ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

彼女はコメディアン

2016-01-29 23:48:35 | 日記
わがまま老婆・カヨコの言動―
それは職員のストレスであることは確かだが
時として、事務所に爆笑と元気をもたらすサプリにもなる。

記憶機能がおかしくなってきたのは去年の夏ごろからだったか。
夜中にコールしてきて、突然
「新しい年が来ました。おめでとうございます」
と、言った。
それが爆笑エピソード1だったと覚えている。

最近のコールは「トイレは何時?」と
「ご飯はまだ?」がほとんど。

今トイレに行ったばかりでしょ?
ご飯はさっき食べたばかりよ。

どんなに言っても、数分後には再びコールが鳴る。
まったくなぁ。
しかし部屋を訪ねてみると、たまに面白いことが…。

トイレ、トイレとうるさいのでトイレに連れて行くと
便座を見て
「こんなおおきな穴が開いてたら、私、落ちちゃうよ!」と
蓋を閉めてから座ろうとする。
(お~い、蓋をしたらウンコうまく出ないぞ~。笑)

間に合わずに便器横に落ちてしまった自分のウンコを見て
「やだねぇ、人のウチで誰かがウンコしたんだ」と
憎々しげにそれを踏み潰す。
(お~い、そのウンコはアナタのだよ~。笑)

(あ、こういうことって、家で介護をしている人からしたら
笑えないんだろうなあ)

この間は
「何日間後なの? ねえ、何日後なの?」と
唐突に、しかも、しつこく聞いてくる。
どんなに聞き返しても意味がわからないので
「1週間後、かな?」とテキトーに答えた。
するとカヨコは安心したように言った。
「ああ1週間後ね。ありがとう」
(あれ、こんな回答でよかったんだ。
それにしてもナンのことか、いまだにわからない)

そしてきのう、夜勤だったT君に聞いた話。
夜中にコールしてきて、カヨコは言ったという。
「きのう、五木ひろしに無理やりここに連れてこられたんだよ。
私はかよわい女なのに、ひどいことをするよね」

五木ひろし~?
かよわい女~?

妄想・妄言も、ここまでくれば大笑い。
あまりのことに
わがままも老婆もかわいく思えてくるのである。




さぞかしモテなかっただろう、彼の人生

2016-01-28 23:35:17 | 日記
「お会いしたいのですが、ご都合はいかがでしょうか」

半年前に会社を辞めた男(44歳)からメールが届く。
ギョロ目のハゲチャビンで
“青学出身”とは詐称であろうと噂されるほど
仕事のできない男だった。

会いたくはないがネタにはなるだろう。

1ヶ月ほどジラして「○日でよければ」と返事。
(実はジラしたわけではなく忘れていた)
そしてきのう、彼と会う。
ギョロ目のハゲチャビンと二人きりで会うほど
タフな精神力を持ちあわせていないので
仲のいいケアマネのYさんを伴って…。

居酒屋で飲むこと約2時間。
彼の話は驚くほどつまらなかった。
わざわざ「会いたい」とメールしてくるのだから
こちらとしては会社でネタになる話をしてくれるのだろうと期待したが
目指していたカウンセラーに断念したとか
もう一度介護職に戻ろうと思っているとか
ああ、つまらん!

その上、だ。
お会計になったら彼は電卓を使ってきっちりワリカンにしやがる。
誘ってきたのに?
まあ、いいだろう。別にご馳走になる義理はない。
しかしそのあとである。

店を出たところで彼はYさんと私を振り返り
にっと気味の悪い笑顔を浮かべながらこう言った。
「お二人とも、今日はいっぱい召し上がっていただけましたか?」
…あ、まあ。
「それはよかった。お誘いした甲斐がありました」

ついつい「ご馳走様でした」と言ってしまいそうになる彼の台詞。
しかし違う! それは金を払った人が言う台詞だろうが!?

彼が44歳まで独身である理由を改めて思い知らされる。
さぞかし、モテない人生だったんだろうなあ。

ま、そんなヤツの誘いに乗った私もどっこいどっこいか?




・・・で、ござる。

2016-01-26 00:53:00 | 日記
ソノ子さんは足腰に難がある、という程度の状態で
2年前に入居された。

しかし足腰の痛みを理由に食堂に来るのも嫌がり
部屋から一歩も出なくなり
食事は配膳しなければ食べようとしなくなり…
そんな生活が続くうちに
一日のほとんどをベッドで過ごすようになってしまった。

でも、なんとかお風呂には入ってもらいたい。
お風呂に入りましょう。では、間違いなく拒絶する。
だったらどうすればいい?

色々な作戦を試みた末に、ヘンテコな入浴介助方法が完成した。

ソノ子姫~、おやつはいかがでござるか?
「おや、おやつでござるか?」
(こうしてベッドから起こす)

ソノ子姫~、痛み止めのお薬を塗るから
その前に足を洗うでござるよ。
「おや、足を洗うでござるか?」
(こうして浴室へ)

ソノ子姫~、濡れてしまうからズボンとパンツを脱ぐでござるよ。
「おや、これを脱ぐでござるか?」
(こうしてリハパンを脱がせることも成功)

ソノ子姫~、ついでに上も脱いでしまわれてはいかがでありましょうか?
「はいはい、これも全部脱ぐでござるな?」
(これでソノ子さんは全裸)

ここまでくれば、あとは簡単。
歌が大好きなソノ子さんのために唱歌や民謡を歌いだすと
彼女はノリノリで歌いはじめ
頭からシャワーを掛けられても喜んで歌い続ける。
二人で楽しく歌いながら、洗身・洗髪、完了~~~!というわけだ。

とんだ猿芝居。
しかしソノ子さんの清潔を保持し
かつ、本人もこっちも楽しめるのであるから
理想的な援助方法といえる。
(これをやっている最中にご家族が入ってきて
とっても恥ずかしい思いをしたというヘルパーもいるが)

十人十色の介護手順。
私たちはそれに応じて
性格俳優、トレンディ俳優、コメディアン、チンドン屋と
さまざまな表現力を持たなければならない
のでござるよ(笑)。

これって、介護技術習得より難しいかも、ね。









エロリスト

2016-01-23 19:35:11 | 日記
数えたことはないけれど
このブログで一番登場回数が多いのは
おとぼけM三郎かもしれない。

日中、食べこぼしたご飯や味噌汁を上着やズボンにつけたまま
車椅子に座って食堂で眠りこけている彼を
嫌う利用者は少なくない。

特に女性。
どんなに認知症が進んでいても
麻痺で食事介助を必要とする生活を送っていても
そこは女性。キチャナイ男は嫌いなのである。

しかし夜中に徘徊した挙句、転倒したり
非常ボタンを押して消防車を呼んでしまったり
そんなことさえしてくれなければ
我々スタッフとしては誰よりも愛すべきおじいちゃんであり
私のブログにおいては最高のキャラクターなのだ。

きのうも面白い話があった。
彼の就寝介助に行った登録ヘルパーから聞いた話なのだが・・・

「おれ、ヒゲがすぐ伸びちゃんだよね。どうしてかなあ?」
M三郎がそう言ったので
20代の登録ヘルパー・あおいちゃんはこう答えた。
「あのね、ヒゲやすね毛って、エロいと伸びるんですって」。

するとM三郎は、ひ~ひっひ~といつもの声なき笑いを発したあと
こう言ったという。
「じゃ、おれ、エロリストだあ!」

う、うまい! 座布団三枚!!!
認知症が進んでヘンな行動ばかりしている90歳のおじいちゃんが
「おれはエロリストだ」なんて、想像力、凄すぎる!

そういえば1年位前にM三郎の排泄介助を行っていたとき
彼がかつて3年間浮気をしていたという衝撃的なカミングアウトを
受けたことがあったっけ。

人畜無害な好々爺に見えるM三郎であるが
ヤツこそ、油断のならないエロリストなのかもしれない。

<追記>
文章だけ書ければいいので
ブログのイラストやレイアウトには頓着しない私であるが
ちょいとヒマな時間があったので
気まぐれにテンプレートを変えてみた。
桜の季節よ、早く来~い!と願いをこめて。


雪の日の花火

2016-01-22 00:55:47 | 日記
この間の、雪の日の話。

夜勤だった私は、外にある喫煙所で一服しながら
舞い落ちる初雪を楽しんでいた。

これから排泄介助に行く先々で
「雪ですよ~」と教えてあげよう。
夜中でもしっかり覚醒する人がいたら
カーテンを開けて一緒に雪を愛でよう。

なんだかわくわくしていた。

そして訪れた、おとぼけM三郎の部屋。

夜間、寝かせても寝かせてもムックリと起き出し
食堂でテレビを見ていたり
建物内(時には外)を車椅子で徘徊していた彼であるが
先日やっと家族からテレビを買ってもらったことで
最近はいつも居室内のテレビに見入っている。

さてさて、午前3時半。

寝てるかな? 起きてるかな?
そう思いながら彼の居室のドアを開けると
ヤツは案の定、かぶりつきでテレビを見ていた。

M三郎さん、雪よ、雪が降ってるのよ~。

そう声掛けしながら近寄る。

しかし、彼が見ていたテレビ画面を見て、思わず「はあぁ~?」

なんと、そこに映っていたのは真夏の花火映像。

どのテレビ局の何の番組か知らないが
涼しげな音楽をBGMに
ひたすら、打ち上げ花火の映像が流れているのである。

昼夜逆転して久しいM三郎。
お前は季節までも逆転してしまったのか!?