ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

プリント作ってますっ!

2009-12-05 01:35:59 | 能楽

このところ、ちょっと心を入れ替えまして(?)お弟子さんが謡や仕舞を習得するための参考書としてのプリントを作っております。なんと今回は五線譜つき!(^^ゞ

もとより ぬえは謡や仕舞を習うお弟子さんのお稽古に当たっては、やたらプリントを出す方でして。。(^_^; ずうっと以前から、まだパソコンを持っていない頃から手書きでプリントを作っておりました。

でもこれ、結構 大変な作業でして、プリントを改訂しようとは思うのですが、なかなか作業に取りかかるキッカケがなく。。今回のお稽古プリントの総改訂は もう かれこれ10年ぶりぐらいになるんではないかしら。で、どうせ10年ぶりなのならば、と気合いも入りまして、今回の ぬえのプリントは、なんとヨワ吟の上歌の五線譜表記入り! 我ながら なかなかの力作と思っています。



じつは ぬえ、ヨワ吟の音階変化を習得するのに。。初心の頃には。。同じく五線譜で覚えたのです。。(O.;)

ぬえは大学時代にはじめて能楽と触れて、ついには斯道に飛び込んでしまった一代目の能楽師なのですが、いや~その当時は邦楽なんぞというものには触れたこともなく。。ところが国文学の研究のついでに初めて見た能楽にあまりに強い衝撃を受けてしまいまして、それから学業そっちのけで(?)能楽鑑賞に明け暮れるようになりました。当時の大学の恩師とは今でも交流がありますが、「キミは結局。。文学に帰って来なかったねえ」なんて言われておりまする。

あるとき学内に「能楽研究会」なるサークルがあることを知り、入部したんですね。最初は能楽を鑑賞するサークルだとばかり思っていました。ところがこれが謡や仕舞を稽古するサークルでして、そこで ぬえはいまの師匠と出会うことになり、そうして今の ぬえがここにいるわけなのですね~。いや、人生何が起こるかわからないもんです。

さてサークルでは師匠の稽古は月に3回ほどで、そのほかの日はもっぱら先輩に指導を受けたのですが、当時の ぬえはどうしてもヨワ吟のメロディが習得できずに ずいぶん悩んだものです。そうしているうちに。。女性の先輩が言いました。「ぬえ君、譜面 読める?」「はい? 。。読めますが。。」「それじゃこの上歌を譜面に書いてあげる」「!!」

その先輩、ピアノを長く習っておられて、ソルフェージュにも長けておられたようで、困っている ぬえを見かねてそう言って下さったのです。「ぬえ君、ちょっとこの上歌の最初のところだけ。。自分が一番大きな声を出せると思う音程で謡ってごらん」「見~も~せ~ぬ~ひィと~~ォや。。」「ふんふん。。ぬえ君の出しやすい上音は“ミ”ね。それじゃ上ウキはこうで、中音はこうで。。」と、スラスラとその上歌を五線譜に書いて下さったのです。(゜_゜;)

帰宅した ぬえは早速ギターでその譜面から音を拾って。。要するにギターで上歌を弾いてみました。(^◇^;)

ををっ、よくわかる。。(^_^)b
この日を境に ぬえはヨワ吟を謡えるようになったと言っても過言ではありません。(;^_^A

プロとして恥ずかしい言動かもしれませんが、どこまで行っても ぬえはアマチュア出身の能楽師。でも、それだからこそ当時の ぬえと同じく、まったく邦楽とは縁のない環境で育ち、現に生活している現代人のお弟子さんにとって、謡曲のメロディは難しいものなのだと実感するわけで、そうして今回の五線譜入り参考書プリントを作ることを思い立ったのです。

上歌など平ノリの謡曲を、囃子が入らない素謡の状態で五線譜に表記すると拍数が一定に収まらないので懸念はしていたのですが、幸いリズムの齟齬は無視して表記できるソフトを見つけられたので、みごと! 手書きに依らず譜面に書くことに成功しました! これはフリーソフトなので作者に敬意を表してソフトおよび作者のサイトをご紹介しておきます。

Studio ftn Score Editor