石匠風間ブログ!

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『峠』

2004-12-19 | 読書
先ごろ『武士道』の岬隆一郎先生と再会し、様々なお話を伺った。読書の話になりぼくが司馬遼太郎好きなことに触れると、
「ならばこれだけは是非読んでくれ、すごい本だから!」
と、一押しであったのがこの『峠』。正直知らなかった。大体峠なんていう題名から地味で食いつきがわるそうだ。主人公は河井継之輔、聞いたことも無い。

読んでみて驚愕した。ちょっと前にこのコラムでシリーズ化した『坂の上の雲』も驚いたが、ある意味それを凌駕する!
上・中・下3巻の構成で幕末の越後における戊辰戦争を扱っている。

大政奉還をうけて薩長は官軍となり全国を席巻する。官軍に恭順すべきか、それとも徳川家へのご恩を第一とし断固戦うか?会津をはじめとする奥羽列藩同盟、そして官軍に恭順というか無条件降伏する大多数の諸藩、そのはざ間で長岡藩の家老河井継之輔は藩の行く末と武士としての誇りを守るため、独自の中立路線を目指す・・・

それほど有名でもない越後の英雄にとても魅了された。ただし、河井の家老としての方針にはいささかの疑問が残らなくもない。彼の方策は本当に正しかったのか?それについては作品中で福沢諭吉と激しく口論する場面がある。

いや、正しいとか間違ってるとか、そういう価値基準がすでに違うのかもしれない。人間を裸にしたとき最後に残るのは立場だ、と、文中にある。
立場に殉ずるという生き方は、現代文明とお気楽平和国家にどっぷりつかったぼくには違和感があったのかもしれない。

寝るのも惜しいくらいに読み進めて下巻もあとわずかになったら、このまま読みきってしまうのが惜しくなってしばらく本を閉じた。それくらい本に愛着を覚えることがある。これを幸福といわずに何が幸福なものか。


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