ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

友人の門出

2014-06-30 01:17:11 | 日記
私の勧めで職業訓練校の介護科に通い始めた親友Kが
おととい、晴れて卒業した。

「おめでとう、一杯ご馳走するよ」
その誘いに応じて、やってきたK。
今夜は彼女と彼女と二人で飲んできた。

8ヶ月前
生きる張り合いを失って自暴自棄になっていた彼女が
飲めなかった酒をおいしそうに飲む。
「私には向かない」とかたくなに拒み続けてきた介護職だったが
半年間の勉強を終え
今、就職先への期待に胸を膨らませる。

よかったねぇ、K。
頑張ったねぇ、K。

剛毅にふるまった酒代は痛かったが
泣いていた友人の笑顔を見ることができたのだから
幸せな出費だ。
そう、お金はこういう祝い事に惜しんじゃいけない。

大切な、大切な友人。
その晴れの日をともに祝うことができて、嬉しくて
思わず涙が…。

久しぶりに、したたかに酔った。

ああ、人生は楽しいねえ。

黒髪に―

2014-06-25 22:40:21 | 日記
髪を黒くした。

薬局で働いていたときは髪の色にも厳しい規制があったので
やや栗毛程度に抑えていたのだが
今の職場は服装も髪の色も自由。
やった!とばかりに、美容院でかなり明るめに染めてもらったのだ。
それが今回はスピーディーに色落ちし
茶髪を通り越して金髪に近い状態に。
こうなると、なんだか汚い。場末のバーのママみたいだ。

よし、黒くしよう!
そう思ったら美容院に行くのももどかしく
速やかに染髪剤を買いに走って自分で染める。

「ブラウン」なのだが
今までが今までだけに、かなり黒い印象。
なんか落ち着いちゃった感じ? 若さがない?

しかし職場に行くとみんなの印象は正反対だった。
まずは別人のようだと驚かれ
次に「若返った!」、「10歳くらい若く見える」と言うではないか。

うそ!? 若返って見えるの? これが?

ついこの間までは茶髪にしたりメッシュを入れたりしていると
若々しいと言われた。
ところが今では反対に、黒くしたことで若々しい印象を抱かれるとは…

ああ、それが50代半ばということなんだろうか。

派手な茶髪は、中高年にはかえって汚く品がなく見えるのかもしれない。
(派手な洋服が似合うカッコいい女性なら別なんだろうけれど)

最期

2014-06-22 23:30:56 | 日記
ターミナルだったTさんが、今朝未明、ご逝去された。

生涯独身で、訪ねてくるのは妹さんだけという孤独な身の上。
早番も出勤する前の時間だったから
職員に見送られることもなく、ひっそり搬送されたという。

糖尿病からくる腎不全で
象のように浮腫んだ足からは浸出液がしたたり
酷くなって行くばかりの褥そうは異臭を発し
あまりの痛みに
おむつ交換時も「お願いします、痛いからやめてください」と
すがるように言っていた。

白内障が悪化して、目も不自由だった。
彼女を慰めてくれるのは、枕元に置かれた古いラジオだけ。
「何を聴いているんですか」と尋ねると
「さあねえ。別に音が流れていればなんでもいいの」
元気なころから、そう言って一日中ラジオを流していたっけ。

「あなたたちにはきっといいことがありますよ」
半年ほど前の入居時
ふと、そう言われたことがある。
「こんな大変な仕事をしているんだもの。
絶対、いいことありますよ」と。

この仕事に就いたばかりの私にとって
その言葉は励みになった。
そんなに大変な仕事をしているとは思わないが
いつかいいことがある-その言葉は本当にありがたかった。

食事制限を受けていたから
彼女に用意された献立は粗末としか言いようがなかったが
同じテーブルでしっかり味付けされた肉や魚料理を食べる人たちを羨むことなく
「食べさせてもらえるだけで幸せです。
本当に皆さんには感謝しています」
そんなことばかりおしゃっていたTさん。
本当に我慢強く、慎み深く、優しい方だった。

おとといからモルヒネ投与。
痛みを訴えることがなくなったことで私たちの心もいくらか落ち着いたが
その分、生きるエネルギーがしぼんでしまった彼女を見て
よけいに辛くもあった。

今朝、訃報を聞かされ、そこに居合わせた職員が口々に言った言葉は
「残念だね」ではなく「よかったね」であった。
治る見込みのない人をこれ以上苦しませたくない。
みんな、思いは同じだった。

半年間お世話させていただいた方の死は、もちろん寂しい。
けれども
これでTさんがやっと安らかになれる
そう思うと、「よかったね」なのである。


おっさんの中の、老人と子供

2014-06-20 21:54:20 | 日記
この間まで、おっさんは老人性皮膚掻痒症とやらに悩まされていた。
簡単に言うと高齢者の乾燥肌であり
腕や足、お腹など衣服でこすれることころが白く粉をふいたようになって
かなりの痒みを伴うようになるらしい。

痒いから掻く、掻くとますます炎症が広がり、いっそう痒みが強くなる。
誰にでも想像できる成り行きだ。
しかし女房の助言も聞かず、医者にも行こうとしないおっさんの症状は
見るも無残に進行の一途をたどる。
いよいよ気が狂いそうになるほどの痒みだったらしく
1ヶ月ほど苦しんだ末に病院へ。
そこでもらってきた薬を塗ると
おっさんお症状はバカみたいにあっさりと治ったのだった。

そして季節は初夏へ。
夜、仕事から帰ってきたおっさんが言った。
「また老人性のアレがぶり返したらしい。
今度は背中なんだ」

どれどれ? もう乾燥シーズンでもないのにと訝りながら
Tシャツをめくって背中を見てみると
なんだよ、汗疹(あせも)じゃん!!!
汗疹って・・・アナタいくつよ!?

性質はナイーブだが肉体は単純なおっさん、
冬場の乾燥シーズンは“おじいちゃん”
暑い季節になると途端に“お子ちゃま”
季節に合わせて、そんな風に身体が変化するらしい。

まったく、うっとうしいが飽きない男であることよ。

舐めんなよ!!!

2014-06-17 00:23:36 | 日記
私が勤めている「サービス付き高齢者向け住宅」というところには
私のような常勤スタッフ(社員)と登録ヘルパーがいる。

この登録ヘルパーは、常に募集中。
かつてのヘルパー2級以上の資格を持っている人なら
年齢・性別、経験も問わない。
ドタキャンせずに一生懸命働いてくれる人なら誰でも歓迎だ。

しかし…たまに勘違いオバチャンが応募してくるのには困ってしまう。
それを人手不足だから採用してしまう人事担当者にも、困ってしまう。

おとといも、先日採用された60歳のオバチャンが初仕事にやってきた。
その日は私が指導役。
むか~し昔にヘルパー2級を取ったが
ずっと専業主婦だったので仕事としてはほとんど経験がないという彼女に
私は丁寧に仕事を教えた。

それが、今日の仕事帰りに早くも「辞めます」宣言。
理由は「孫が病気で…」だと。

やっぱね、続かないとは思っていたさ。
だってここで働く理由を尋ねたとき
しゃあしゃあと言っていたもの。
「子育ても終わって、ヒマだったので」と。

そういう輩(やから)は、これで三人目だ。

この仕事を舐めてんのか!?
まあ土台長続きするはずもないから
早く見切りをつけてくれて助かったけれど。

いま、ウチにはターミナルの方がいる。
腎機能の低下が著しく
その数値だけを見れば「生きているのが不思議」とドクターが首を傾げるほど重篤だ。
我慢強く、人を思いやる心にあふれた彼女が
いまやオムツ交換や褥そうの治療に苦痛の声を上げる。
「お願いします、痛いんです、死なせてください」と懇願する。
胸が張り裂けそうだ。
痛みを訴える彼女の声が私たち介護者の心を抉り
正直、泣きたくなる。
「ごめんなさいね、ごめんなさいね」…発する言葉は、それしかない。

なんとか、彼女の苦痛を軽減して差し上げたい。
でも私たちは医者ではなく、介護者だ。
ならばせめて、苦痛のないようにオムツを替えて差し上げたい。
傷口のガーゼを交換して差し上げたい。

そして同時に願う。
どうかその“看取り”が、自分の夜勤時でありませんようにと。
だらしないが、情けないが
夜勤を担当する常勤スタッフは、不安でいっぱいなのだ。

60才前後で体力とヒマを持て余し、お小遣い稼ぎ程度の気持ちで
ヘルパーに応募してくる方々がいる。
「人の役に立ちたい」と殊勝な台詞を吐く方々がいる。

舐めんなよ!!!

ああ、明日は夜勤。
不安と重圧でいっぱいだ。