ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

お姉ちゃん、私がいるよ。

2017-03-27 23:25:41 | 日記
珍しく姉からメールが来た。

先日電話で義兄に姉の様子を尋ねたとき
「ますます忘れることが多くなったよ」と言っていた。
1年前より月に1度は専門医を受診し
アリセプトを飲みつづけているものの
姉の若年性アルツハイマーは確実に進行しているらしい。

記憶障害だけではなく
姉の場合、意欲の減退が著しい。
先月久しぶりに電話で話をしたときも
2人で旅行でもしないと持ちかけたら
「もう、そういうの面倒臭い。出かけたくないわ」と
すげなく断られた。
おいおい、お愛想でもいいから「そうね」くらい言えないもんか?
ま、怒っても仕方ないわけで…。

で、今日のメールである。

「今日は体調がよくありません。
なんだか認知症が近づいているみたいです」

通院していても、薬を飲んでいても
まだ、自分が認知症であることを認識していない。

すかさず電話する。
メールを送ったことすら忘れているのだろう。
今日の姉はいつになく元気で陽気、おまけに饒舌だ。

ついついこっちも忘れて
職場にいる認知症高齢者の笑える話をすると
「すごいわね~。そんな風にならないように気をつけなくちゃね」
なんてケラケラ笑い…。

お世話している認知症のオバアチャマたちを見ていて
わかったことがある。
認知症は刺激のない生活、寂しい生活が
坂を転げるようにその症状を悪化させる。

姉の場合、認知症の姑を介護の末に看取ったと思ったら
相次いで二人の娘たちが嫁いでいった。
定年を迎えた義兄は夜勤のある職場に再就職し
3、4日に一度は夜、家を空けるという。

飼い犬が話し相手の、寂しい生活。
それが姉の認知症を急速に悪化させたのだろう。

体調がイマイチと、しょちゅう誘いを断られ
そのたびに「なんだよ!」と気落ちする私だが
今日はダメもとで誘ってみた。

お姉ちゃん、今度の私の休みにご飯食べに行こうよ。

「あら、たまにはいいわね」

気分にムラがあるのも、姉の病気の特徴だ。

せっかく介護の仕事に就いているのに
身近にいる大切な人を放っておいてどうするよ、オマエ!?

というわけで、明々後日は姉とランチ。
どうか彼女が私との約束を忘れませんように。






おとぼけM三郎、健在!

2017-03-24 23:58:36 | 日記
呑んだくれ爺や悪口婆の言動にイラつくことも少なくない毎日。
ときどき車椅子で脱走したり
深夜、建物内を徘徊して時には転倒してくれる“おとぼけM三郎”は
なんだかんだ言ってもやっぱり私たち職員の癒しである。

きのう、彼のトイレ誘導を行ったときのこと。

便座に座らせてドアを閉め
外から声掛けしながら終了のときを待つ。

M三郎さん、終わったぁ?
「まだあ」

これを幾度か繰り返し
ようやく「終わったよぉ」という返事をもらったところでドアを開ける。

するとM三郎、少しばかり悲しげな表情で言った。
「出ないんだよね。頑張ってるんだけど、出ないんだ」

そっか、ウンチ出なかったのね。じゃ、あきらめようか。

しかし立ち上がらせようとする私の顔を仰いでM三郎は言う。

「ここはパチンコ屋さんなの?」

は? なんでよ~?
M三郎さん、ここはアナタのお部屋でしょう?

「そーなの? パチンコ屋じゃないの?」

違うってえ。
でも、なんでパチンコ屋だと思ったの?

すかさず、M三郎はこう答えた。
「だって、玉が出ないんだもん」

おーい。出ないのはアナタのウンチでしょうが!?

確定診断はされていないが、明らかに認知症が進んでいるM三郎。
彼についてはボケがひどくなってきた、というより
まさに“おとぼけ”が進んできたという表現がふさわしく
手を焼かされながらも笑ってしまうのである。





いまどきの・・・

2017-03-17 23:43:06 | 日記
「おい、大変なことになってるぞ!」

帰るなり、おっさんがiPadで画像を見せてくれた。
そこに写っているのはあどけなさの残る少女の袴姿。
聞けば、デイサービスで一緒に働く女性の娘の
小学校の卒業式姿だという。

「小学校の卒業式で、女子は全員袴なんだって」

うっそでしょ~~~!?
今日ばかりは素直におっさんの驚きに共感する。

幼さを十分残した顔に化粧を施し
美容院でしっかり髪をセットした
袴姿の小学生女子。
レンタル着物と美容院代で、5万円から20万円するらしい。

うっわぁ、世の中、こんなことになってたのか!?

息子は先月で30歳。
今の時代の親じゃなくてよかった~と
胸を撫で下ろすのであった。

飲んだくれジジイ

2017-03-14 17:45:51 | 日記
やっかいなジジイが入ってきた。

独居生活をしていたが
脳梗塞を起こして入院、その後介護老人保健施設(通称:老健)に入所。
もう一人暮らしはさせられないという娘夫婦の判断で
退所後はウチに入居することになったのだった。

自由気ままな独居生活を送っていた彼は
老健でがんじがらめの生活を余儀なくされ
ウチに来てから、その縛りから開放された。

しかし、開放されすぎた。

歩行器なしでは足元もおぼつかないというのに
一人で近所のコンビニに行っては
缶ビールを何本も買ってくる。
しかも、毎日。

危ないから一人での買い物はやめるよう注意すると
烈火のごとく、怒る、怒鳴る。

まあウチは高齢者向けの賃貸住宅であるからして
何をするのも自由だ。
飲酒も喫煙も、ペットを飼うのも
原則としては“ご自由に”というわけだ。

しかし危険と知りつつ放置はできない。
仕方ないので家族に連絡した。

だが娘夫婦も
わがままで酒飲みの父親をどうすることもできないのだろう。

一人での買い物は危ない。
でも飲酒は止められない。

ならばと娘夫婦は考えた。
そうだ、ビールを送ればいい、と。

それから数日置きに、箱で缶ビールが送られてくるようになった。
ひと箱24本入り。
これが、なんと3、4日でなくなる。
つまり、ヤツは1日に6~8本ものビールを空けているのだ。

おまけにエロ。
ビールとシモネタが、彼の大好物というわけで・・・

排泄も衣服の着脱も自分でできるが
入浴だけは心配だからという家族の要望で
週に2度、入浴援助を入れている。

こんなジジイのために使われている介護保険。
おっかしいぞ~!と
今日も私はここで叫ぼう。

幻視もオバケも怖くない。

2017-03-10 01:12:51 | 日記
高齢者の幻覚にお付き合いするのは、ホントに疲れる。

「ケイコ日記」でお馴染みのケイコだけでも手に負えないのに
トシとケンゾウ、お前たちまでか…

夜勤であったきのうの深夜2時。
エントランスを映す防犯カメラのモニターに、トシを発見した。
去年の1月と7月にも紹介した「失禁恐怖ばあさん」トシ。
96歳になってもなお「自分のことは自分でできる」と介護を拒む彼女だが
実際は車椅子生活、極度の難聴、おまけに認定は受けていないものの
認知症であることは明白だ。

そんなトシが、外出着をまとい帽子までかぶって
エントランスの自動ドアを開けては外をうかがい
ときには闇に向かって手を振ったりしている。

数分間、モニターで様子を見ていた。
けれども一向に戻ろうとしないので、やれやれ…と手を差し伸べる。

「トシさん、どうしたの? もう夜中ですよ」

するとトシは言った。
「子供が助けを求めてきたの。
でも私が駆けつけるのが遅かったから、いなくなっちゃった。
かわいそうなことをした。あの子を助けなくっちゃ」

半べそをかきながら見えない子どもを案ずるトシ。
泣きたいのはこっちだ。

もう一人は、2週間前に入居してきたケンゾウ。
心臓が悪いとは聞いていたが
入居後すぐに友だちを作り、食堂では朗らかに人と馴染み
理想の入居者様、に思えた。

ところが入居1週間もしたころだったか
お腹が痛い、胸が痛いと訴えはじめ
食事は3食とも居室配膳となる。

そして3日前。
ケンゾウはおかしなことを言い始めた。
「そこにヒゲの生えたバアサンがいっぱいいる」
「床に女の死体が転がっている」
食事を配膳すると
「いずみ、ご飯が来たぞ。アキラ、寝てばっかりいないでこっちに来い」

もちろん、そこには誰もいない。
認知症によるものか、一過性のせん妄なのか
まだ、判断はできない状態だ。

この仕事に就いたばかりのころは
こうした話にいちいちビクついていた。

3年経った今は思う。
幻視でもオバケでもいいから
とりあえず、休憩時間だけは休ませてください、と。