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『9月が永遠に続けば』沼田まほかる

2012-03-03 | 読書
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いつも書店の目立つところに平積みしてあって気になっていたので、思い切って買ってみた。
ホラーサスペンスとのことだが、この題名から心地良い叙情的な文章を期待して。

高校生の1人息子の失踪にはじまり、佐知子の周囲では次々と不幸が起こる。愛人の事故死、別れた夫・雄一郎の娘の自殺。息子の行方を必死に探すうちに見え隠れしてきた、雄一郎とその後妻の忌まわしい過去が、佐知子の恐怖を増幅する。悪夢のような時間の果てに、出口はあるのかー。人の心の底まで続く深い闇、その暗さと異様な美しさをあらわに描いて読書界を震撼させたサスペンス長編。



さすがに人気作品、一気に読んでしまいたくなる「惹きつけ力」は申し分ない。文章も抜群に綺麗でうまい。なかなか楽しめたので高評価だけをして講評とするのも考えたけど、いや、人気作品だからこそ、あえて苦言を呈すかw

サスペンスだから徐々にその謎が明らかになるんだけど、ん~・・・なんつーか、いささか消化不良だな。
「それはないだろー」的なw

こう言っちゃ語弊があるだろうが、そして当たり前なんだけど、女性っぽい視点に偏り過ぎっつーか。
もう何度も書いているが、そしてぼくが男だからそう感じるのかもしれないが、女流作家の「恋愛至上主義」的な部分ってときにリアリティを欠くことになるような気がする。

いや、この作品が「恋愛至上」なわけじゃないけどね。それでも所々で「愛ゆえに常軌を逸する」みたいな行動原理が出てくるので、まあ実際にそういうこともあるかもだけど、ぼくとしては「金や地位や名誉」のためにあるいは「自己保身」のために動く人のほうがリアリティを感じる。共感し入り込める。

ホラー小説にリアリティを言い出すのがそもそも間違いかもしれんけど、それでも現実世界を舞台にしている以上必要最低限のリアリティはあるでしょう。道具立てや設定ではなく「心の動き」の面で。むしろ大事でしょう。

「哲学・思想が違う」と言ってしまえばそれまでだが、ナントカ大賞獲ったりベストセラーになるほどのものかね。
というひねくれものの書評でした。

P.S.ちなみに村上春樹もよく「突然人が消える」ような展開がある、そして何故消えたか最後まで理由がなかったりする。逆に詳しい説明がないから生まれるリアルってのもあるのかな。問題は一冊の本を通しての「深み」なのだろう。


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