ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

アナタにはかないません。

2015-03-01 23:54:02 | 日記
パーキンソン病で介護度5のAさんには
まだ60代前半のスレンダーでキレイな奥様がいる。
チャキチャキとしていて、いつも陽気。
高齢者住宅の廊下を
まるで築地市場かなんぞを闊歩するかのように
「おはよっ!」「元気?」と利用者や職員にいちいち声かけしながら歩く。

もはや喋ることも困難なAさんは
他の利用者とコミュニケーションをとることも難しいが
毎日彼の世話をしに来る奥様は我がコミュニティの人気者だ。

さて、これまでは電車やバスを乗り継いで片道1時間の“通勤”をしていた彼女が
すごい決断をした。
なんと、家を売り払ってご主人の住まう我が高齢者住宅の前のマンションに
引っ越してきたのだ。

決して安くないウチの賃料やサービス料。
それを払っているのだからあとは任せたぜ!と
入居者の家族の中には、ほとんど顔を見せない方もいる。
ところがこの奥様は
「皆さんに迷惑ばかり掛けられない。
できるだけのことは私がします!」と
これまでのように日参するばかりか
ついに目の前のマンションに住んで
毎日朝8時半から“通勤”することに決めたのだという。

ベッドからの起き上がりも歩くこともできないが
歯磨きにはたっぷり時間をかけたいというAさん。
テレビを見たり新聞、雑誌を読む時間を大切にしているAさん。
要するに、介護度5でありながらも
今までのような生活をしたいと考えてウチに入居した彼のお世話は
実はウチでのサービスの枠を超えている。
はっきり言って大変だ。
だから奥様が毎日来てくれれば、正直助かる。
本当にありがたい。

職員や彼を世話する登録ヘルパーさんと話す。

あの奥様には、本当に頭が下がるよね。
すごいよね。

そして最後は
「でも、自分にはできない…」
誰もがその言葉で締めくくる。

私だってそうだ。
もしウチのオッサンがAさんと同じような状況になったら
家を売り払って夫のそばで暮らし
毎日その世話をするために通勤できるだろうか。

いいや、無理だ。無理だよ~。
人でなしの私はおっさんを施設に預けて逃げてしまうに違いない。

そう思えばこそ尚更
この奥様の英断に、頭(こうべ)を垂れるしかない。

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