ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

医療放棄

2020-04-26 23:26:00 | 日記
人並みの苦労を味わいながら、62年間生きてきた。
満ち足りていたし、幸せだった。

息子には彼が小さいときから
「人生を楽しめ」と伝えてきた。
その唯一の教えを守って、彼は人生を楽しんでいる。

うん、悪くない。
私は自分の人生をとことん楽しんできたと思う。

なんだか最期の言葉みたいになってしまったけれど
夕べ、ふと思ったのだ。

幼い子供を抱えながら
コロナに感染して途方に暮れるシングルマザーがいるという。
入院しなければならないが
子供を預けることもできない。
いや、子供もすでに感染しているかもしれない。

どんな地獄だろう。

私がもしコロナに感染し、治療が必要になったとしたら
それにかかる費用と労力を
こういう母子に提供してほしい。

つまりは医療放棄。

人生を楽しんできた私が入院や治療を拒むことで
これからの命、そしてそれを育てる命を救えないものかと。

そうすべきだと決意したところで眠りに落ち
朝を迎えてはたと気づく。

そうは言っても呼吸ができなくなって
苦しみもがきながら死ぬのはイヤだ。

安楽死を望んでも無理な話なわけだから
医療を放棄したら
私は壮絶な死を遂げることになるのだろう。

医療放棄を宣言して他の誰かの命を救い
そして静かに幕を下ろせる方法…

うーん、私なんぞが考えたって
答えが見つかるはずもないのけれど。

こんな時世に昇進かよ!?

2020-04-25 01:02:00 | 日記
まさに、青天の霹靂。

今週の頭に上司から呼び出された。
何をやらかして注意されるのだろうと身を引き締めたが
今の副施設長が異動になるので後任を引き受けて欲しい
というのである。

私が副施設長?

は?と口を開けたまま、固まる私。
ようやく口をついて出てきたのが
「青天の霹靂」という
これまで日常では使ったことのない言葉だった。

夜勤もしなくていいし、給料も上がるよ。
それに何より、あなたの能力が発揮できる役職だ!

天使の声色で悪魔がささやく。

思わずくらっとして、考えさせてくださいと言ってしまった。

しかし夜、冷静になってみたら
どう考えたって無理な話。

建物の設備関係、労務、保険、福利厚生、PCなどの知識・能力を習得し
さらにそれを、常勤職員や登録ヘルパーに伝えなくてはいけない。
始める前から無理!と諦めるのは情けないが
これまで福祉大学卒業の20代の男性がやってきた仕事を
もうすぐ62歳の記憶障害甚だしいオバちゃんが引き継ぐのは
どう考えたって無謀な人事だ。

やっぱりお断りします。
いやいや、大丈夫。あなたならできる。

こんなやりとりを、すでに3回。
そのたびに上司の説得に負けて返事を延ばしてきたが
やっぱり無理だーーー‼︎

あさってはいよいよ、最終結論を告げなければならない。
今度こそ言うぞ、勇気を出して言うぞ
お断りしますと。

失業者が続出するこのご時世
仕事があるだけでもありがたいのに
昇進・昇給の話を断るなんて
もったいないし、申し訳ないとは思う。

でも、命すら守ることが難しい今
会社の都合に振り回されて自分を見失ってはいけない。

感染が、死が、そこにあるかもしれないという状況において
私はポストや給料より、自分らしく生きられる道を選ぼう。

よし、あさってこそ不退転の意思を!













元気

2020-04-18 01:16:00 | 日記
家の近くに川がある。

その河川敷で
父親とサッカーボールを蹴って遊んでいる子供たちがいた。
キャッチボールやバドミントンやフリスビーを楽しんでいる若者たちがいた。
土手で
ジョギングをしている中高年がたくさんいた。
ウォーキングをしている老夫婦もたくさんいた。

ほとんどがマスクをしていることを除けば
まるで何事もない、うららかな春の休日風景。

みんな楽しそうだ。
生きていることを謳歌している、そんな感じだ。

本当はコロナ感染の恐怖に怯えているんだろうけれど
いや、だからこそ、せめて晴れた日は外に出て
恐怖に打ち勝ち
元気であろうとしているのだろう。

そんな風景を見ながら通勤していると
こっちも元気になってくる。

そうだ、
明日はウチのジイさん、バアさんたちに
私の笑顔と元気を届けてこよう。
それが今の私にできる精一杯のことなのだから。


コロナにも動じない認知症ワールド

2020-04-13 01:00:00 | 日記
みなさんもそうだろうが、ウチもいろいろ、いろいろ、大変である。

◯家族や知人・友人の来訪は控えていただく。
◯やむを得ない来訪には、もちろん検温&うがい手洗いをお願いする。
◯1日何度も、建物中の換気とアルコール消毒。
(夜勤者は1階から3階までの手すりをすべて一人でアルコール消毒。
これに30〜40分もかかるのよねえ)
◯感染者が出た場合に備え、濃厚接触者がわかるように食堂の席を毎食ごとにチェック。
(食堂に来るたびに違う席に座る人もいて、それを止めることはできない)

そして緊急事態宣言がなされてからはますます厳しくなり
感染防止のため「4人がけのテーブルに2人までしか座らせてはならぬ!」
という本社からの通達が。

無理でしょー?
いやいや、ならば食事時間を二部制にしよう。

というわけで、先日から食堂利用を
早く来る人、遅く来る人の二つに分けることにした。

すみません、コロナ感染を防ぐために二部制にします。
食堂に来るのを遅くしていただけませんか?
理解できる人にはそう言って協力を要請。
この事態を理解できない認知症の方は
早く食堂に連れてきてご飯を食べたらとっとと部屋に連れ帰り
そのあと、自立組に食堂を利用していただこうというわけだ。

こうして、食堂の二部制は順調なスタートを切った。
いや、切った、かに見えた。

しかしそこにはこんな落とし穴があった。

認知症のジイさん、バアさんたち
部屋に戻したのも束の間
数分と経たないうちに「ご飯の時間ですかあ?」と
食堂に戻ってきてしまうのである。

食堂にはこの状態を理解できる自立の高齢者が来ている。
そこへ、認知症の方々が一斉に戻ってくる。

二部制、意味ないじゃーん。

私たち職員がどんなに頑張っても
コロナの脅威なんぞ関係ない認知症の方々が自由に暮らしている以上
ウチのようなサービス付き高齢者住宅では
コロナ感染拡大防止なんて、とうていできそうにない。

時計

2020-04-04 01:51:00 | 日記
軽度の認知症があるキョウコ。

コロナ感染防止のため
家族からデイサービスに行くことを禁止されているし
ウチの体操教室も
先生が外部から来ているという理由で中止。

そこで、自分なりに健康対策と暇つぶしを考えたのだろう。
この間から、建物内の廊下を利用して
ウォーキングに精を出しはじめた。

それは大変いいことなのだが…

キョウコはウォーキングを始めるときに
玄関の上がり框(かまち)に置き時計を用意する。

「こうすれば、ウォーキングが終わって部屋に帰ってきたとき
時計を見て何分歩いたかわかるでしょ?」

なるほど。

しかし悲しいかな
記憶障害のあるキョウコは
自分が何時に部屋を出てウォーキングをスタートしたか
その時間を覚えていることができない。

せっかく玄関に置いた時計も
現在時刻を知るためだけのもの、でしかないのである。

キョウコよ
悲しいが、努力だけは認めよう。