ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ケイコ日記ーその12

2017-09-29 02:40:28 | 日記
久々のケイコ日記だ。

この数ヶ月、彼女の認知症の周辺症状がナリを潜めていた
なんてはずはなく
むしろひどくなっている。

アリセプトという画期的な薬も
ケイコにはお手上げ!だっというわけか…。

最近のケイコは食欲に際限がない。

「きのうから何も食べていないんです」

部屋を訪ねるたびに
彼女はぐったりと椅子にのけぞり
空腹感を訴える。

いやいや、さっき朝ご飯を残さずに召し上がっていましたよ。

言っても仕方ないから言わないが
ケイコは三食しっかり食べている。
「ここのお食事は本当においしい!」と感激しながら
大盛りご飯まで平らげている。

それでも満たされることのない、彼女の食欲。

この間入浴援助に入ったヘルパーによれば
浴槽にお湯を張るまでの20分間に
ケイコはバナナを4本食べたという。

バナナ4本!?

若者だって胸につかえる。
ケイコよ、アナタの食欲が心底怖ろしい。

他人事のように書いている私だが
きのう
利用者のオバアチャンが
私があとで食べようと大切に取っておいた稲荷寿司を
食べてしまった、という夢を見た。

なんとも浅ましい夢である。

決して大食ではないが
食べることが大大大好きな私。
いつかケイコのようになるのではないかと
今から心配でならない。








いじわる婆さん

2017-09-27 22:08:30 | 日記
イジワルをしてばかりいると、いつか必ずしっぺ返しにあう。

古今東西、童話にはそんな話が多い。
童話ばかりではない。
時代劇でも意地の悪いヤツは最後に必ず成敗されるし
ドラマでも、かわいくても性格の悪い女子は
いつか必ずヒロインの座から引き摺り下ろされる。

現実ではイジワルな人間が善人を踏みつけて
高笑いしていることもあるかもしれないが
そんな奴らは絶対、いい死に方をしない。
そう、信じたい。

で、今日の主役は性悪女・キワである。
何度かここに紹介したが
キワは認知症でありながら他の認知症利用者を嘲笑い
障害を持つ利用者をあからさまにバカにする
ウチで一番の性悪女である。

そのキワが、おととい、お腹の痛みを訴えてきた。
それも自分で言ってくるのではなく
いつも
「アナタは認知症でしょ? 頭がバカなんでしょ?」と
バカにしているユキエの部屋を訪ね
具合が悪い、助けて!と訴えたのである。

やさしくて面倒見のいいユキエは
それは大変!と事務所に緊急コールをしてきたのだが
まったく、アナタはお人よしすぎるわ。
いつもいつもイジワルされているんだから
突き放してやればいいのに…。

とはいえ、こっちもその訴えを無視するわけず
部屋を訪ねた。
お腹が痛いとは言っているが、フツーに喋っている。
バイタルも正常。たいしたことはないだろう。
それでも一応、家族に連絡だけはしておこうと電話した。

すると息子はケンモホロロ。
「しょっちゅうそういうことを言うんですよ。
そのうち治まりますから放っておいてください」。

ですよね--。
もちろんそうは言わないが
性悪女として名高いキワのことを
事務所の人間も誰一人心配しない。

それ以降、息子は居留守を使い
母親からの電話にも出なくなった。

ウチのかかりつけ医と契約していないから
私たちも手のつけようがない。
いや、実のところ手をつける気すらない。
実際
かかりつけ医と契約していない
家族が放っておいてくれと言っている
この状況で
ウチは手の出しようがないのである。

しかし翌朝・・・
心配した管理者が近所の内科医に連れて行ってみたら
キワは、なんと盲腸であった。

ありゃりゃりゃ、本当だったんだ!?

だからね
日ごろの行いがよくないと
イザというときアナタは見捨てられてしまうのよ。

イジワル婆さんの末路、あな恐ろしや。
いい教訓になりました。




ひとり遊び

2017-09-25 22:41:21 | 日記
東北旅行について、その後編をちょっとだけ書いておこう。

恐山はやはり異界だった。
折りしも、曇天。
重く垂れた雨雲の下に、死者を悼むために積まれた小石が
無数の山をつくっている。
その小石の山の傍らに飾られた風車が
わずかな風にさえもシャー、シャーと勢いよく回り
時間が止まっているような景色の中で
それだけが動いているように見えて
なんだか不思議な感覚にとらわれた。

とはいっても、もっとおどろおどろした世界を予想していた私は
翌朝、晴天のもとで見たその世界が
意外におどろおどろしくなく
むしろ綺麗な湖(カルデラ湖)のほとりであったことに気づく。

恐山信仰をたっぷり味わいたいなら
曇天の日に行くべきだろう。

さて、その宿坊で一泊し、旅の3日目は友だちと別れての一人行動。
諸々の事情から仙台での途中下車をあきらめ
ローカル線の旅をちょいとばかり楽しんだ後
八戸の市場で海鮮丼と名物・せんべい汁をいただく。

帰りの新幹線ではビールを飲みながら本を読み
いつのまにか夢の中。
気づいたら夜9時、車窓には東京の夜景が映っていたのだった。

ほとんど友だちと2人の旅で
それはそれで大いに盛り上がり楽しくもあったが
こうして帰りの1日だけ一人で行動してみると
若き日に経験した一人旅の記憶が呼び覚まされ
心が妙に浮き立った。

一人の時間を満喫する。
自分の気の向くままに歩き、自分の食べたいものを食べ
好きなときに立ち止まる・・・
いいな、いいな、やっぱり楽しいなあ。

閑話休題。
今日は休みである。
そして、今日から4日間おっさんが実家に帰っている。
もはやおっさんに気を遣う生活はしていないが
とりあえず夕食の準備はしなくてもいい。
というわけで
今日は夕方から一人で映画「ダンケルク」を観に行き
そのあと定食屋さんで夕食を食べ
シメにバーで1時間だけ、一人酒を楽しんできた。

ちょっと贅沢な大人の一人遊び。
ああ、人生は楽しいねえ。





起きる理由

2017-09-16 00:25:47 | 日記
お気に入りの海外ドラマを見ていた。

舞台はカナダの田舎町、時代は…ずっとずっと昔。
事故で夫を亡くした女性が鬱々とした時を経て
食堂を開くと言い出した。

主人公であり、彼女の友人である女性が尋ねる。
「なぜ?」

彼女はこう答えた。

「生きていくために、朝、起きる理由がいるの」

何気ない台詞にズドンと心を打ちぬかれた。
そうだよね、生きているからには、起きる理由が必要だよね。

介護サービスを受けているウチの高齢者のことを考える。

生活にはリズムやメリハリが必要!
マニュアルに則ったそんな言葉に急かされて
彼らは毎日同じ時間に起きて着替えをさせられ、食堂に誘われる。

健康上、生活のリズムやメリハリは大切だ。
でも本当のところ
起きてご飯を食べたところで、その次の予定は一切ない。
どうしてもその時間に起きなくてはいけない理由なんか
彼らにはないのである。

健康上、規則正しい食事や生活習慣は大切だろう。
衛生上、洗面やオムツ交換、入浴は大切だろう。

でも
たとえ栄養が不足していたり昼夜逆転していたり
入浴やオムツ交換を拒否したりしても
本人がそれを望んでいるんだったらいいじゃん!
それより
眠りから起きる理由、生きる理由
彼らはそれを求めているんだよ。

介護職にあるまじき言葉だろうけれど
私、そう思うってしまうのだ。

介護施設やウチのような高齢者住宅で暮らしている高齢者に
次の日(何時でもいいから)に起きる理由を提供できたらなあ・・・






丁稚奉公

2017-09-14 21:55:11 | 日記
私は最近テレ東ファン。
「Youはどうして日本へ!?」とか「ニッポンに行きたい人応援団」とか
「日本総本家」とか、そのあたりは特にお気に入りだ。

さて、さっき「ニッポンに行きたい人応援団」を見ていたら
日本の竹細工を学びたいという熱心な外人女性を紹介していた。

この女性にも感心したが、あらためて(いつものことだが)
日本の伝統工芸の素晴らしさに感動する。

竹を油抜きして、薄~く切って、さまざまに編んで
籠やランプシェードやオブジェを作り上げる。
グレイト!!!

感極まった私は、一緒に見ていたおっさんに向かって叫んだ。

アナタ、これよ、これ。
アナタはこの道に進むべきよ!
アナタは器用だし、ものづくりが大好きだし
今からでも遅くない、竹細工職人を目指すべきよ!
私は10年でも20年でもここで待っているから
さあ、修行に行ってらっしゃ~い。

最初は妻の言っていることが理解できずに
目を点にしていたおっさんだったが
やがて、妻の本音を掌握する。

お前、丁稚奉公と称してオレを捨て去る気だな!?

ば、ばれたか…