ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

別れのお告げ

2017-06-29 23:55:58 | 日記
きのうの夜勤入り早々、タツヤさんが亡くなった。

96歳という高齢だったが
介護サービスを使わず
カメラとプラモデルを趣味とする元気なオジイチャンだった。

夕食時になってもなかなか食堂に来ないので
心配になって部屋を訪ねてみると
トイレで転倒したまま、すでに絶命。

前日まで元気だったのだが
もともと心臓が弱かったので、そのせいかもしれない。

実は先週
ともにウチで暮らしているタツヤさんの妻・サワコさんが
大腿骨を骨折して入院した。

認知症のサワコさんは飛び切り陽気で
しかしご主人であるタツヤさんに対しては
キーキーとヒステリックに怒ることが多かった。

しょっちゅうケンカしていた二人だが
それはそれで、変化のない高齢者住宅に笑いをもたらしてくれる
名物夫婦だったと思う。

今朝、事務所を訪ねてきた二人の娘さんから話を聞いた。

母が入院した翌日、残された父のことも心配でに会いに来たんです。
そしたら父、おかしなことを言ったんですよ。
「朝、サワコが迎えに来てくれたんだ」って。

(おいおい、アンタの妻・サワコはまだ天国に行っていないぞ)

そのひと言を飲み込んで、娘さんの話を聞く。

おかしなもんですね。
入院したばかりだった母が看護師さんに言ったんですよ。
「うちの宿六(やどろく・夫のこと)、もう死んじゃったのよぉ」って。
父がまだ生きていたにもかかわらず、ね。

私にはわかりえないサヨナラの予感を
長年連れ添った二人は、彼らなりの方法で感じ取っていたのかもしれない。

大丈夫か? 私

2017-06-27 22:54:24 | 日記
何者かに、頭を乗っ取られている。

いや、単純におかしな夢を見ただけのことなのだが…

一つ目は
人ひとりがどうにか通れるほどの細い山道
しかも片側は岩がせり出し
もう片側は断崖絶壁で
200メートルほど下で海が大きな波しぶきを上げている。

なぜか、そこを素足で逆走する私。
あ、危ない、落ちるーーーーー!!!

落ちた。

と、真っ逆さまに海に落ちてゆこうとする私の手を
誰かがつかんだ。
みると、ファイナルファンタジーの光の勇者たちだ。
彼らが数珠繋ぎに手をつないで人間ロープとなり
私の手をガシッとつかまえてくれたのである。

ゲームはしない。
ファイナルファンタジーもコマーシャルで知っている程度だ。

なのになんでこんな夢、見た?

もう一つはさっきうたた寝しているときに見た夢。

ラインと呼ばれる訪問介護の予定表がある。
ヘルパーごとに
何時から何時までは○○様の身体介護、といった具合に
その日出勤の全員の予定を記したものだ。

出勤した私は、その表で仕事の確認をした。
すると、そこになぜか
「アンパンマン様、身体介護」と書かれているではないか。

子育て中には見ていたが
今の私には無縁のアンパンマン。
最近テレビでたまたま見たという記憶もない。

なのになんでこんな夢、見た?

何者かに頭を乗っ取られたとしか思えない。

卒業の言葉

2017-06-19 22:20:50 | 日記
「あなたと知り合えてよかった」
「あなたといると元気になる」
「あなた、よく頑張ったよね」

これまでの人生で、言われて嬉しかった言葉はいっぱいある。
誰だってそうだろう。
忘れてしまった言葉も多いかもしれないけれど
ありがとーーー!と思わずその言葉の主に抱きつきたくなるような
嬉しい言葉…
きっといくつもいくつももらっているはずだ。

今日、私は歯科医の診察室で
ばんざ~い!と叫びたくなるような言葉をもらった。

「はい。これで治療は終わりです」

3ヶ月間サボらずに続けた通院の末に
医師からもらった卒業証書のようなこの言葉。

ばんざ~い、ばんざ~い! 先生、本当にありがと~!!!

マスクをしているから年齢も顔立ちも定かでないその医師に
抱きついても不思議でないほど、嬉しかった。

ダメな生徒を見放すことなく“卒業”まで導いてくれた先生に感謝。
「治療は終わりです」
その輝かしい言葉を胸に
明日からちゃんと歯を磨いて生きていきます。


HELP!?

2017-06-17 22:43:04 | 日記
おっさんはやっぱり面白い。

ついさっきのこと。
仕事から帰って夕食を済ませたおっさんは
疲れていたのだろう
ソファに転がるなり寝息を立て始めた。

2、30分経った頃だったか
突然、大きな声でしかもはっきりと叫んだ。

「ヘルプはもういない、ヘルプはもういない。
ヘルプミー! ヘルプミー!!!」

寝言である。

いったいどんな夢を見ていたのか。
おっさんの頭の中で何が起きていたのか。

俺のことは絶対ブログに書くなと言われているけれど
こんな面白いこと、書かないわけにはいかない。



暴れん坊“認知”将軍

2017-06-16 23:58:44 | 日記
凶暴な認知症老婆・ソノ子の部屋で
夕食の介助をしていたときのことである。

食べさせることに躍起になってしまうと機嫌が悪くなるので
テレビを見ながら、会話をしながら
何気ないそぶりでご飯を口元に運ぶ。

今回もそうしようと、テレビをつけた。

と、そのとき流れていたのは
精神化病棟が今、受け入れ先のない認知症高齢者で溢れ返っている
というニュース。
看護師たちが、私たち介護職員と同じように
暴れる認知症高齢者と対峙している光景が映し出されていた。

高齢受刑者の増加により
刑務所が介護施設化しているという話は前に聞いたことがある。
家庭内の老老介護ももちろん大変だが
この超高齢社会、看護師も刑務官も大変だわねえ。

そんな思いでふぅっと溜息をつき、はっと我に返る。
私がそのとき食介をしていたのは
まさしく、精神科病棟に入ってもおかしくないほど凶暴で手に負えない
認知症高齢者・ソノ子なのである。

目はテレビ画面を追っていても
その内容は理解できないことの多いソノ子。
彼女はその認知症特集の番組を見て悪態をつく。
「バッカじゃないの? あはは、バカば~っかり!」

あのねえ、ソノ子さん、これ、アナタのことだよ。

私も同僚たちも
まるで義兄弟の印でもあるかのように
腕にアナタが噛んだ、つねった、ひっかいた痕があるのよ。

息子の稼ぎがいいからウチのような高齢者住宅で
お客様扱いされているけれど
じゃなかったら、アナタだってこのテレビに映っている人たちのように
精神科病棟に入れられていると思うよ。

今日、ソノ子の凶暴性をなんとかしようと
管理者がアロマテラピーを取り入れた。

体操、ティタイム、お散歩、音楽、そして医療と
これまで様々な作戦を練ってきたが
どれもこれも撃沈。
ではアロマならどうだ!?と、わずかな望みを託したわけだ。

アロマテラピストがソノ子のために調合してくれた香りは
確かにいい。
介護する私たちの苛立ちを鎮めるのに効果的かもしれない。

しかし、あれ、おかしいぞ。
アロマは私たち職員のために用意されたのではなく…
当のソノ子は今夜も大暴れ!と
ついさっき、夜勤をしている同僚からメールが届いたのであった。