石匠風間ブログ!

読書、音楽、雑学

『カルト 39?』

2003-11-16 | 読書
先週の話だけど、永井泰宇著『カルト 39?』を読んだ。精神科医がカルト集団の暗部を探っていくみたいな内容で、とても面白くてぼくとしては異例なことに1日で読み終わってしまった。ただ面白いとはいえ2度は読まないだろうなと思ったのも事実で、もともと後輩の本を勝手に借りて読んでたのですぐ返した。

ところが、この1週間あの本のことが頭から離れない!時間が経つにつれだんだんその不気味さに戦慄を覚えてきたのだ。物語の舞台はカルト的自営農業団体(宗教ではない)のなかで、人間が簡単に洗脳されていく手法を詳細に説明してくれる。自営農業団体といえば深谷の近隣にもあったような・・・

その団体では無農薬野菜を栽培し販売することで成り立っていると言うのが表向きで、その会に入会するときに入会者の全財産を貰い受けて豊な資金力を持っている。会員の子供はみな難民のようにやせ細り異臭を漂わせている。さらに体には無数の体罰の痕が見られる。

入会してハマっている妻や子供をやめさせようと説得すると「7泊8日の体験セミナーを受けて、そうすれば私の気持ちがわかるから」とその1点張り。じゃあそのセミナーを受けていんちきを暴いてやろうと意気込んで乗り込むところっと洗脳されてしまう。

大槻ケンジにもカルト宗教を扱った小説があったが、これはフィクションだろうという読み方が出来たから怖くなかった。今回のこの本は精神医学的脳医学的見地から極めて論理的に書かれているため「人間ってこうも簡単に壊れてしまうのか!」という恐怖に支配される。

何しろ人間の精神を破壊するのなんてとても簡単なのだ。最初に時計携帯など時間のわかるものを没収する、時間がわからないと落ち着けなくなる傾向が現代人にはあるらしい。すると唯一時間を知っている監督者に依頼心が芽生える。その上で睡眠時間を徐々に削っていき肉体労働をさせる。セミナー本体は主に無意味な質問ばかりをぶつけ精神状態を不安定にさせる。監督者も怖そうなヒトと優しそうな女性とを用意してある。

無意味な質問を長い時間繰り返し問われることで肉体的暴力と同様にここから逃げ出したいという心理が精神的不安定を起こし「離人症」という症状を発症する。離人症は精神分裂症の一種で苦痛回避の防衛本能から精神を分離させて別人格を作り上げる症状。

また、精神不安に加え睡眠時間の不足によって脳内麻薬=ドーパミンが大量分泌しやすくなる。大量の脳内麻薬が不可思議な幻覚を生み出すことは科学的に証明されている。特にカルト集団において、「体が浮き上がった」「雷が自分を貫いた」「周りが光り輝いて見えた」「幽体離脱が起こった」など、似たような症状が多く、これらはドーパミン分泌における症例として知られているそうだ。つまりこういう幻覚を神秘体験としてとらえたヒトはコロッと行きやすいらしい。

物語ではオウム真理教ではとか統一教会ではなど、現実に即した具体例を挙げているためフィクション臭さが無くますます怖くなってくる。

ところで、昔から不思議なんだけど幸福の科学の主催者の出す本が必ずベストセラー10位以内に入るのはなぜ?


コメントを投稿