ちかさんの元気日記

辛いことを乗り越えて元気に生きている私“ちかさん”の
涙と怒りと笑いの介護記録。

ず~っと曇天。たまに晴れ。

2018-08-25 01:07:03 | 日記
あと2ヶ月で100歳となるタツから
夜間、コールがあった。

「大変なことが起こりました。来てください」

タツからの夜間のコールはいつものことだ。

「真っ暗です。目が見えなくなりました」(夜中ですよ~)
「男の子がさらわれました。助けないと」(夢ですよ~)
「泥棒です。入れ歯が盗まれました」
(そんなもん誰もほしくありませ~ん)

大概そんな内容であり、緊急性は微塵もない。
4年前にウチに入居したときから
記憶障害や見当識障害、妄想といった認知症症状はあったので
彼女が訴える“大変なこと”は
99パーセント、それによるものなのだ。

しかし歳が歳だから、とりあえず様子を見に行く。

おとといの夜もそうだった。

はあい、タツさん、何が大変なのぉ?

のんびりと部屋を訪ねた私に向かって
彼女は不安と恐怖に身を震わせながら言った。

「大変なの。私、記憶喪失になってしまったの」

は? 記憶を失ったって?
タツさ~ん、それはずいぶん前からですよ。

もちろんそうは言えないので
もう病院は閉まっているから
明日にでも家族に連絡して来てもらいましょうね。
と、その場しのぎの声を掛けて退室した。

ふふ、タツ婆さん
記憶喪失とは面白いことを言うなあ。
事務所への廊下を歩きながら、一人で笑う。

だが、笑ったことをすぐに反省。
タツはふとした拍子に頭の中の回線が繋がって
自分がいろいろなことを思い出せないことに
とてつもなく大きな不安と恐怖を感じたのだろう。
時間を割いて、もっと話を聞いてあげればよかった。

なんかの拍子に一時的に正常な機能を取り戻す
認知症の方の脳。

こんなイタズラな機能回復は
かえって気の毒だ。

1年間ず~っと曇っていた空から
突然、しかも10分だけ太陽が顔を出したって
洗濯物も干せやしないのだから。





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