ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

つわものたち

2017-05-31 21:06:52 | 日記
接遇について書かれたウチの会社独自の教本に
「顧客とは誰か」という項目がある。

私たちの顧客とは誰か?
それは利用者様であり、そのご家族やご親戚であり
ご友人やお知り合いであり…。

はい、よくわかります。
場合によっては利用者本人よりその娘や息子が
神経をすり減らす怖ろしい顧客であることを
この3年半で身をもって知らされた。

しかし教本にはないが、それと同じくらい気を遣い
その対応に苦慮する相手がいる。

ベテラン登録ヘルパーだ。

ウチの場合、介護サービスの提供方法は訪問介護と同じだが
利用者が一つの建物内に住む集合住宅だから
援助の空いた時間、登録ヘルパーは事務所や休憩室にいる。
雑談していることもあるが
仕事の多いベテランの登録ヘルパーたちが
利用者の健康状態や援助方法について意見を交換し
その熱が、私たち常勤職員や管理者、ケアマネに向けられることがある。

それが怖い。

やれ、援助の仕方が間違っている。
やれ、時間をずらした方がいい。
やれ、こういうサービスを入れた方がいい。
やれ、あの往診医はいい加減だから辞めさせた方がいい。

そして
常勤職員はヒマなんでしょ? もっと働いたら?

ああ、お前たちは管理者か? ケアマネか?
うるさいよ!

しかし、そういうやかましい登録ヘルパーが
重い援助を取ってくれるからこそ成り立つウチの仕事。
黙らせたいが
「じゃ、他に行くよ!」と言われたら大変だ。

20年、30年もこの業界にいるつわものたち。
私たちからしたら、正直、一番取り扱いの難しい“顧客”である。









どうなっているのか? 妄想する脳

2017-05-23 23:00:44 | 日記
妄想する脳。
それはいったいどうなっているんだろう?

医学的な答えを求めているわけではない。
妄想が激しい認知症高齢者の言うことがあまりにも突飛すぎて
単純に、不思議でならないのである。

トヨコは部屋でよく転倒する。
駆けつけてみると、彼女はあらぬ方向を見つめて言う。
「いま出て行った男が私を突き飛ばしたんです」
「トイレに行こうとしたら、大男がいきなり私を背負い投げしたんです」

登場するのはいつも悪漢だ。

そしてケイコ日記でお馴染みのケイコ。
毎日いろいろやってくれるが
“作話から妄想に発展することがある”という認知症症状が顕著なのも
彼女の特徴だ。

最近のケイコは
トイレに行くものの、ズボンを下ろしているうちに間に合わず
床に便をしまうことが多くなった。
はじめは何とか自分で始末しようとするらしく
異変に気づいた職員が駆けつけてみると
トイレの床は大量の便とトイレットペーパーと
それを片付けようとして奔走したらしい無数の足跡で
大変なことになっている。

咄嗟に、彼女は言う。
「いま、男が来てウンチをしていったんです。
ひどいことをするでしょう?
アナタ、そんなことしちゃダメ!って言うと
私をキッと睨みつけて走って逃げていったの」

そして悪臭に吐き気を覚えながら後始末をする職員に言う。
「かわいそうに。アナタにこんなことさせるなんて。
あの男は悪い。あの男は本当に悪い。
アナタ、許しちゃダメよ」

対応には大概慣れたので「困った人たちだ」と呆れることはないが
彼女たちの妄想や巧みな作話には
すごいなあ、頭の中、どうなってるんだろうなあと
自分が介護職であることを忘れて首をひねるばかりだ。

ちなみに、トヨコとケイコには共通点がある。
どちらも英語が堪能で
能力を遺憾なく発揮できる場で働いてきた女性であるということ。
そして、お金をかなり持っておいでらしい、ということ。

前にも書いたが
認知症になった場合、過去の栄光とプライドは介護の妨げになる。

介護職としてはまだまだ青い私の持論ではあるけれど。




誰もサ高住の行く末を予測できなかったのか?

2017-05-22 01:17:31 | 日記
おとといの朝日新聞朝刊で
サ高住(サービス付き高齢者住宅)の記事が1面で取り上げられていた。

その中に

サ高住は11年の創設時
自立した高齢者の「早めの住み替え先」として普及が期待された。
制度上は民間の賃貸マンションに近い扱いだが
運営面の報告書では
入居者の88%が要介護認定(要支援を含む)を受け
要介護3以上の重度者も30%と「介護施設化」が進んでいるのが実態だ。
民間機関の調査では、入所者の4割が認知症というデータもある。

との記載がある。

片腹痛し!だ。

そんなことも予測しないで
国はサ高住の創設を推進したのかよ!

たとえ自立だったとしても
高齢者が暮らしてきた環境とは異なる地域で、部屋で
一人ぼっちで残りの人生を生きろといわれたら
誰だって心身機能は低下するし
認知症症状だってでてくるわ。

ウチだって3年半前の開設当時は、元気な人が多かった。
脳梗塞による麻痺が2、3人
明らかな認知症が2人…
今思えば、介護もラクだったなあ。

それがどーよ?
自立組もどんどん介護が必要な高齢者へと成長し
他の利用者と楽しく食堂で語らっていたソノコは
介護者を引っ掻くツネる噛み付く凶暴なバアサンになった。
気立てのいいモテ男のケンゴは
四六時中、尿臭を放ちながら車椅子で館内を徘徊するようになった。
一族の学歴を鼻にかける俳句好きのクミは
1日中発狂したようにコールボタンを押し捲るようになった。

どのくらいの間隔でデータを取っているか知らないが
老いは、時間刻みでやってくる。
3年も4年も経てば
自立組だって要介護になって当然なのである。

現実を何も知らない人たちが超高齢化社会を云々するなんて
チャンチャラ笑ってしまう。





ケイコ日記ーその11

2017-05-17 23:57:05 | 日記
ケイコが鏡の中の自分を“女の子”と呼ぶようになったのが
かれこれ半年前。

物を盗んでいくという“女の子”に対して
はじめは目を吊り上げて説教したり
「出て行け~!」とクイックルワイパーを振りかざしたりしていたが
薬の調整が功を奏したのか
最近はご飯をあげたり(鏡に映った自分の口元にグイグイとおかずを押し付ける)
「そんな格好をしてたら風邪を引くわ」と自分のセーターを差し出したり
(そうするケイコは下着姿である)と
穏やかに付き合っている。

どうやら退治する対象から世話する対象へと
“女の子”の立ち位置を変えたことによって
うま~く共存しているらしい。

しかし、それでも“女の子”がケイコの生活に深く関わっているのに変わりない。
鏡の中の“女の子”に、ケイコは憑りつかれているのだ。

今日、半年振りにレビー小体型認知症の権威と言われる医師を訪ねた。

鏡の中の“女の子”について医師に相談すると
彼はあっさりと、いともあっさりと言った。
「レビーの場合、鏡は撤去するのが原則です」

なんだよ~、そんな大切なこと、もっと早く言ってほしかったわ。

病院から帰り、私は大急ぎでケイコの部屋に向かう。
手先の器用な同僚に頼んで作ってもらった紙製のステンドグラスを
洗面台の鏡に貼るために。

これで、妄想から生まれた“女の子”は覆い隠された。
ケイコはどんな反応を示すのだろうか。






夜な夜な、四股(しこ)を踏む。

2017-05-10 23:53:31 | 日記
介護福祉士の試験に合格したら
ご褒美に、スポーツクラブに入会しようと決めていた。

40代のときの楽しみであった水泳も、またはじめたい。
そして何より、お世話している高齢者を見ていると
今のうちに少しでも筋力と骨密度を増やしておくことが大切!
そう考えたからだ。

しかし、よくよく、よくよく考えて、やめた。

筋力と骨密度は確かに大切だ。
食欲だけは旺盛なのに、寝たきりの生活を送っているオジイチャン。
文句を言う口だけは元気なのに、座っていながら骨折するオバアチャン。
今、手を打たなければ、私もやがてそうなる。
60手前というこのギリギリの年齢で身体を鍛えておこうというのは
実に、正しい。

だけどね
スポーツクラブに通う費用はあまりに高い。
近くに公営のプールでもあるなら即座に通うが
民間のスポーツクラブは月会費が1万円くらい掛かるわけで…。

老後の備えのために、毎月1万円かける。
それはどんなものか。

だったらと、私は決意した。
その1万円分、今しかできないことを楽しもう。
身体が動くうちにいっぱい旅行をして
認知症になる前に映画や読書を楽しんで
互いに元気なうちに、友だちとたくさん呑んで喰って語り合おう。

たった一度きりの人生だ
老い支度に金をつぎ込んでどうする!?
寝たきりになってから、あれもしたかった、あそこにも行きたかったと
未練たらたら、なんてのはまっぴらごめんである。

ただし、健康寿命は短いより長い方がいい。

どうすりゃいい?
そうだ、1万円かけなくても家で筋トレすりゃあいいじゃないか。

かくして先週から、夜な夜な四股(しこ)を踏み始めた私。
四股は体幹を鍛え、足腰の筋力アップに効果的であるという。
ネットで正しい四股の踏み方を学習し
よたつきながらドス~ン、ドス~ン!
なかなか難しいのだが
たった1週間で疲労時の腰の痛みがなくなったことに驚く。

四股だけじゃないぞ。
腹筋、背筋運動にスクワットもやってるぞ。

なんでも、老化防止の筋トレは若返りホルモンを増加させるらしい。
いいね、いいね。ますます頑張れる。

というわけで、今宵もドス~ン、ドス~ン!!!
さあ、そこのアナタもご一緒に。