社会人しながら大学院を修了してみたシリーズ第2弾です。
前回は、社会人が大学院へ行く理由について考えてみました。
では、今回は「仕事と大学院は両立できるのか?」についてです。
私の行った大学院の博士課程前期の場合ですが、
①いわゆる大学の授業のような単位を18単位、
②ゼミを12単位
取得する必要があり、これとは別に、
③修士論文が学内審査に合格すること、
によって、修了となります。
①は授業を選択する形態です。1コマで2単位ですから、9コマの授業を選択しなければなりません。仮に修士課程を2年で修了する場合、半期ごとに最低2コマ、多い時で3コマ取らなければ単位を取ることができません。この単位をクリアするには、授業が昼間に実施される大学院の場合、年休を取ることが比較的自由、あるいは、自分の勤務時間に裁量が大きい方、自営業の方などは、良いかもしれませんが、出勤することで勤怠管理を行うことが基本の典型的な日本的組織に所属している人の場合、なかなか難しいと思います。
私が行った大学院は、名古屋市立大学です。名古屋の街中にあって、学びたい社会人向けの工夫がなされています。
ここのウリは、「夜と土曜日の授業で①をクリアできます。」ということです。
しかし、実際には、自分の取りたい授業や取るべき授業が、夜や土日に開講されていない学期もあります。
もっとも、名古屋近郊で仕事されている方は、自分の残業の状況とにらめっこしながら、授業選択することでなんとかこなせると思います。
ところが、私は院への進学を決めた途端、山奥へ異動することに…。
名古屋まで高速道路を利用して2時間かかる場所で勤務することになってしまったのです。
これには、さすがに参りました。
そのため、通学できる時間帯の講義を厳選せざるを得ません。ここで、ありがたいことに先生方が、土曜日に実質的に講義をずらす、という、あまり大きな声で言えない技で対応してくださったのです。もちろん、その先生の講義を取得している院生は私の他にもいます。他の院生の方の了解が運よく得られたこともあって、土曜日でなんとか通うことができた講義がありました。
その他、もともと土曜日に入っている講義は、とにかく取る、ということをしていました。
また、7限が19時40分からスタートするので、定時で車を飛ばして名古屋に滑り込む、という期もありました。また、どうしても追い込まないといけないときは、休日出勤が多い職場だったので、代休を溜めて年休と合わせ技で時間休を取得して18時からの6限、7限の2コマを取る、ということをした期もあります。21時10分に講義が終わり、1時間半かけて自宅へもどる、という結構ハードな平日が週一ある、という生活も、飲み会で遅くなったと考えればやれないことはなかったです。
これは、大きな声では言えませんが、半期ごとの1講座15コマなのですが、3コマまで休んでも単位をくれる、という暗黙のルールがあります。忙しくてもなるべく無理して通うのですが、夜に会議があってどうしても残業する必要も発生時などは、この『3枚のお札』をうまく使ってこなしていました。先生方も、社会人なので大目に見てくれました。笑。
②は、名市大の場合、全体指導方式を取っているため、複数の指導教官がそれぞれのゼミ生を集団指導する方法となります。私はM先生門下生だったのですが、同じユニットに属する先生が他に5名程度あり、そのゼミ生と共に月1回の指導を受けるのです。
ここでの指導は「論文の進捗」です。
自分の論文のテーマである「問い」や、先行研究、調査手法、論文の方向性など、様々な点について、複数の先生の目で確認してもらえます。いろいろと厳しい意見を貰うこともあります。その時は、そうはいっても、と、思うのですが、後でよくよく冷静になって考えてみると、論文での検討がより深い方向で検討できることばかりで、非常に役立ちました。
なお、月一回程度開催されますが、発表は2名程度になります。そのため、自分の当番じゃないときは、仕事を優先して欠席することも多かったです。
これはやむを得ないとして、先生方も大目に見てくれました。
③は、自分との戦いです。
とにかく先行研究をどれだけ読むかが勝負になる訳ですが、自分の研究テーマが決まらないと先行研究を決めることができない。
研究テーマがあやふやなまま論文に挑むことで、当初書くつもりの内容は、既に誰かが書いていたり、研究になっていないことも多いのです。
・社会的意義があること
・学術的意義があること
・期間内に書き終えることができること
この3点を満たす研究の「問い」をうまく建てられるか、ここが、論文の肝になる訳です。先生から教えられるのですが、これが案外難しい。社会人の場合、ある程度「コレを研究しよう」と思って入学することが多いと思います。私もです。ところが、それは「問いに対する答え」であることが多いのです。答えから逆算して問いを作ることになるのですが、問いは大抵先行研究があって、「あ・・・、既に書いてある。」と目の前が真っ暗になる人が多いのではないのでしょうか?私はそうでした。そら、世の中頭の良い人たちが、必死に考えた研究してるわけで、私のようなそこらの社会人が思いついたことなど、既に研究されているわけです。
と、いうことを理解するためにも先行論文を読み込む必要があるのです。本来は自分で調べるのでしょうが、この辺りは指導教官がアシストしてくださり、こんな論文が、とか、こんな本が、とか、教えてくださるので助かります。
もっとも、大量に論文と本を渡されて、どうやって読むねん、と、途方に暮れることも多かったですが。
自分は電車通勤しかしたことなかったのですが、山奥に異動になったことで、不幸にも自動車通勤になったのです。そのため、電車で本を読む時間が確保できなかったことが悔やまれます。もう少し、論文を沢山読むことができたら、研究書を読むことができたら、もっと良いものが、書けただろう、と、思うと悔しいですが、論文とはそういうもので、だから次を書くことになる、といことのようです。
仕事から帰ってきて、必死に読んでいるのですが、いつの間にか寝てしまってい、半泣きでもう一回読むのですが、頭が回らず入ってこない、ということも少なからずありました。しかも、読むと自分の書こうと思っていることが書いてあるので、「うわーーー!これ以上書いてないでくれ!」と祈りながら読むこともありました。
③に関しては、いつでもどこでもできるので、主に出張などの移動時間や、子守でどこか行ったときに子どもを遊ばせながら、自分は論文なり本なりを読む、ということで対応していました。車ではなくて公共交通機関を多用するメリットとして、移動時間が読書時間や思索の時間に変わる、ということがあります。
この点、電車通勤の方は有利ではないかと思います。
自分の場合、子どもらが寝静まってから、夜起きて読む、ということも多く、結構悲惨な状況だったことを覚えています。
と、こんな感じで時間配分をしながら、なんとか、仕事と両立していました。
もっとも、職場と家族に理解があり、だいぶ助けてもらったからこそ院の時間を捻出できた訳でしたので、職場や家族には感謝してもしきれません。
まずは、時間捻出のために周囲の理解を得ることが大事ではないかと思います。
次回は、行こうかな?と、考えている方なら気になる「費用」の話です。
院の学費以外に、こんな費用が掛かった、という点も含めてお話ししたいと思います。
前回は、社会人が大学院へ行く理由について考えてみました。
では、今回は「仕事と大学院は両立できるのか?」についてです。
私の行った大学院の博士課程前期の場合ですが、
①いわゆる大学の授業のような単位を18単位、
②ゼミを12単位
取得する必要があり、これとは別に、
③修士論文が学内審査に合格すること、
によって、修了となります。
①は授業を選択する形態です。1コマで2単位ですから、9コマの授業を選択しなければなりません。仮に修士課程を2年で修了する場合、半期ごとに最低2コマ、多い時で3コマ取らなければ単位を取ることができません。この単位をクリアするには、授業が昼間に実施される大学院の場合、年休を取ることが比較的自由、あるいは、自分の勤務時間に裁量が大きい方、自営業の方などは、良いかもしれませんが、出勤することで勤怠管理を行うことが基本の典型的な日本的組織に所属している人の場合、なかなか難しいと思います。
私が行った大学院は、名古屋市立大学です。名古屋の街中にあって、学びたい社会人向けの工夫がなされています。
ここのウリは、「夜と土曜日の授業で①をクリアできます。」ということです。
しかし、実際には、自分の取りたい授業や取るべき授業が、夜や土日に開講されていない学期もあります。
もっとも、名古屋近郊で仕事されている方は、自分の残業の状況とにらめっこしながら、授業選択することでなんとかこなせると思います。
ところが、私は院への進学を決めた途端、山奥へ異動することに…。
名古屋まで高速道路を利用して2時間かかる場所で勤務することになってしまったのです。
これには、さすがに参りました。
そのため、通学できる時間帯の講義を厳選せざるを得ません。ここで、ありがたいことに先生方が、土曜日に実質的に講義をずらす、という、あまり大きな声で言えない技で対応してくださったのです。もちろん、その先生の講義を取得している院生は私の他にもいます。他の院生の方の了解が運よく得られたこともあって、土曜日でなんとか通うことができた講義がありました。
その他、もともと土曜日に入っている講義は、とにかく取る、ということをしていました。
また、7限が19時40分からスタートするので、定時で車を飛ばして名古屋に滑り込む、という期もありました。また、どうしても追い込まないといけないときは、休日出勤が多い職場だったので、代休を溜めて年休と合わせ技で時間休を取得して18時からの6限、7限の2コマを取る、ということをした期もあります。21時10分に講義が終わり、1時間半かけて自宅へもどる、という結構ハードな平日が週一ある、という生活も、飲み会で遅くなったと考えればやれないことはなかったです。
これは、大きな声では言えませんが、半期ごとの1講座15コマなのですが、3コマまで休んでも単位をくれる、という暗黙のルールがあります。忙しくてもなるべく無理して通うのですが、夜に会議があってどうしても残業する必要も発生時などは、この『3枚のお札』をうまく使ってこなしていました。先生方も、社会人なので大目に見てくれました。笑。
②は、名市大の場合、全体指導方式を取っているため、複数の指導教官がそれぞれのゼミ生を集団指導する方法となります。私はM先生門下生だったのですが、同じユニットに属する先生が他に5名程度あり、そのゼミ生と共に月1回の指導を受けるのです。
ここでの指導は「論文の進捗」です。
自分の論文のテーマである「問い」や、先行研究、調査手法、論文の方向性など、様々な点について、複数の先生の目で確認してもらえます。いろいろと厳しい意見を貰うこともあります。その時は、そうはいっても、と、思うのですが、後でよくよく冷静になって考えてみると、論文での検討がより深い方向で検討できることばかりで、非常に役立ちました。
なお、月一回程度開催されますが、発表は2名程度になります。そのため、自分の当番じゃないときは、仕事を優先して欠席することも多かったです。
これはやむを得ないとして、先生方も大目に見てくれました。
③は、自分との戦いです。
とにかく先行研究をどれだけ読むかが勝負になる訳ですが、自分の研究テーマが決まらないと先行研究を決めることができない。
研究テーマがあやふやなまま論文に挑むことで、当初書くつもりの内容は、既に誰かが書いていたり、研究になっていないことも多いのです。
・社会的意義があること
・学術的意義があること
・期間内に書き終えることができること
この3点を満たす研究の「問い」をうまく建てられるか、ここが、論文の肝になる訳です。先生から教えられるのですが、これが案外難しい。社会人の場合、ある程度「コレを研究しよう」と思って入学することが多いと思います。私もです。ところが、それは「問いに対する答え」であることが多いのです。答えから逆算して問いを作ることになるのですが、問いは大抵先行研究があって、「あ・・・、既に書いてある。」と目の前が真っ暗になる人が多いのではないのでしょうか?私はそうでした。そら、世の中頭の良い人たちが、必死に考えた研究してるわけで、私のようなそこらの社会人が思いついたことなど、既に研究されているわけです。
と、いうことを理解するためにも先行論文を読み込む必要があるのです。本来は自分で調べるのでしょうが、この辺りは指導教官がアシストしてくださり、こんな論文が、とか、こんな本が、とか、教えてくださるので助かります。
もっとも、大量に論文と本を渡されて、どうやって読むねん、と、途方に暮れることも多かったですが。
自分は電車通勤しかしたことなかったのですが、山奥に異動になったことで、不幸にも自動車通勤になったのです。そのため、電車で本を読む時間が確保できなかったことが悔やまれます。もう少し、論文を沢山読むことができたら、研究書を読むことができたら、もっと良いものが、書けただろう、と、思うと悔しいですが、論文とはそういうもので、だから次を書くことになる、といことのようです。
仕事から帰ってきて、必死に読んでいるのですが、いつの間にか寝てしまってい、半泣きでもう一回読むのですが、頭が回らず入ってこない、ということも少なからずありました。しかも、読むと自分の書こうと思っていることが書いてあるので、「うわーーー!これ以上書いてないでくれ!」と祈りながら読むこともありました。
③に関しては、いつでもどこでもできるので、主に出張などの移動時間や、子守でどこか行ったときに子どもを遊ばせながら、自分は論文なり本なりを読む、ということで対応していました。車ではなくて公共交通機関を多用するメリットとして、移動時間が読書時間や思索の時間に変わる、ということがあります。
この点、電車通勤の方は有利ではないかと思います。
自分の場合、子どもらが寝静まってから、夜起きて読む、ということも多く、結構悲惨な状況だったことを覚えています。
と、こんな感じで時間配分をしながら、なんとか、仕事と両立していました。
もっとも、職場と家族に理解があり、だいぶ助けてもらったからこそ院の時間を捻出できた訳でしたので、職場や家族には感謝してもしきれません。
まずは、時間捻出のために周囲の理解を得ることが大事ではないかと思います。
次回は、行こうかな?と、考えている方なら気になる「費用」の話です。
院の学費以外に、こんな費用が掛かった、という点も含めてお話ししたいと思います。