ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

元気すぎる親の世話も大変だぁ

2016-06-28 00:23:00 | 日記
友人が、とっても疲れているらしい。

飲むか!?
「それもいいけど、ゆっくりお風呂に浸かりたい」
じゃ、スパにでも行くか!?
「スパもいいけど、お酒も飲みたい」
ああ、わかった、わかった。
ならば一泊で温泉にでも行こう!

かくしてきのう、電車で2時間もかからない近場の温泉に行ってきた。

「この間起きようとしたら、めまいがして立つこともできなかったの」
「そのあと何回かそんなことがあって、病院に行ってみたら
血圧が180/160だったのよ。ヤバイよねぇ」

電車の中でそんな話をする彼女に対して
私も「じゃ、温泉も長く浸からない方がいいね」と
気を遣っていた。

しかし初夏の山と渓谷を目にして、熟女2人の憂いは一気に晴れる。
ビールと焼酎、食材をたくさん買いこんで川沿いのコテージに着くと
料理好きの私たちは嬉々としてツマミを作り
露天風呂にゆっくり浸かってから早々に宴会をはじめたのだった。

一夜明け…
当然、食事の前に朝風呂を楽しもうということになる。

「飲みすぎた~。血圧上がっちゃってるだろうな」

心配しながら、脱衣所の血圧計に向かった彼女。

しかし、それまでずっと危険な数値を記録していた血圧が
なんと120/80という正常値を出した。

うっそ!!!
なんで下がってる???

あはははは!と、2人して笑う。
原因はやっぱりアナタの“おかあちゃん”だったんだあ。

50代にして未婚の友人は、3年前から両親と同居し始めた。
フリーの編集者として仕事には恵まれていたが
心臓病と肺がんを患った父親が心配で
悩んだ挙句、マンションを買って両親を招きいれたのだ。

しかし同居してみると
大変だったのは病気の父親ではなく
大声を発しながら元気に、というか落ち着きなく動き回る
大阪出身の“おかあちゃん”であった。

「おかあちゃんがうるさくてかなわんわ」

この3年間、彼女はどれほどそうつぶやいてきたことだろう。

さて、たった1泊とはいえ、彼女が“おかあちゃん”から離れた。
すると、高かった血圧が一気に正常値に戻った。

大声で1日中喋っているパワフルな関西人の“おかあちゃん”が
30年以上気ままな一人暮らしをしてきた友人の
ストレッサーになっていたに違いない。

障害を負った親の介護は大変である。
でも、元気すぎる親を持った人は、それはそれで、過酷なようだ。

友人の、元気すぎる母親の介護は当分続くだろう。

「こんなに楽しかったのは久しぶり。また絶対、2人で温泉に行こうね」
と、彼女。
うん、わかった。
私はそんなアナタをケアしていきましょう。





おばちゃんたちよ、愛を求めて立ち上がれ!

2016-06-26 00:51:57 | 日記
58歳にして、モテ期である。

94歳のシンジロウさんは言う。
「あなたは足が長くてスタイルがいいねえ。
あなたのご主人はこんな奥さんと歩けて幸せだねえ。
あなたのご主人に嫉妬しちゃうよ」

2月19日のブログで紹介した“ほのぼのキヨシ”が
しょぼしょぼと歩いていたので
「どーしたの? 恋でもして悩んでるの?」と冗談を言ったら
実に気の利いた言葉を返してきた。
「ここで恋をするといったら、あなた以外にいません!」

去年、私の写真を撮りたいと言って来た元住職(90代)も
「あなたはここで働いている女性の中で
一番ハツラツとして輝いている」と
今なお私にご執心だ。

ひゃははは~、まいったなあ。
モテるって、罪だわぁ。

もちろん、本気でそう思っているわけじゃない。
そこまで寂しい人生ではない。
私を愛してやまない夫もいるし
たまに酒を飲む男友達だって、いなくはないんだからね。

しかし、愛されていると思うと
それだけで介護が楽しくなる。
椎間板ヘルニアによる足腰の痛みや痺れも
“恋人たち”が待っていると思えば苦にならないのだ。

介護職員が不足している。
この先もっと、足りなくなるという。

野暮な夫から褒め言葉一つかけてもらえない40代、50代の女たちよ
いざ、介護の世界へ!!!

(ってな求人募集をしてみましたが、いかがなものでしょうかね?)







ああ、ケイコ

2016-06-20 22:15:47 | 日記
日夜ドロボーと闘う、お馴染みのケイコ。

彼女がいつものように“娘”であるテディベアを抱きしめながら
自室の椅子に座って放心していた。

そして私の顔を見るなり、力なく言った。
「先生」
(ケイコは介護職員のことをそう呼ぶ)
「先生、私、あと1年もしないうちに
頭がボケてしまうかもしれません」

一瞬、言葉に詰まる。

いやいや、とっくのとうにーーなんて言えるわけもないし
だからといって
そんなことありません。大丈夫ですよーーと言うのもなぁ。

結局
気晴らしに花を見に行きましょうと外に連れ出し
話題を変えるしかない私であったが…

クイックルワイパーで彼女にしか見えない泥棒を退治したり
テディベアにご飯を食べさせたり
自分が床に漏らしたウンコを誰かのせいにして大騒ぎしたり
何十年も前に亡くなった息子を探し回ったり
このところ安寧の日々がまったくないケイコ。

でも彼女はときどき気づくのだろう。
自分が自分でなくなっていることに。



怖い

2016-06-19 00:24:40 | 日記
ミネさん、86歳。

眠っていた“性”に彼女が目覚めてしまったのは
一緒に入居したご主人を2年前に亡くしてからのことだったか。

元・従軍看護婦であり、獣医である厳格な夫の元に嫁いでから
我がまま一つ言うことなく
ひたすら夫のため、子どもたちのために生きてきたというミネさん。
「母は家族を支えるためだけに生きてきたような人」と
息子や娘が言うのだから
本当に、自分の快楽なんぞ求めるヒマもなく生きてきたのだろう。

ところが、ご主人を亡くしてから
彼女の口から「ボーイフレンドでもおったらなあ」という言葉が
頻繁に出てくるようになった。

意外な言葉ではあったが
「ミネさん、いろんなことから解放されて
やっと気楽に生きはじめたのねえ」と
職員は微笑ましく見ていたものだった。

しかし、このところどうやらエスカレートしているらしく
食堂で同じテーブルに座っている方々から
彼女に対するクレームが殺到。

「男がほしい」
「彼氏に噛まれて唇が腫れた」
(近くに座っている男性入居に対して)「抱いて!」

そんなことばかり言っているのだそうで
気持ち悪いから他のテーブルに座らせてほしい、というわけだ。

あ~あ、困った。
他のところに座っていただいたところで
根本的な解決には至らないのは明白である。
どこへ行っても毛嫌いされて、たらい回しされることになるに違いない。

ま、これについては近日中にカンファレンスで話し合うこととしよう。

だけど、ねぇ…

自分の輝かしい栄光の時代を繰り返し繰り返し語る認知症の方もいれば
ミネさんのように、抑圧されていた思いを吐き出す方もいる。

私が認知症になったら
この口はいったい何を喋りだすのか!?

それを思うと、怖くて怖くて仕方ない。


舛添さんを説得したケイコ

2016-06-16 02:16:56 | 日記
舛添さんが辞任するという。
あれほど「辞めない」と頑張っていた彼の背中を叩いたのは、誰か?

今日、物盗られ妄想のケイコの部屋に入った。
入るなり、彼女が言う。
「あの人が辞めることになりました」
あの人・・・ああ、舛添さんのことですか?
「そうです。舛添です。
あの人は悪い。ほんと~に悪い!」

この話になると泥棒騒ぎを忘れてくれるので
政治にあまり関心のない私も
一緒になって舛添さんを叩く。

そーですよねえ、悪いですねえ。

するとノリノリのケイコが言った。
「私が彼に、都知事を辞めるようにと説得したんです」
「彼は私をすごい顔で睨みましたが、そのあとで
涙を流しながら辞任すると言ってくれたんです」

出た~~~!!!
知性派の認知症ならではの妄想劇。

しかし真剣な彼女の言葉に、誰が水を差そう。
真顔で、私は言った。

ケイコさん、ありがとうございます。
これで都政もよくなりますね。