ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

笑いの効果

2014-03-16 00:18:07 | 日記
財産はあるらしいが
未婚のまま90代に突入した天涯孤独な女性利用者Mさん。

きのうの夜勤中、珍しく彼女から非常コールが。
「とにかく来てください」と繰り返すので
また転倒したか!?と大急ぎで居室に向かった。

すると、転倒も転落もせずベッドに寝ていた彼女が
つけっ放しになっているテレビを指して言う。
「見て!誰かが私に断りもせずに、この部屋を使って映画撮影しているの」

テレビ画面に映っているのは
タレントたちがワイワイお喋りしているだけの
深夜のバラエティ番組。
何をもって、自分の家が撮影されていると思ったからわからないが
Mさんは半分怯え、半分憤っている。
「私に無断で撮影するなんて許せない。
警察に訴えようかとも思うの」

日ごろ、あ~、う~、しか言わない彼女が
シャキシャキと言葉を発するのに驚く。

これは付き合ったほうがよさそうだな
そう判断し
「それは許せないことですね。
わかりました、私が建物の周りを見に行って
撮影している人がいたら怒ってやります。
だからどうか安心してください」
手を握り、言葉を尽くして
私はMさんに安堵感を与えようと努めた。

と、そんなときになぜか鼻がむずむず。
Mさんに真剣な視線を向けながら
ヘッ、ヘッ、へ~ックション!!!と
私はくしゃみを三連発。

これにMさんが予期せぬ反応を示し、大笑いし始めた。
しかも、止まらない。
いつも無表情で、あ~、う~しか言わないMさん。
彼女がこんなに大笑いしたのを見たのは初めてだ。

「夜遅く起こしちゃったから
アナタ、風邪を引いちゃったのねえ。ごめんなさい」

あ、いえいえ、別に風邪を引いているわけではないんですけれど。

しかしこのくしゃみ効果によって
彼女の恐怖も憤りもおさまったらしく
まもなく、彼女はストンと眠りに落ちたのであった。

安らぎを得ていただこうと言葉を駆使ししたけれど
彼女にそれをもたらしたのは“三連発のくしゃみ”だったらしい。

笑いこそ
恐怖や不安、苛立ちを取り除く特効薬であると
あらためて思い知らされた。