23度に設定された事務所の冷房。
援助に駆けずり回って戻ってきたときは心地いいが
落ち着いてデスクワークをしていると
ブルっとするくらい身体が冷えてくる。
設定温度を少し上げたいが
猛暑のこの季節
事務所は過分に脂肪を蓄えた女たちの天下であり
そんな要求が通るはずもない。
数少ない痩せ型は、上着を羽織って耐え忍ぶしかないのである。
しかし今日、中肉中背のボスが身体の不調を訴えた。
「俺、冷房が効きすぎた部屋にいると頭痛がしてくるんだ」
いつもは健康的で疲れも不調も見せない40代のボスが
珍しく弱っている。
ヤバイ! 彼を救わなければ!
私はキンキンに冷えた事務所にいながら扇風機の直風を浴びている
二人の小太り女に言った。
「頼む。ボスがかわいそうだから少し温度を上げて!」
しかしあろうことか、二人は大反撃。
いつもは私を立ててくれるかわいい二人が
猛然と噛みついてくる。
「冗談じゃない!そんなことしたら死んじゃいます」
「ボスも先輩も、いい加減、冷房に慣れてください」
「なんならロッカールームで仕事したらどうですか?」
「そうそう。机もあるから、パソコン持っていけばいいんですよ」
お、おい!なんだ、その言い草は!?
「いやいや、こればかりは譲れないね」
「そーだ、そーだ! 私たちが熱中症で死んでもいいのかーーー!?」
思わず私は叫んだ。
「なんでこっちが我慢しなくちゃならないのか!?
それよりお前ら、少し痩せろーーー!!」
命の危険なこの猛暑。
絶えず鼻の頭に汗をかき
ふぅふぅ言って歩いている脂肪過多の40代女二人は
信頼する上司やその次に偉い私に盾ついてまでも
暑さと闘っているようである。
すみません、ボス。
この季節、彼女たちには勝てません。
私と二人でロッカールームに避難しましょう。