農文館2

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

テレビ『限界集落株式会社』と有機農業

2015-03-08 09:27:03 | 日記
 昨7日、8日の今日と、東京では日本有機農業研究会の全国大会が開かれています。今回は出来れば参加したいと思っていましたが、美術館の仕事もあって、結局またまた不参加となってしまいました。大会の中心となる講演者の中には、環境・原発問題の菅井益郎さん(國學院大學)と、小児医師の真弓定夫さんが上がっておりました。日頃ほかの分野の人たちとの連帯を口にしてきた筆者としては(『食と農の原点ー有機農業から未来へ』日本有機農業研究会刊、所収)、これまでに増して有意義な大会であり、個人的にも菅井さんはエントロピー学会で、真弓さんはマクロビオティックの正食協会で知己を得ていますので、久方ぶりにお会いできるチャンスを自ら放棄してしまったのは大変残念なことでした。

 筆者は有機農業を始めて間もないころ、、首都圏郊外にある有機農業団体の農場を訪問した折、そこの機関誌に一文を書かせていただきました。団体が設立されてからほぼ30年近くになっているにもかかわらず、会員が発足当時とほとんど変わっていないことに驚き、忌憚なく感想を述べさせてもらったのです。他人への働きかけはともかく、時間的に、会員の皆さんの家族関係を考えても会員数が増えて当然ではないか、というのが筆者の言い分だったように思います。
 翻って、日本有機農研、今年で43回目の大会を迎えることになりましたが、この間の事情は上述の団体と大同小異です。有機農家ですら跡を継がせようとしない農家もあるくらいですから。いずれにしても、資本主義経済システムが生産の効率化を最優先にしている限り、分業化は避けられず(国民経済計算における産業別国内生産の指標に表れている)、したがって好むと好まざるとにかかわらず、人間社会が分断化されてゆくのも又避けようがありません。学者・研究者を問わずあらゆる分野が業界化していることに象徴されている通りです。弱い者たちの孤立化は時代の流れということなのでしょう。

 端的に言えば、同じ農業に従事する者たちが足並みを揃えることができない、例えば慣行農業と有機農業、挙句の果てが農業放棄と限界集落、地域社会の消滅です。遠くの親戚よりも、身近な他人とも言うように、もっと広く異分野の人たちとの連帯を、と繰り返してきましたが、やはりなかなか難しいのが現状です。そんな折、NHK・BSテレビで『限界集落株式会社』という連続ドラマが放映されました。そこでは、賛成、反対、紆余曲折しながらも、限界集落で慣行、有機に従事する農民たちが、農業の原点である共同体を守ろうとする姿が描かれておりました。不満を言えばそれなりにありましたが、同じような限界集落で細々と有機農業に携わっているものとしては、十分プラスに受け止めることのできたドラマでした。わが集落の人たちのみならず、多くの過疎地の農業者たち、日本有機農研の会員の皆さんにも是非見て貰いたいと思いました。

 ちなみに有機農業にかたくなに反対していた有力農業者の役を演じた俳優の寺田農さんは、筆者の中学校の後輩です。かつて、俳優の大地康雄が制作した『恋するトマト』<2006年)という映画を、マクロビオティックの『むすび』誌で取り上げたことがあります。農村の過疎化と嫁不足問題を通じて描かれた作品で、大地康雄さんの農業に対する並々ならぬ思いが伝わってくる内容でもありました。寺田農さんが若い有機農業者を支援する姿を見ながら、せめて農業者同士の連帯を、そしてそれを気付かせてくれている異文化の一つとしての映画や演劇世界との交流の重要性も、改めて痛感した次第です。手前味噌ながら、美術館運動もその一つだと思っています。

 




コメントを投稿