その後もコント婆・ミチコの襲撃は続く。
食事をしているときは他の利用者と楽しげに話しているのに
箸を置いた途端、股間のヒリヒリを思い出すらしい。
事務所への訪問回数はもはや1日に10回、20回どころではない。
とにかく部屋に帰るとすぐ
ひどいときは事務所のドアを閉めてすぐ舞い戻ってきて、トントン。
これでは仕事にならない。
かといって無碍(むげ)にもできない。
職員にとっては苦行の日々である。
婦人科に行きたいと繰り返すミチコに
事業所きっての策士ナナミが一計を案じた。
自分が医師のフリをしてミチコの電話相談に応じよう!というわけだ。
ナナミ「はい、こちら婦人科ですがどうかされましたか?」
ミチコ「実は子宮の入り口がヒリヒリと痛むんです」
ナナミ「何かお薬を塗られましたか?」
ミチコ「はい、メンソレータムを」
ナナミ「それはいけません。すぐにやめてください」
ミチコ「でも痛いんです」
ナナミ「出血はありますか?」
ミチコ「いえ」
ナナミ「ならば急を要する病気ではありません。様子を見てください」
ナナミは事務所の電話で話しているのだが、ミチコは全然気づいていない。
「わかりました」と納得して電話を切ったのだった。
しかし、そこは短期記憶欠落の恐ろしさ。
ミチコはまたしてもメンソレータムを求めて事務所にやってくるようになり
ならば次の作戦!と
いよいよ彼女からメンソレータムの名残り(空き瓶や空箱)を
全て取り上げてみることにした。
どうなったか。
ありがたいことに、ミチコはメンソレータムという言葉を忘れた。
しかし敵もさるもの。
脳内に散らばった小さな記憶のかけらを手繰り寄せ
彼女はファミリーマートに走る。
そして買ってきたのは
なんとメンソレータムのリップクリームと液体絆創膏であった。
まさか、リップをグリグリと陰部に塗ろうというのか!?
液体絆創膏といえば手が赤切れするナナミも冬場に愛用しているが
塗るたびにヒーッ!と悲鳴をあげている。
まさか、あれを陰部に塗りつけようというのか!?
気づいた職員がすぐさま取り上げたから大事には至らなかったが…。
ミチコの陰部には本当に悪い病気があるのか。
それとも
ミチコは陰部ヒリヒリ中毒になってしまったのか。
最終手段を取らねばなるまい。
明後日、私はミチコがなんと言おうが婦人科に連れて行く。
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