ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

おっさんは浪漫ちっく

2018-07-31 00:03:23 | 日記
ご飯を作って待っていたら
おっさんから電話がかかってきた。
「今、帰り途中。土手に座って風を見てるんだ」

風を見てる?
アンタ大丈夫か!?

よくよく聞いてみたら、風ではなく、火星。
明日、15年振りに火星が大接近するらしく
大きく真っ赤に輝くそれを、一人で眺めているというのだ。

「くる?」と誘われて、「いい」と即答。
それよりお腹空いたよ。早く帰ってきて!

20分ほどして
「きれいだったよ。くればよかったのに」と
おっさんはやや興奮気味に帰ってきたのだった。

晩酌と夕食を終えると、おっさんは再び外へ。
「あ、見える見える。
さっきは雲に隠れちゃったんだけど、また出てきたよ。
ほら、見てみて」

何がなんでも、愛しい女房に火星を見せたいらしい。

しゃーない、つきあうか!
でもちょっと待って。トイレ行ってくるから。

しかしトイレから出てくると
おっさんはしょんぼりしながら家に入ってきた。

「もう見えなくなっちゃったよ」

えー、そうなの? 残念。
トイレなんか行かないで見にくればよかったのにって?
そんなあ。
オシッコを我慢するわけにはいかないでしょーよ!

かれこれ30年ほど前に仕事で書いたエッセーの一文が思い出される。

――女はロマンをねだり、男は浪漫を求める――

つくづく
そうだよねえ。

男の浪漫に寄り添うより
お腹が空いた~、トイレに行きたい~という
己の生理的欲求を優先する無粋な女房で
ごめんよ、おっさん。



こっちも眠れない、新人の夜勤デビュー

2018-07-30 00:33:21 | 日記
新人サッチャン、一人夜勤デビューである。

2ヶ月前に入社した期待の新人・サッチャン、25歳。
最初は無愛想だ、言葉遣いが悪いなど
ちょっと評判の悪い彼女だったが
なかなかどーして、よ~く頑張る得がたい新人だった。

辞めないでほしい。
その一念で
この2ヶ月間みんなで愛を持って鍛えてきた。

大方のことは覚えてくれた彼女だったが
ネックが一つ。
パーキンソン症状で寝返りも立位も歩行も困難なコウジの
夜間のトイレ誘導だ。

ベテランのヘルパーでも難しいコウジの介護は
独り立ちするサッチャンの、大きな障壁となっていた。

何度も同行して
どうにかイケるだろうと判断し
恐る恐るの一人夜勤デビュー。
それがおとといのことだった。

みんな心配でならない。

本人も心臓が破裂しそうな思いだったに違いないが
こっちも寝れたもんじゃない。

私は何度も何度もラインで頑張れスタンプを送る。
優しいタエコはラインをしていないので
その代わりに何度もメールで声援を送る。
私の仲良しの同僚ナナミにいたっては
家が目の前ということもあって
夜間にこっそり様子を覗きにいったという。
そうそう、男子のショウタ君も
激励のメッセージをサッチャンのロッカーに入れてきたそうだ。

みんな、サッチャンのために一生懸命。
いい子だから、続けてほしいから
どうか、どうか、この関所を越えてほしい。

熱い思いが“元気玉”になったのか
サッチャンは、コウジのトイレ誘導に成功した。

なんとかなりました!
サッチャンのラインが、夜中の0時半に届く。

やったね、よく頑張ったね、おめでとう!

サッチャンの夜勤デビューは
恐らく
私たち先輩の成長にもなったことだろう。


還暦

2018-07-19 00:15:28 | 日記
先日一緒に温泉旅行を楽しんだC子から
還暦のプレゼントをもらった。

60years old anniversary 
KANREKI
と、白地に大きな赤い字で書かれたTシャツ。
60の0の部分がハイビスカスの花で描かれていることもあって
一見、ハワイのお土産のようである。
袖を見ると、そこには私の名前がローマ字でー。
還暦祝いになんてお洒落なプレゼントだろうか。

私は感激した。
感激して、みんなに見せびらかしたいと思った。

そしてきのう、それを着て職場へ。

ねえねえ、見て~!

わあ、ステキ! お洒落! おもしろ~い!
と、ともに働くスタッフからは大好評だ。

ならばオバアチャンたちにも見せちゃおうと
昼食時の食堂に躍り出る。

ね、ね、見てください。
この間還暦を迎えた私に
友達がこんなTシャツをプレゼントしてくれたんですよ。
ほら、ほら、ここにKANREKIって書いてあるんです。

私はある程度会話ができる人たちを選び
このプレゼントがいかに気が利いているかを
アピールしたつもりだった。

ところが20人ほどのオバアチャンたちに見せびらかして
面白いわねえ!と喜んでくれたのはたったの1人。

そのほかは口を揃えてこう言った。
「あらぁ、還暦なの? うらやましいわあ」

反応、それ~~~!???

そっか、そうですよねえ。
80代、90代で
このTシャツの面白さやお洒落感、わかんないっすよねえ。

それに…
あなた方からすれば還暦なんぞまだまだひよっこなんすよねえ。

齢(よわい)、60。
私はまだまだ青い。




40年来の友へ

2018-07-16 00:03:06 | 日記
女友達と3人で温泉に行ってきた。

同い年のK子と2歳年下のC子。
もはや同い年であろうが2歳年下であろうが
世間的にはひと括りの年代ではあるが…。

さて、初めての社会人生活で同僚だったC子とは
かれこれ40年近い付き合いになる。

つかず離れずのほどよい距離で
それでも互いの恋、転職、結婚といった人生のイベントだけは
しっかり把握してきた。

いや、そのつもりだった。

旅先での夜
酒好きの3人は時間を忘れるほど飲み、語り、笑った。

そのときのことだ。

「ねえ、ずっと聞きたかったんだけど
アナタ、結婚式挙げたんだっけ?」
突然、C子が言う。

ナニ言ってんの?
あなた、披露パーティだけじゃなくて結婚式にも参列してくれたじゃない!
あなたの衣装まで、私、覚えてるわよ。

「え~~~、全然覚えてない!」

うっそでしょーーー!?

その後、彼女の着てきたドレスの色や
ともに参列してくれた友人の顔ぶれを伝えるが
微塵も記憶にないと、彼女は言うのだった。

いやはや、あきれるやら悲しいやら…。

仕方ないわねと話を変えようとして
ふと、今度は私が彼女の結婚式に出たかどうか
という疑問が生まれた。

ね、私はあなたの結婚式に出たっけ?

すると今度はC子が素っ頓狂な声を上げる。
「ナニ言ってんの~? スピーチまでしてくれたじゃない!?」

あ、そーだった、そーだった。
彼女のことをかわいがってくれたオバアチャンが式に出ると聞いた私は
オバアチャンを喜ばせるためのスピーチを披露して
会場から感動の拍手をいただいたのだ。

ごめん、ごめん、思い出したわ。
あれ、だけどさ…
今度は私が反撃に出る。

あのスピーチを録画したヤツ、見せてねって言ったのに
見せてくれる前にアナタ離婚しちゃったんじゃないよ!!

この40年、お互いいろんなことがありました。
早くも記憶障害の兆しが見え始めた私たちだけれど
ま、今が楽しけりゃ良しとしよう。

C子よ、これから先もよろしくな!



ケイコ日記ーその17

2018-07-12 23:41:26 | 日記
大洪水の中、ケイコは目覚めた。

起床援助のヘルパーが部屋を訪ねると
ケイコはベッドでタオルケットに包まり
身体が冷たくて…と震えていた。

タオルケットをめくってみると予想以上の大失禁。
ラバーシーツにまで及んだオシッコは
パジャマの背中までぐっしょりと濡らしていたのだった。

起こして着替えをさせている最中
テレビでは痛ましい豪雨のニュースがー。

その映像を見たケイコは叫んだ。

「ああ、あの雨のせいだったんですね。
私がこんなに濡れているのは!!」

ケイコよ
もはやアナタの失禁は自然災害なのか。