ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

身ごもった老婆

2015-08-25 23:32:44 | 日記
私を“御大”または“オーナー”と呼ぶ90代のオバアチャマ。
これまでも頻繁に登場してきたし
今後もまだ登場しそうだから
“マリコさん”(仮)と呼ばせていただこう。

そのマリコさんの大スクープである。
なんと、彼女が身ごもった!!!
もちろんそんなわけがないのが
本人自ら言うのだ。
「私のお腹に、赤ちゃんがいるようです」と。

赤ちゃんはいませんよ、と言っても
「そんなはずありません。オッパイも膨らんできました」
誰の赤ちゃんなの?
「佐藤先生の子です」
佐藤先生って誰?
「・・・それは言えません」

居室を訪ねるたびに繰り広げられるこんな会話。
職員はみんな慣れたが
気になるのは“佐藤先生”の存在である。
マリコさんの名字は佐藤なんかではないのだから。

先日、私が排泄介助にあたったとき
マリコさんはまた赤ちゃんの話をはじめた。

「私のお腹に赤ちゃんはいませんか?」
いませんよ~。
「・・・赤ちゃんができるようなことを
私、ほとんど主人としかしたことがありません」

(えっ、ほとんどって、今言った!?)

どういうこと?と穏やかに尋ねてみると
少しためらいがちにマリコさんは言った。
「私にもわかりません」

恋愛結婚すらめったになかった時代
若かったマリコさんにいったい何があったのだろうか。

家族には言えない話である。

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