ご飯を作って待っていたら
おっさんから電話がかかってきた。
「今、帰り途中。土手に座って風を見てるんだ」
風を見てる?
アンタ大丈夫か!?
よくよく聞いてみたら、風ではなく、火星。
明日、15年振りに火星が大接近するらしく
大きく真っ赤に輝くそれを、一人で眺めているというのだ。
「くる?」と誘われて、「いい」と即答。
それよりお腹空いたよ。早く帰ってきて!
20分ほどして
「きれいだったよ。くればよかったのに」と
おっさんはやや興奮気味に帰ってきたのだった。
晩酌と夕食を終えると、おっさんは再び外へ。
「あ、見える見える。
さっきは雲に隠れちゃったんだけど、また出てきたよ。
ほら、見てみて」
何がなんでも、愛しい女房に火星を見せたいらしい。
しゃーない、つきあうか!
でもちょっと待って。トイレ行ってくるから。
しかしトイレから出てくると
おっさんはしょんぼりしながら家に入ってきた。
「もう見えなくなっちゃったよ」
えー、そうなの? 残念。
トイレなんか行かないで見にくればよかったのにって?
そんなあ。
オシッコを我慢するわけにはいかないでしょーよ!
かれこれ30年ほど前に仕事で書いたエッセーの一文が思い出される。
――女はロマンをねだり、男は浪漫を求める――
つくづく
そうだよねえ。
男の浪漫に寄り添うより
お腹が空いた~、トイレに行きたい~という
己の生理的欲求を優先する無粋な女房で
ごめんよ、おっさん。
おっさんから電話がかかってきた。
「今、帰り途中。土手に座って風を見てるんだ」
風を見てる?
アンタ大丈夫か!?
よくよく聞いてみたら、風ではなく、火星。
明日、15年振りに火星が大接近するらしく
大きく真っ赤に輝くそれを、一人で眺めているというのだ。
「くる?」と誘われて、「いい」と即答。
それよりお腹空いたよ。早く帰ってきて!
20分ほどして
「きれいだったよ。くればよかったのに」と
おっさんはやや興奮気味に帰ってきたのだった。
晩酌と夕食を終えると、おっさんは再び外へ。
「あ、見える見える。
さっきは雲に隠れちゃったんだけど、また出てきたよ。
ほら、見てみて」
何がなんでも、愛しい女房に火星を見せたいらしい。
しゃーない、つきあうか!
でもちょっと待って。トイレ行ってくるから。
しかしトイレから出てくると
おっさんはしょんぼりしながら家に入ってきた。
「もう見えなくなっちゃったよ」
えー、そうなの? 残念。
トイレなんか行かないで見にくればよかったのにって?
そんなあ。
オシッコを我慢するわけにはいかないでしょーよ!
かれこれ30年ほど前に仕事で書いたエッセーの一文が思い出される。
――女はロマンをねだり、男は浪漫を求める――
つくづく
そうだよねえ。
男の浪漫に寄り添うより
お腹が空いた~、トイレに行きたい~という
己の生理的欲求を優先する無粋な女房で
ごめんよ、おっさん。