長篠落武者日記

長篠の落武者となった城オタクによるブログです。

穴滝 ~幻の名瀑~

2013年09月05日 | 奥三河
宇連ダムが干上がり東三河が大変な状況です。
なぜだか東三河の水がめ部分に雨が降らないようです。
田原の農業や蒲郡の工場も豊川水系だけに心配されます。

そんな心配をしつつも、ダムが干上がる滅多に見られない光景が見られるとあって、観光客も訪れていると言う。
そんな中、多利野日記管理人のおが氏から招待状が届く。

「渇水の時期だけに見ることのできる幻の滝『穴滝』を見に行きませんか。」

穴滝?

聞けば、貯水率を30%を切ったくらいから現れる滝だそうで、江戸時代の「地球の歩き方」というか「るるぶ」とも言える『三河名所図会』にも紹介されていたとか。
穴をくぐり中に入ると、そこに素晴らしい滝がある、というものだそうです。

要は、滅多にないチャンスが巡ってきた、ということです。
「こ、これはぁ!」
と、思ったのですが、最初の招待状は金曜日の平日。
当時めちゃくちゃ仕事が詰っていたので休みが取れず。
無念に思っていたら、新たな日程を企画してくださったので、参加即答。
1歳半の息子まで引き連れての一家で参加となりました。

待ち合わせ場所でしばらく待っていると、山奥へどんどん車が吸い込まれていく。
祭りでもあるのかと思いきや、
「渇水を見に行く人達ですよ。既に100台は通過している。」とのこと。
普段はほとんど訪れる人もいない場所のようですが、渇水が大きな話題なので皆見に行っているようです。

さて、私らは渇水のダムを見るだけでなく滝を体験しようというので、既に水着やラッシュガードを来て山道に入る。細い道をうねうねうねうねと走り、設楽町と旧鳳来町の境目あたりにやってくる。
そこに車を止め、雑木林の中をわしわし進む。


林を抜けると眼前には渓谷美が広がります。


そして何より驚くのがこの光景!!


垂直に切立つ岩の壁。
「え?人工建造物?」
と、思わず見まごう光景がそこに。

※砂防堰堤?と、思ってしまいます。

この岩、『屏風岩』というそうです。

この屏風岩は、石の組成には詳しくない私が見ても一目瞭然。明らかに周囲の岩とは違う。
屏風岩が黒っぽいのですが、周りは白っぽくざらついた感じ。屏風岩はつるりとしています。
どうやら大地の亀裂からマグマが噴出し固まったものらしい、とはおが氏。

この壁のような岩の奥に今回訪ねる穴滝はあります。

いよいよダムの底へ降りていく。
砂や枯葉が積もった場所は大変歩きにくい。
そもそもダムの湖底に入ることなど始めてなので、それもまた嬉しい。

※穴滝と反対側を望む。普段は木の無いところ位まで水がある訳です。

そしていよいよ穴滝前に。

※写真中央の穴を潜ると穴滝が!ちなみにこの手前も深い淵になっており深さ3mは楽勝。

おが氏からライフジャケットを借り準備万端。
子どもには浮き輪もお付けして。
水の中に入ると、

「つめた!」

夏なのに、水が冷たすぎる。
これでは1歳半の息子は冷凍保存されてしまうだろうと判断し、水辺でちゃぷちゃぷ遊ばせることにしました。そうなると、4歳の娘を妻と私のどちらかが連れて行くことになる。
まずは、妻と娘が先行して行きました。

なかなか戻ってこないのぅ、と、思っていると、ようやく妻が帰還。
「すごい!海外のアクティビティみたい!日本でこんなん見れるんだ!」と興奮。
テンションが常に低いうちの妻が珍しく興奮していました。

なんと、そんなにすごいところならば早くみたい。
息子当番を妻と交替して、私も滝へ向かう。

あの妻がハイテンションに・・・。
水冷た。

私の頭の中に上記の二つが交互に思い浮かぶ状況の中、いよいよ穴をくぐる。

少しほの暗い穴の中は、滝の音が反響していました。


上を見上げれば、岩と岩に挟まれた狭い亀裂のような空間から空が見える。
大地の中に包まれたような感じ。
滝の水は、湯谷温泉の板敷川と同じように岩盤の上を流れてきた川の水なので滝壺の水に比べて温かい。滝壺のある内淵の水は冷たく、その温度差も不思議な感じがします。

滝まで行きましたが、なんとも神秘的な空間でした。

※髪の毛が前にぺたんとおりています。

なぜか民話の世界を思い出す。
日本昔話でよく淵を泳ぐシーンがありますが、まさにあれです。
淵の底には枯葉が積もっており、うるしが溜まる淵の話を連想します。

透明度が高くて下が良く見えるので、潜って深さを確認しようと試みましたが、あまりに深くて水面に戻るまで息が続くか不安。
潜ってすぐに上がってしまう始末。

ひとしきり楽しんで気がつくと、娘が唇真っ青で震えながら遊んでいる。
限界を超えてるのですが、楽しさが勝って遊びつづけているようです。
強制終了

しばらくひなたで遊んでいたらにわか雨が降ってきましたので退散しました。
大粒の雨でしたが、水がめを潤すような量ではとても無く、あっという間に大地に吸収されていました。

帰りがてら、滝を上から見てみる。


巨大なポットホールがありました。
大自然の脅威、という感じです。

おが氏はこれが観光資源にできないのが勿体無いと言っていました。ただ、大量の客が押し寄せても収容力がないのでルールなどをしっかり考えないといけないとの意見。
全く同感です。

しかも、この穴滝。
天候次第で様相が一変してしまうそうです。
私達が入った翌日に雨が降り、翌々日に行ったときには、穴の中の内淵が増水しており、内淵から出られない水が中で渦を巻いており、大変危険な状況になっていたそうです。そのため、その日は穴の外側にある外淵だけで遊んだそうです。

穴滝の中を思い切り楽しめた我々は相当な幸運だったといえます。

やはり自然相手は、計画通りに常に同じ品質を提供できるものではありません。
時間に追われて計画通りに動くことに慣れてしまった我々からすると、折角貴重な時間を費やして「駄目でした。」ではがっかりしますし、中には怒り出してしまう人もいるかもしれません。

ただ、たまには時計を外して運を天に任せて自由に動く、ということを体験するのも良いのではないかと。そうした自由を体感できるだけで幸せ、ということがあっても良いと思います。そうした価値観に共鳴してもらえる人に提供する、という方法はあるでしょう。

『運が良くないと見られない滝』

こういう観光名所があっても良いと思います。

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わたしも・・・ (きっと)
2013-09-17 19:06:35
はじめまして。
きっと、ともうします。
私もここを訪れたことがあります。乳岩の帰りに「まぼろしの滝を見に行かないか?」と
おじいちゃんにナンパされまして・・・というのは冗談ですが、その方はどうしても見せたかったのではないかと思います。
私は路肩に車を止め、おじいちゃんが貼ってくださったロープをたよりに降りて行きました。
驚きました。

「落ちないように気を付けてね、落ちたら上がらないから」
と言われて、母も私も、そして私たちのあとをついてきた知り合いも知らない人もビビりました。
それでも、こんなにすばらしい自然を犠牲にして私たちの生活が成り立っていることは
とても考えさせられました。
あの滝は上流も川原にまあるい大きな岩が転がっていたりして
とても面白いところでした。
だから奥三河大好きです。
返信する
まぼろしの滝! (うらにわ)
2013-09-17 22:51:31
きっと様コメントありがとうございます。
そのおじいちゃんがどうしても見せたくてナンパした、というのもわかる場所ですね。笑。
ダムの湖底という位置も含めて色々と考えさせられます。
奥三河大好き、というのは私も同じです。
良い場所やとっておきのポイントがありましたら、ぜひお教えください。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。