ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ありがとう。その言葉をみんなに。

2017-12-31 01:44:49 | 日記
おっさんと二人だけの忘年会。

どこかでゆっくりおいしいものでも食べながら…
おっさんはそう思っていたらしいが
いや、今年は中島みゆきを歌いまくって締めくくる!
私はそう決めていた。

話し合いはない。
問答無用! 私の意見が最優先だ。

12月に入ってから休みのたびに少しずつ大掃除をしてきたので
今日はおっさんに残しておいた窓拭きくらいしかない。
カレがせっせと窓を拭き、二人で正月の買出しを終え…
夕方4時半。さあ、約束どおり歌う忘年会だあ!

中島みゆきを10曲歌う!と宣言していたが
そんなもんではない。
昔の楽曲を含め、20曲以上は歌ったっけ。
ああ、最高! 歌いきった! 魂を燃やしきった!

それから3時間後、今度は行きつけの飲み屋さんへ。
そこでようやく、しみじみと今年を振り返る。

再出発10年目の年の瀬。
これまでの道のりを振り返っても、もはや二人に暗さはない。
すべてが笑い話だ。

オレは本当に幸せ!と繰り返す上機嫌のおっさんに
私はナイショ話を打ち明けた。

息子が大学を卒業したら、離婚届を突きつけようと思っていたこと。
(そのころは羽振りがよくて、おっさんは威張り散らすイヤな男だった)
倒産、破産のあと心身とも衰弱しながら就活するおっさんの名を騙って
こっそり、1年中出張ばかりの健康機器の販売の仕事に応募していたこと。
(つまり、追い出そうとしていたわけね)

今だから言える話に、おっさんは驚愕。
そ、そんなことが!?…と。

まあ、いいじゃん、いいじゃん。
結局その目論見が果たせなかったからこそ
今、あなたの横に私がいる。
いい女房がいて、本当によかったねえ。

そうだよな、オレはホントに幸せだ。
オマエがいなかったらオレは死んでた。
今年1年楽しくしていられたのも、オマエのお陰だよ。

酒と、逞しくなった女房の言葉に
いいように操られ
一度は驚愕したおっさんも再び上機嫌で酒をあおるのだった。

介護福祉士の試験に受かって
東北旅行に行って
仲良しの仲間と仕事帰りの一杯!を覚えて
映画や本をたくさん楽しんで
ああ、本当にいい1年だった。

でも、そんな1年を過ごせたのも
おっさん、あなたがいたからなんだよね。

今、傍らのソファでイビキをかいているおっさんに告げよう。
今年もありがとう。
来年もよろしくね。

明日(今日?)の大晦日は夜勤。
この幸せな気持ちを、ジイチャン、バアチャンたちに届けてこよう。

今年も本当にお世話になりました。
2018年、どうかアナタも
たくさんの幸せ気分を味わえますように。

初対面、でっか!?

2017-12-26 23:55:55 | 日記
なぜか、認知症の女性ばかりが集まってしまった食堂のテーブル。

短期記憶が猛スピードで抜け落ちるミネ
自分の母親がまだ生きていると信じているユキエ
満腹中枢がイカれて人のご飯まで食べてしまうサナエ
時間も金銭感覚もしっかりしているのに自分の部屋だけは覚えられず
いつも人の部屋に帰ってしまうトシ
毎朝毎朝、事務所にやってきては自分のポストの番号を尋ねるハナコ

トシだけはまだ入居1年未満だが
それ以外の5人はもう4年近く同じテーブルで食事をしている。

なのに、なのにねぇ・・・

きのう、そのテーブルの近くを通りかかったときのことだ。

誰が口火を切ったのか、きっかけはナンだったのかわからないが
彼女たちが自己紹介をしている。

「はじめまして。私は山でも川でもなく、森田と申します」(ミネ)
「はじめまして。私は後藤と申します」(ユキエ)
続いて残りの4人も口々に名乗って挨拶を交わすと
ミネが「私は山でも川でもなく、森田と申します」と
振り出しに戻って自己紹介をはじめる。

エンドレスに続く顔馴染みたちの初顔合わせ。

毎日が新鮮な、認知症6人衆である。

妄想・必殺介護職人

2017-12-22 22:09:41 | 日記
キワが転倒した。

キワといえば、認知症を嘲笑う認知症の性悪女。
その性格の悪さゆえに
食堂で話をする相手もいなければ
お茶でも出してやろうという優しさを見せる職員すらいない。

新しく入ってきた人や孤独な入居者には積極的に声をかける私だが
キワだけはお断りだ。

さあて、そのキワが部屋で転倒した。

朝、服薬介助で訪問してみると
ベッド脇で、下半身スッポンポンのキワが仰向けに倒れている。
しかも大失禁!
全身、オシッコの海にひたっているではないか。

意識はある。
どこも怪我してない、痛くもないと、はっきり言う。

とにかくキワを助け起こし
シャワーで身体を洗浄してから服を着せた。
それから彼女をソファに座らせ
オシッコの海のお片づけ。
あ~あ、夜勤明け早々、なんでこんな不運に見舞われる!?

しかしこれも仕事だ。
相手がキワだからといって見捨てるわけにいくまいよ。

が、腹が立ったのはそのあとのキワの態度である。

私がせっせと床のオシッコを雑巾で拭いていると
まるで何事もなかったように
ソファに深く座り優雅なマダム然としている彼女が言った。

「ね~え、○○さんって、東大出身なんですってね?」

○○さんとは男性の入居者さんのこと。
キワは高学歴と一流企業が大好物なのだ。

さあ、よく知りませんけどと私がすっとぼけると
「ウチの主人は慶応なの。あなたのご主人は?」
と、きやがった。

オマエよぉ、それ、今する話か!?
だいたいオマエは、つい数分前まで
下半身スッポンポンでオシッコの海にひたってたんだぞ!
その後始末をしている私に「ありがとう」を言うどころか
夫の出身大学を聞いてくるとは
いったいどんな了見だ!!!

ふつふつと込み上げる怒り。
どうしてくれよう。

あ、今ひらめいた。
この間から目を患っている彼女に
私たちが1日6回、点眼の介助をしている。
そうだ、それを狙おう。

チャララ~ン!という音とともに登場する
必殺介護職人チカ。
目薬の代わりにラー油を垂らし
激痛に悲鳴を上げるキワに
“世の中、舐めなさんな”とひとこと吐いて
クールに去っていく。

うん、これイイね、イイね、イイね!

(もちろん、やりませんけどね。
妄想しただけで怒りが少し治まりましたので)


汚物はトイレに流してください。

2017-12-20 19:42:57 | 日記
サナエが事務所にやってきた。

※サナエとは、12/4付けのブログにも紹介した認知症の女性。
 家族がまったく訪ねて来ないから、ゴミ袋も大好きなパンやお菓子も
 買うことができない、自称“捨てられた女”である。

な~に? サナエさん。

聞けば、キッチンの流しが詰まってしまったと言う。

サナエは部屋で調理なんぞしない。
なのになぜ、流しが詰まってしまったのか?

訝りながら、部屋に向かう。

うっ、なんだ、この悪臭!?

手袋をつけた手で排水溝に詰まったものを取り出してみたら
な、なんと、それはドロドロの排泄物。

キッチンの流しに詰まっていたのは
ウ、ウ、ウ○コだったのか~~~!?

サナエさん、これ、ウ○コよね?
「そうね、ウ○コだわね」
なんでこんなところにウ○コが詰まってるわけ?
「やだ、そんなこと聞かれても、私にもわからないわよ」

お前が知らなきゃ誰が知る~~~!?

あのね、しつこいようだけれど私は言うよ。
認知症の進んでしまった人に
キッチンや浴室付きの部屋で
どうぞ“自分らしく生活してください”って
そりゃ、無理があるだろーーー!!!

腐っても鯛

2017-12-17 00:29:56 | 日記
友人と二人の忘年会。

5時間しゃべりまくりの楽しい夜だったが
一番笑ったのは、彼女の、夫への不満であった。

「何が腹立つって、アイツ、話の前に必ずこう言うの。
『笑えるんだけどさ』って。
それがホントに笑える話だったらまだいいけど
ちっとも面白くない。
なのに毎回毎回、『笑えるんだけどさ』って枕詞をつけるわけよ。
あれがイヤでイヤで…ああ腹が立つったらありゃしない!」

娘も息子も結婚し、今や彼女たち夫婦は家庭内別居。
それぞれに部屋を持ち
ご主人は食事のとき以外、自分の部屋に引きこもっているという。

だから、二人が言葉を交わすのは食事のときだけ。
しかしご主人のこの“笑っちゃうんだけどさ”で始まる話に
空気はますます冷えるのだそうだ。

“笑っちゃうんだけど”と前置きされた夫の“笑えない”話に妻は怒り
その話を聞いた私は、腹を抱えて笑ったのだった。

夫といえば、きのう我が家ではこんな会話があった。

私「ねえ、俳優のジョージ・クルーニーが、昔からの友人14人を家に招待して
一人ひとりに感謝の印しとして1億円ずつプレゼントしたんだって!」

おっさん「すごいな!」

私「でしょ?」

そのあとに、私はこう言うつもりだった。
「そんな友だち、ほしいよねえ」

しかしおっさんは私の言葉を聞く前に言った。
「そんな男になってみたいな」

1億円をくれる友人がほしいと思った私と
1億円を友人にプレゼントできる男になりたいと願うおっさん。

なんだかホッとした。

腐っても鯛。
落ちぶれても(?)恵まれる立場より贈る立場でありたいと思っている
おっさんの心意気に
妻はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ
この人が夫でよかった、と思ったりしたのだった。