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『世に棲む日日』司馬遼太郎

2005-09-30 | 読書
今回は吉田松陰と高杉晋作を主人公にした物語。
吉田松陰の活躍したのはとても短い期間であったが、後にとてつもない影響力を残した。しかし松蔭の思想は決して優れてはいない、後の世まで通用するものではない。確かに攘夷思想で長州藩はまとまって大きな力となった、が、長州も薩摩も外国を相手に戦争を起こしこっぴどくやられている。
つまり、松蔭の存在価値というのは藩の中に確かな志を確立したということかな。松蔭以前の長州藩は幕府に従順であったそうだから。

それにしてもこの吉田松陰の生き様というのはどうだろう。「人間は公のために生きるものだ」という原則の下にストイックなまでに知行合一を実践し、その若すぎる死をもって後進への影響を大にした。とても共感できる人物じゃないが、幕末の動乱に出現したひとりの志士としては、怖いくらいの魅力がある。

その松蔭に師事した高杉晋作が後半の主人公。4カ国艦隊戦争、長州征伐、蛤御門の変などをうけて長州は滅亡寸前であったところをこの男が救ったと言っても過言じゃない。その高杉を尊敬した伊藤博文や山県有朋などが明治日本を動かしていくことになる。

高杉がつくった奇兵隊は日本で初めての階級無差別軍隊で、侍から百姓から町人までありとあらゆる人間を集めた。その奇兵隊が正規の藩軍より強かったというのだから、武士社会が滅びるのも仕方ない。
高杉自身は28歳の若さで結核で早逝する。幕府の滅亡を見ずに早々と舞台から姿を消すのだが、彼の生き方もまた魅力的だ。

「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなすものは こころなりけり」
というのが高杉の辞世の句。下の句は死を見取った人が加えたものだそうで、上の句の「おもしろく」までが本来だと言う説もあるらしい。この1句によって『世に棲む日日』という題名がつけられたそうで。

なんだか人生の最期にこんな詩を詠めるというのは、楽しかったんだろうなあ。
お墓にこう書いてあるそうだ。
「動けば雷電の如く 発すれば風雨の如し 衆目蓋然 あえて正視するなし これわが東行高杉君にあらずや」

ん~、かっこいい!


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