ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

吟味

2020-10-25 02:26:00 | 日記
潔さが信条。

服も本も、買うときに迷わない。
どちらも“ここよ、ここ!”と訴えてくる声が聴こえてくるので
(いや、聴こえてくるような気がするので)
迷うことなく、それに決める。

捨てるときも然り。
う〜ん、どうしようか。
この服はまだ着られるし、この本はまたあとで読み返すかもしれないし…
と、ダラダラ思い悩むことがない。

いずれも高いものではないので
無慈悲なほどあっさり処分できてしまうのだ。

しかし、電化製品の購入だけは吟味に時間が要る。
ネットで買うようになってから、尚更だ。

webサイトで機能を調べ
レビューを読みまくり
それでもなかなかポチッとする気が起きない。
購入の決断までに、かなりの時間を要するのである。

この間は
去年から検討していたフットフィットをやっと買った。
(歩行のための筋力を鍛えるヤツ)
吟味すること1年以上。
10万円の給付金をいかに有効活用しようか。
それも併せて考えたから、余計に時間がかかったのだ。

そして、今度は電気圧力鍋。
これも圧力鍋が壊れた2年前からずっと購入を検討している。

電気圧力鍋は多数のメーカーが出しているのだが
レビューを読むほどに、どれがいいか迷いが生じる。

あー、どうすりゃいいんだ!?

それにしても…

私はまるでセーター1枚買うかのように
おっさんという伴侶を選んでしまった。
人生最大の選択だったのに、なぜ、吟味しなかったのか?

いや、吟味などしていたら結婚はできない。
結婚はレビューも保証期間もない人生最大の博打。
だから、面白いんだろう。


62歳、我がままな人生。

2020-10-20 02:11:00 | 日記
やってしまった。

警察官であったと言うわからんちんのジイサンを
思いっきりどやしつけてしまった。

だって、認知症のオバアチャンの行動を
いちいち大声で叱り飛ばすんだもの。

そりゃ、とんでもないことをする認知症の方々は
アナタにとって目障りかもしれない。
でもここはサービス付き高齢者住宅。
自立の方も、介護度の高い方も
共存していくしかないでしょ?

大概のことには目を瞑っていたけれど
たまにはドカンと言ってやらなきゃいかん。

「あの人はお病気なの。だから大声で叱るのはやめてね」
「それに、あの人がウロウロしていても
あなたに迷惑がかかるわけじゃないでしょう?」

はじめは穏やかに注意していたが
あまりにも難癖をつけてくるので
私はとうとうブチ切れた。

「おい、こっちはダテに介護職やってんじゃねーんだよ!!」
「今後この人に文句を言ったら、ただじゃおかねーからな!!!」

あらまぁ、私としたことが…笑

かつて、私は物言えぬ少女であった。
ケーキ屋さんのショーケースの前で何が食べたいかと聞かれても
もじもじしながらやっと「焼き芋」と答えたらしい。

それが色々、色々と経験を積んで62歳になった今
口をつぐむことをすっかり忘れてしまった。
我慢は体に悪い!とさえ、思うようになってしまった。

もちろんこれでも社会性は身につけている大人だから
やたらめったら怒りをぶつけるわけではない。
しかし
どうしてもおかしいことはハッキリ言う。
NO!と言うべきところではハッキリNO!と言う。
欲しいものは欲しいとハッキリ言う。
その点では、絶対我慢しない。

そんな性分を持つ大人に、私は進化してしまったのだ。

私にドヤされたジイサンは、翌日シュ〜ンとしていた。
そのジイサンも、もしかしたら友人たちも
私のハッキリした物言いに傷ついているかもしれない。

ごめんね。
でも、私はこんな自分が結構気に入っている。

残りの人生
人に好かれるより
自分が好きな自分でありたいと思うのです。





笑顔の練習

2020-10-10 23:01:00 | 日記
たびたび吉田くん。

彼は普段、岩のようにむっつりしている。
笑うと可愛いのに
血迷って抱きつきたくなるほどチャーミングな笑顔なのに
「おかしくもないのに笑えません」
「僕は作り笑いなんかできません」
だなんて可愛くないことを言う。

おまえ、それでも介護士か!?

笑顔は人を幸せにするし
何より自分自身に福をもたらすんだよ!

12年前のおっさんを思い出す。

破産して、逃げるように引っ越した先で過ごした
ある寒い夜。

おっさんが洗面所にいた。
歯を磨いているのかと思ったら、どうやら違う。
鏡に向かっていろんな顔をしているのだ。

え、おっさん何してんの?

ふと、鏡の中のおっさんと目が合った。
照れ臭そうな顔をして彼は言った。
「今、笑顔の練習をしてるんだ」と。

胃潰瘍でげっそりした顔を精一杯ほころばせてみても
それは悲壮感しか感じさせない。
知らず知らずのうちに涙が溢れてきたことを
今、思い出す。

そんなおっさんが、今はよぉく笑う。
さっきも勤め先であるデイサービスで
認知症のおじいちゃんと二人で漫才をしている動画を見せてくれた。

セリフはまともに喋れないが
ただニコニコしている可愛らしいおじいちゃんの手を引いて
おっさんは他の利用者たちに漫才を披露して歩いている。

ゲラゲラと笑う利用者たち。
そしてその声をかき消すほどゲラゲラと大笑いしているおっさん。
本当に楽しそうだ。
正真正銘の笑顔だ。

吉田くん、
言っちゃあなんだが
若いキミよりウチのおっさんの方がず〜っと豊かだぜ。

吉田くんのワクワク

2020-10-08 01:24:00 | 日記
同僚である吉田くんの話である。

たびたびこのブログにも登場している
ドケチな吉田くん(35歳・彼女いない歴35年・もちろん独身)
の話である。

彼の妹が第一子を出産し
お母さんが1ヶ月ほど
娘と初孫の世話をするために家を空けた。

洗濯もご飯の支度もすべてお母さん任せだったわけだから
お母さん不在のこの1ヶ月
吉田くんとお父さんはどんなに不自由であったろう。

そしていよいよお母さんが帰ってくるというその日
私は彼に声をかけた。

やっとお母さん帰ってくるのね?

すると彼は大きな鼻の穴をより一層広げて言った。
「そーなんです。だからボク、ワクワクしてるんです」

は? ワクワク? 

「だって、お母さんが帰ってきたら二人でお酒が飲めるんです!」
「だからボク、今日は残業しないで急いで帰りますから!」

聞けば、お父さんは酒が弱いと言う。
だから吉田くんにとってお母さんが最高の話し相手であり
最高の酒の相手なんだそうだ。

あ…そう。よかったね。

一応はそう応えたが、気持ち悪さは否めない。
久しぶりにお母さんが帰ってくるからワクワクしてるって
それは人に言っちゃいかんだろう!?
お母さんより年上の私が聞いたってゾクっとするんだから
万が一若い女性が聞いたら絶対引くわぁ。

しかし、こうも思う。
吉田くんがもし女の子だったら私は言っただろう。
「いいわね、お母さんと仲良しで」と。

女の子だったら目を細めて受け止める“母愛”を
男の子だったら気持ちわりっ!と吐き捨てる。
それはやっぱり不公平だよねえ。

私自身一人息子がいて、年に1、2度は二人で外飲みを楽しむ。
彼にも可愛い嫁がいるけれど
こんな風にいつまでもいい関係でいられたらと、切に願う。

でも、周囲がそれを好意的に受け止めず
“気持ちわりっ!”の一言で嘲笑うとしたら
どんなに悲しいことだろう。

母親としてはちょっと複雑。

ま、とにもかくにも
お母さん以外にワクワクする女性が吉田くんの前に現れることを
心から願う次第である。