには
彼はまだぐっすりと寝ていたはずなのに…

いよいよ電話で管理責任者を呼ぼうとしたとき
連絡用のピッチからAさんの声が轟いた。
「M三郎さん、見つけました~~~!」

なんとヤツは、わざわざエレベーターを使って階下に降り
職員しか知らないはずの研修室で
車椅子のままジーッとたたずんでいたのだという。

おい、こら、このオトボケジジイ、いい加減にしろ!
この台詞、何百回吐いてきたことか。

おかしいな、おかしいな。
ここは国が推進した高齢者の住宅。
決して、精神病院ではなかったはずなんだけど、なあ。

奇跡のラッキースター

2017-08-29 00:51:21 | 日記
おっさんが落し物をしたと言ってしょげていた。

落としたのはペンダントヘッド。
彼がお気に入りの和柄の折り紙で作った
直径1,5センチほどの星型の飾りだ。

作った作品は大抵、勤務するデイサービスのゲームの景品にするのだが
休みだったきのう、おっさんは作ったばかりのそれが気に入って
買い物のときに首から下げていったのだという。

止め具が緩んでいたのだろう
そのヘッドの部分だけが、どこかでポロリと落ちてしまったらしい。

「ラッキースターっていう名前の折り紙なんだよ。
気に入ってたのに…。あ~、どこで落としちゃったんだろう!?」

無神経で冷酷な妻は「また折りゃいいじゃん」くらいに思って
親身に話を聞くこともしなかったのだが…

奇跡が起きた。

今日は私が休み。
買い物に行こうと家を出て
ポストに投函する郵便物があったので
ちょっと遠回りしてからスーパーに向かった。

横断歩道を渡り、目指すスーパーまであと200メートルほど。
と、そこで奇跡は起きた。

歩道に、星型の折り紙が落ちているじゃないか!?

慌てて拾い、確認する。
うん、間違いなくおっさんのだ。
おっさんが作ったペンダントヘッド、ラッキースターだ。

こんなことってあるのか?

いつもならスーパーに直行するのに
たまたまポストに寄るために遠回りしたその道で。
いつもなら早足で、しかも正面を見てまっしぐらに歩くのに
たまたまゆっくりと歩き、歩道に目を落としたその先に。
そこに、前日おっさんが落とした“ラッキースター”が落ちていた。

これをキセキといわず何と言おう!?

こんなことってあるんだねえ。
今夜の二人の晩酌が盛り上がったことは、言うまでもない。

それにしても
夫が落とした“ラッキースター”を妻が拾うって…
なんだかウチの夫婦を象徴しているみたいな出来事である。







自爆

2017-08-26 00:12:18 | 日記
和柄の折り紙で作った作品を見せながら
おっさんが言った。

「どう? これ。柄がいいでしょ?」

そうね、と返事する前に付け加える。
「俺は柄悪いけどね」
「ははは、どうよ、この自爆ネタ!」

はい? 自爆、ネタ?
それを言うなら自虐ネタ、でしょーが!?

文字通り、おっさんは自爆した。



想像便秘

2017-08-24 01:03:53 | 日記
セイコ、93歳。
腰椎圧迫骨折を繰り返しているので食事は居室配膳しているが
年齢のわりに、頭はいたって元気な女性である。

この間、訪問診療の医師から彼女の検便を指示された。
2回分の便が必要らしい。

おととい、セイコからコールがあった。
便が出ました、という。

そして夜勤明けの今朝、またしても彼女から同じコールが。
2回の検便、2回とも私かー。
(うん、ラッキー! なんて思うはずもなく…)

それにしても3日間で2回の便が採れるなんて
セイコ、あなたの腸はずいぶんと健やかじゃあないか。

ところが起床援助に入ったヘルパーに
セイコは切々と訴えたそうだ。

もう何日もウンコが出てないの、と。

便秘の高齢者は多いが、彼女の場合
想像妊娠ならぬ、想像便秘ということだろうか。







病的に、関心がない。

2017-08-16 19:23:25 | 日記
心から信頼している上司が、来週、他の事業所へ異動となる。

泣きたい。行かないで~と泣き叫びたい。
しかし企業の人事。
納得できなくても、ぐっと堪えるしかないのだろう。

泣いて暴れて抗議する代わりに
私は彼にお願いした。

留任中に一つでもいいからアナタの介護技術を伝授してください、と。

穏やかな笑顔で承知してくれた上司は
翌日から暇を見つけては私に技術指導してくれるようになった。

最初はオムツ交換。
次は髭剃り。
あさっては入浴介助のテクニックを教えてくれるという。

部下の意欲をこういう形で受け止めてくれる上司に感動。
そして、学校では教わらなかったキメ細やかな彼の介護技術に心酔。

わずか半年の付き合いだったが
こんな上司の下で働かせてもらったことを
心からありがたく思っている。

さて、ここまで書いておきながら申し訳ないが
今日の本題は、上司と部下の美談ではない。

髭剃りの指導を終えたところで、その上司から言われた。
「あとは家でダンナさんを相手に練習してみてください」

そこで私の頭の中は、クエッションでいっぱいになる。
はて、うちのダンナ様はどうやって髭を剃っていたかしらん…?

頭髪はフサフサ、すね毛も絡むほど生えているオッサンだが
髭は生えるのがすこぶる遅い。
毛根自体が少ないのだろう
数年に一度発作のように「髭を生やす!」と宣言するが
何日経ってもショボショボと顔に埃がついている程度にしか
生えてこないのである。

そんなオッサンがどうやって髭を処理しているか
私は知らなかった。
知らないまま、実に34年間という結婚生活を送ってきたのだ。

そういえばまだ40代に差し掛かったばかりの頃
家に車のセールスがやってきた。
その男に「ご主人は今、どんな車に乗っていらっしゃいますか?」と
車種や色について尋ねられ
愚かな私は答えることができなかった。

車に興味がないから車種について答えられないのは仕方がないとしても
色まで把握していなかったことに、我ながら唖然とする。
家の車庫にいつも置いてある車なのに…。
休日は私も乗せてもらっている車なのに…。

おっさん、ごめん。
アナタに関心がないわけでは決してない。

毎日一緒に仕事をしているヘルパーさんのエプロンの色だって
私はまったく覚えていないのだから。

これは何かの障害か?
いや、開き直って言わせていただこう。
私はモノに対して、とことん、関心がないのである。