『春日龍神』について考えている事を書いているうちにも、ぬえの周囲ではいろいろな事がありました。
今日はその中から『ポプラディア情報館』という名の本のご紹介。ぬえが小さな記事のお手伝いを致しました。
この本はポプラ社から刊行中の子ども向けの百科事典で、本に記載されている紹介文をそのまま転載すると「小中学生の調べ学習に必要な情報を満載した、テーマ別の学習資料集。写真などさまざまな資料を集め、1冊でひとつのテーマについて、くわしく調べられます。「総合百科事典ポプラディア」とあわせて使えば、調べ学習がよりスムーズになります。」とのこと。百科事典『ポプラディア』の姉妹版ということですね。高額な本なので、学校や図書館で揃えるタイプの本。
このたび ぬえにお話があったのは、その内の1冊『仕事・職業』のお手伝いです。この本では約400種類のさまざまな仕事・職業がいくつかのジャンル別に分けられ、基本的な情報や内容、その職業の やりがいや、その仕事に就くための進路の解説が簡単にまとめられて紹介されています。
ぬえが担当したのは、「伝統工芸と伝統芸能にかかわる仕事」というジャンルの中の「能楽師・狂言師」の記事。ぬえは だいたいの仕事の内容と写真を提供した程度でしたが、さすが編集者はプロで、小さな記事の中でうまく能楽師の仕事を書き表していますね~。ポプラディア編集部の方々、写真を提供頂いた前島写真店、このお手伝いのお話のご紹介を頂いた米原まゆみさんには、この場を借りて心より感謝致します。
この本で面白かったのは、職業によって記事の大きさが違うこと。ファッションデザイナーや美容師、飼育係、消防官、国会議員、プロ野球選手、ゲームディレクター、気象予報士など、2ページ見開きで紹介されている一方、小さな記事だけで紹介されている職業もあり。これは無論仕事の貴賤を表しているわけではなくて、子どもが興味を抱くような職業や、社会生活には欠くことのできない仕事は大きく紹介されるのは仕方のないことでしょう。
ところが、面白いことには、やはり2ページに渡って大きく取り上げられている職業の中には米作農家、漁師、友禅染職人、陶磁器職人なども含まれているのです。ははあ。。伝統工芸や第一次産業など、やや先行きが不透明ながら、日本の文化そのものに関わる仕事について、子どもに興味を持ってもらおう、という意図もあるのだな。
これはありがたい事で、能楽師にとっても、職人さんがどんどん減っている昨今、道具類を新調する場合などは年々調達が難しくなってきているのです。あるいは道具の質がどんどん低下していたり、まがい物に取って代わられたりしています。それも状況は年々ひどくなる一方。。このままじゃ大変なことになる。。能楽師は誰もがそういう危機感を持っていると思いますが、だからと言って能楽師が何かをできるワケじゃない。。
先日 能装束屋さんから聞いたお話では、紋付に家紋を描き入れる「紋屋」さんは、すでに最年少の職人さんが60歳なのだそうです。。「このままでは家紋はすべて印刷に取って代わられる。特殊な家紋は印刷不可能になり、最後には着物に入れる家紋は「違い鷹の羽」に統一されちゃうかも。。」という恐ろしいお話でした。そりゃ、自分の家の家紋さえ知らない人が増えている昨今。致し方ないことなのでしょうか。
また、今回のお手伝いでは、刀鍛冶さんなどは「もうこれからは食べていける職業ではない。土地持ちか財産家でないと。。」とおっしゃっておられるとか。。
一方、あまり知られていないかも知れませんが、能楽師にも「食うや食わず」の人がたくさんいます。何年か前の某能楽師の結婚式では、テーブルで同席した人から新郎について「彼もなかなか収入がなくて大変だ。。夜は地下鉄工事の手伝いのアルバイトをしているんだって。。」と聞いて愕然とした事も。
このままじゃ日本の文化は質実ともに、本当になくなってしまう。。「美しい国」を標榜するならば、国はもうひとつ、何かできるんじゃないでしょうか。手をさしのべるならば。。手遅れになる前に。
『ポプラディア情報館 仕事・職業』ポプラ社 2007年3月刊 ¥6,800
福祉、文化、教育など公益的な社会活動をする人や団体に
会社や個人が献金をすると、損金算入や所得控除が可能になる制度は先進国では当たり前ですが、日本ではごく限られた団体にだけ限定的に認められているのが現状です。
政治献金だけは、大手を振ってまかり通っていますが。
アメリカに優れたオーケストラが多いのも、ハーバードはじめ優秀な私立大がやっていけるのもこの制度のおかげです。税金を取られるぐらいなら寄付をする、税金の使い道は個人が決めるという考え方です。遅れてます日本は。