ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

プラネタリウム

2016-03-27 22:17:52 | 日記
仲良しの同僚N子と
多摩六都科学館なるところに遊びに行ってきた。

目玉は「最も先進的」として世界一に認定されたプラネタリウム。
世界最多1億4000万個の星を大型ドームに投影するんだそうだ。

どうしても、二人でここに行きたい!
まるで付き合い始めたばかりのカノジョからの誘いみたいじゃないかと
苦笑しつつ
無邪気な押しに負けて東京都下まで足を伸ばしてきたわけである。

強引に連れて行かれた体(てい)ではあるが
実は私もプラネタリウムが大好きだ。
しかし、小さい頃からプラネタリウムに行くと
どうしても寝てしまう。
若き日、おっさんとデートで行ったときも
気づけば小さくイビキをかいていたらしい。

満天の星空、心地よいリクライニングシート。
これで寝ないほうがおかしい。
この意見に賛同してくれる人は少なくないだろう。

私は言った。
「悪いけど、私、寝ちゃうかもしれない。
もし寝たら、つんつんと突っついて起こしてね」
N子は応えた。
「任せといて!」

そして開演。
館内の照明が少しずつ落とされ
「これは午後5時のこの街の風景です」というアナウンスが流れる。
ああ、この瞬間がいい。
暮れなずむ街、黒いシルエットになって浮かび上がる家々
もうすぐ頭上に煌くであろう一番星・・・

いよいよはじまるね!
少しばかり興奮してきて、私は隣のN子のほうに顔を向けた。

すると、なんと
彼女は早くも口を開けて寝ているではないか!?

開演からまだ1分足らず。
肝心な星はまだ一つも出ていない。

いつでもどこでも眠れるのが特技と言っていたけれど
まさかこんな早く眠りに落ちるとは…
しかも、寝てしまうだろう私を起こすと張り切っていたくせに。

その後彼女を起こして、私が彼女を起こして
1時間に及ぶ星座物語を二人で堪能したわけだが
今思い出されるのは
天井に投影された美しい星々ではなく
無邪気でかわいい同僚の寝顔ばかりである。



ついに別れの時

2016-03-23 00:48:19 | 日記
ジジイXが逝った。

死者に鞭打つような真似はできないので
ジジイXを書く最後のブログとなるであろう今日は
彼を、X様と呼ばせていただく。

その日X様、は夜間帯から大騒ぎだった。
「水もってこい!」
「背中をさすれ!」
「トイレ!」

夜勤の同僚は他の援助ができないほど振り回されたらしい。

それは朝も続く。

つらいなら朝食は部屋に運びますと言うのを振り切り
彼は食堂に行くと言い張った。
そして呼吸が苦しいと言いながらも、完食。
挙句、いつものように早く部屋につれて帰れ!と怒鳴り散らし
これ以上騒がれては周囲の方に迷惑がかかると
同僚が早めに車椅子で連れ帰ったという。

部屋に帰ると、今度は「便がしたい!」。
同僚は彼を便座に座らせた。
ドアの陰で様子を伺いながら待つこと数分。
「どうですか?」と、そっと中をのぞいてみたら
彼は、便座に座ったままガクッとうなだれ、返事もしない。

慌てた同僚はすぐにベッドに運び、建物の責任者を呼ぶ。
しかし、このときすでに脈は取れなかった。

延命処置はしないということだったが
連絡を受けた長男は救急搬送を望む。
搬送を要請した救急隊員からの指示で
心臓マッサージを施す同僚だったが
もはや、息を吹き返すことはなかった。

末期の心不全と腎不全で夏まで持たないと言われてはいたが
それにしても、あっけない幕切れだった。
容態が悪くなってきた先週あたりから
職員の誰もが
この先しばらくは彼に悩まされるだろうと思っていたのに。

しかし
夜間から翌朝までお得意の横暴振りを発揮し
朝食を残さず平らげ
多量の便を排泄し
職員ではあるが女性に看取られ・・・
大往生、ではないか?

いい意味で心に残る人ではなかったが
誇り高き男の末路について
少なからず学ばせていただいた。

X様、どうか天国で安らかに。



深夜に料理がしたくなる女

2016-03-19 00:11:19 | 日記
なぜだろう?

最近、夜中になると料理をしたくなる。

きのう、寝る前にコンニャクを一口大にちぎり、冷凍。
今日はそれをお湯で解凍し
ネットのレシピで見た“カラコン”(コンニャクの唐揚げ)を作った。

これ、面白い食感。
ビールのつまみに、非常に合う。

ブログを書いている今は
昆布と海苔の佃煮をつくっている。

この季節にスーパーに出回る生海苔と刻み昆布に
出汁、砂糖、醤油、酒、味醂を加えて
汁気がなくなるまでコトコト煮詰める。
最後に練りわさびをたっぷり加えて出来上がりだ。

これ、桃屋の“ごはんですよ”に負けない。
いや、わさびを加えた分だけ美味しく仕上がっているかも。

この間つくったものを瓶詰めして会社に持っていったら
大好評だった。

そうなのよ、おいしのよね、と
うきうきしながら今日も深夜にそれをつくっているわけである。

あ、また冷蔵庫を開けたくなってきた。

レンコンがある。豆腐がある。たらこがある。
う~ん、何かつくりたい!
おいしいもの、つくりた~い!

いや待て。
明日は夜勤。
お疲れ様~!の夜勤明け弁当、つくっちゃおう。

一昨日つくったヒジキの五目煮をご飯に混ぜてお握りをつくり
そこにカボチャとアスパラのコンソメ煮と
菜の花のお浸しを添えよう。
で、出掛けにカップのトン汁を買っていけば
おお、なんと素晴らしい朝ご飯になることか!?

さあ、お握りをつくるぞ!

夜勤はイヤだが、せめて明けのご飯をおいしく食そう。

かくして現在、午前1時。
私はこれからキッチンに立つ。

夏を待たないで

2016-03-17 23:54:16 | 日記
かのジジイXが、夏まで持たないだろうという。

車椅子で送り迎えしなければ食堂に来られないほど
体力が落ちたとはいえ
毎食ほとんど残さずに平らげている。
そんな食欲旺盛なジイサンが“余命数ヶ月”?
はぁん? 冗談も休み休み言ってくれ!

訪問医の診断に、誰もが半信半疑だ。

しかし夏まで持たない…という言葉を聞いて
ふと、ウチに来てからのジジイの2年間の衰勢が
走馬灯のように甦る。

2年前に入居してきた彼は
その大きな声と偉ぶった態度でいきなり天下を獲った。

時は避難訓練の少し前。
「もっと積極的にやらなければいけない!」と
お節介にも他の入居者に発破をかけ
避難訓練の予行演習なるものを開く。
一同を食堂に集めたジジイは
「僭越ながら」と、まるで理事長のように挨拶したのだった。

その後、入居者の“理事長”だけでは飽き足らなくなったのか
彼は介護施設の“施設長”を気取り始める。

「元気かい?」「頑張らなくちゃダメだよ」

杖をつきながら食堂を歩き回っては
心身に障害のある高齢者一人ひとりに声をかけていたあの頃
高みに立って、自分以外の高齢者を弱者として扱っていたあの頃
ああ、あの頃がジジイのピークだったのかもしれない。

あのまま天に召されていれば
もしかしたら、彼は自らをヒーローと信じ
誇りを保っていられたのかもしれない。

しかし、「素手でチンチンを洗え」とヘルパーに命じたことが発覚してから
彼は転落の一路をたどることとなる。

お気に入りのヘルパーの出入りを禁じられ
「虐待されている」と警察に駆け込んでも相手にされず
他の入居者からは「厄介なジイサン」として白い目で見られ
大切な息子からは絶縁を言い渡され…

思えば、衰えを見せ始めたのはあの頃からだ。

もっとも我がままぶりは健在で
食事が済んで早く部屋に帰りたい時は
箸でチンチン、チンチンと食器をたたき
迎えがなかなか来ないと
「俺がいったいどんな悪いことをしたというんだあ!」と
怒鳴りまくることもある。

しかし、かつてのように他者を圧倒する力はなく
どんなにわめいても
「狂ってきた」としか表現されないのである。

今日、ジジイからコールがあった。
息も絶え絶えに「苦しい、助けてくれ」と叫んでいる。
いよいよその時か!と、同僚が急行。
帰ってきた彼女に話を聞くと

「首にヒモが巻き付いている。
誰かが俺を殺そうとしてヒモで締めたんだ!
た、助けてくれ!!!」
ジジイXは、ベッドの上でのた打ち回っていたという。

見れば、非常ボタンの本体から伸びたコードの上に頭を乗せて
彼は寝ていた。
そのコード(ヒモ)が首に巻きついているとヤツは錯覚し
「首を絞められた!」「殺される!」と叫んでいたらしい。

あんなに偉ぶっていたジジイXよ
私たちを“メイド”と呼び続けたジジイXよ
この期に及んで
お前は何を恐れているのか。

“夏”を待たなくていいから
どうかどうか、心安らかにー。



心のない、謝罪

2016-03-15 23:40:03 | 日記
「ごめんなさい」となかなか言えない人もいれば
いい加減に「ごめんなさい」と言ってしまう私のような人もいる。

この間、職場で服薬ミスがあった。
2人の利用者に対して、服薬の援助をすっ飛ばしてしまったのだ。

事務所に戻ってきた私に、若き上司が言った。
「服薬援助、忘れてたんですよ」

その言葉を聞いて、咄嗟に謝る私。
ミスした覚えはないが、というか
自分の行動を振り返る間もなく
速やかに「すみませんでした!」と頭を下げた。

謝れば済むと、安易に考えたわけではない。
とりあえず謝っておいて、あとで策を練ろう
短い時間にそんな悪巧みを考えたわけでもない。

注意されたら謝る。
それは、言ってみればクセなのだ。反射行為なのだ。

迅速かつ素直なこの謝罪行為は予想外だったのか
上司は一瞬、言葉を呑む。
そしてひと呼吸入れてから、彼は言った。

「これからは気をつけてください」

それから24時間。
その服薬ミスを犯したのは、私ではないことが判明した。

そうと知って勢いを取り戻した私は、上司に撤回を求める。
「きのうの件、私じゃありませんでしたよ。濡れ衣です」

すると彼は言った。
「でしょ? 僕もおかしいと思ったんですよ。
誰がやったとは知らないけれど、とにかく服薬ミスがあったってことを
あなたに報告しただけなのに
あなたがやたら謝るから…じゃあ、あなただったんだと思って」

なんだ、謝って損した。

小さいころ、姉と二人で正座させられ
よく母に叱られた。

私は悪くないと、頑固に謝らない姉。
その隣で、「ごめんなさい」を繰り返す私。

結局、よりいっそう叱られたのは私のほうだった。
「謝れば済むと思ってるんでしょう!?」と。

心にもない「ごめんなさい」は身の破滅に繋がる。
今回のことで、つくづくそう思った。