ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

気仙沼弾丸ツアー(その3=気仙沼・大島神社奉納)

2012-05-06 12:30:38 | 能楽の心と癒しプロジェクト
大島に渡ってみると、やはり本土とは違って復興工事もまだ端緒についたばかりという印象です。よくまあ船着き場を確保できたものだと思うほど、岸壁と海を隔てているのはいまだに大きくて真っ黒な土嚢袋。道路の舗装もまだ始まっていません。潮が高く寄せれば冠水の危険と常に隣り合わせの生活。





これらの写真はいずれも翌日東京に帰る前に撮ったものですが、到着時は大雨で大変でした。帰りによく見てみると、実際船着き場のある「浦の浜」の周辺はすでに冠水していました。そうして船着き場には乗船券売り場とコンビニがそれぞれプレハブの仮設店舗で営業しているばかり。

じつはこのコンビニのご主人・菅原さんは今回の ぬえたちの能楽公演と「海をつくる会」の海底清掃をコーディネートしてくださった地元の方々の中心メンバーのお一人で、さっそく菅原さんにお会いしました。この後もずっと菅原さんとはお話をしましたが、沈着冷静で、しかも熱いハートを持った方とお見受けしました。大島の復興の道筋をちゃんと見据えていろいろな活動を進めておられます。そのうえこのコンビニは船で大島に渡ったお客さま(やボランティア)が必ず立ち寄る、いわば大島の顔なんですね。この日も到着したお客さまに見所や宿などを親切に教えておられましたが、自動的に観光協会のような立場になっているようです。



このコンビニ、釣り具売り場を兼ねているらしい事務所に通して頂いたら、そこでは採れたてのワカメを切り揃える作業が行われていました。そういえば2月に階上の地福寺さんで、この時期はワカメや昆布がおいしいんだよ、とは聞いていたのですが、こうやって手作業で製品になっていくんですね~。興味津々で作業の様子を眺めていたら「あとでおみやげに差し上げますから」と菅原さん。え~、そうですかぁ??(#^.^#) それが後で大変な事になるとは知らない ぬえ。



菅原さんに送って頂いて、まずは本日2度目の上演場所である大島神社に向かいます。その途中でも菅原さんは「ホントにおいしいのは昆布の茎のところなんですよ」とおっしゃって、昆布の加工作業場に連絡を入れたりしておられました。それが後で大変な事になるとは知らない ぬえ。

ぬえらは訪問した街の神様にご挨拶をすることにしていますが、実際には地元の方の受け入れを頂いてからになりますので、簡単ではありません。石巻でも初めて住吉神社で奉納をしたのは ぬえが初めて石巻を訪れてからじつに半年後のこの元日でした。そうして気仙沼の神社ではいまだに一度も上演の機会が持てていなかったので、この日の催しはありがたいことでした。

大島神社について ぬえはよく知らなかったのですが。。というより、今回の訪問は「海をつくる会」の活動に付随しての訪問でしたので、この朝に訪問したネットワークオレンジさんが唯一 ぬえの関係から実現した公演だったほかは、この大島に関してはすべて ぬえではなく笛のTさんが話をまとめてくださったのでした。そんな事もあって、ぬえは大島そのものについてよく知らないままで訪れたのが実態でした。

それだけに大島神社で、まずは小松宮司さまにご挨拶をして、紋付に着替えてから拝殿に通されて驚きました。。「これは。。?」そこにあったのは巨大な岩でした。

こちらがこの神社のご神体だったのです。あとで宮司さまから伺ったのですが、大島神社は『延喜式』の神名帳にも記載がある古い神社で、古くは社殿を整えず岩そのものを崇めていたのだろうとのこと。その後明治の廃仏毀釈の中で神社には本殿・拝殿が必要とされて現在のように拝殿の中にご神体の大岩を祀り、さらにその奥に本殿を造るという形になったのだそうです。早速宮司さまからお祓いを受け、舞囃子『高砂』をTさんと奉納。岩のご神体に直接対面しながら舞ったのは初めての経験でした。

このあと社務所で宮司さまと親しく懇談。3.11の震災から1年の日にはなんと宮司さまは石巻の日和山で神主さまが集った追悼の儀式に出席されておられたそうです。また宮司さんご本人も雅楽の演奏での慰問活動を行っておられるので、ぬえらが仮設住宅を廻って活動をしていること、ことに年末には住民さんたちとご一緒に紅白歌合戦を見るなどふれあいを大切に活動をしている活動の様子に興味を持って頂けたようでした。

それにしても大島、よい所ですね~。大島神社は亀山という大きな山の中腹にあるのですが、晴れていれば広大な海を一望できる絶景なのだそうです。宮司さまによれば朝の日の出や夕に月が上るところは本当に美しいのですって。くやしい。それから話題は気仙沼のおいしいものの話に移って、宮司さまのご家族も「もうちょっと時期が違えばウニやアワビや。。」と満面の笑み。「そう言われれば贅沢な生活かもしれませんね~」。。ちぇっ、コンビニ弁当食べながらの支援活動じゃ割が合わないや。

。。と思っていたら「以前まではね。。」と言葉を継がれました。知らなかったのですが、被災地では震災後、すでに1,000人の方が命を落としておられるのだそうです。もちろん病気などで亡くなった方もあるのですが、亡くならなくてもよかったはずの命もたくさんあるのです。厳しい現実もまたここに。。


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