農文館2

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「責任の歴史学」松村高夫論文を読んで(4)

2020-01-04 11:00:47 | 日記
4.人間とは何か
  
以上二つの論文を通読して痛切に感じたのは、上述の3に絡んで、一部の人物を除き、論文に登場する、選ばれたと思われる政治家や科学者、軍人が、欺瞞と保身の鎧に身を包み、チョーサーの『カンタベリー物語』に登場する中世的人間顔負けの、それ以上の近代人だったことを再確認したことです。ミッドウエー海戦で敗北したにもかかわらず、勝った、勝ったと言い続けていた日本の軍部、事実を隠しながら原爆を投下したアメリカの指導者は、その後ヴェトナム戦争やイラク戦争でも嘘を続けます。とりわけ731部隊の主人公や戦争中日本の原爆開発に関わった科学者の戦後の保身振りを紐解くことは、政治や経済では計り知れない難問課題であるような気がします。  

したがって、「責任の歴史学」を進めるうえで、歴史学、政治学、経済学などの諸社会科学からの解析のみならず、私は文学、心理学、哲学など人文科学からのアプローチも不可欠のように思われます。(おわり)






迎春 2020年

2020-01-02 07:30:18 | 日記
迎春 2020年

 世界中に広がる格差社会と頑ななナショナリズム、加えて日常化してきた自然大災害を目の当たりにして、80余年前、産業文明社会の破たんを描いたチャップリンの『モダン・タイムス』が蘇ります。効率と便利さ追及の中で「お金」に取りつかれた人間はマネーゲームに現を抜かし、『殺人狂時代』を経て偏狭な『独裁者』を生み出し大量殺りくの時代に突入してゆきます。これは過去の物語なのでしょうか。
 「宇宙を敵対する二陣営、味方と敵、善と悪、に分けたりせず、全体を公平に観察することが肝要であり、知識の獲得はすべて自己の拡大であるが、知識は、自己と自己ならざるものとの統合の一形式なのである」と言ったのはチャップリンと同世代の哲学者B.ラッセルですが、鈴木大拙、「無住処」「無分別」を説く禅の世界もしかりです。
 
 芸術は、その抑圧からの回帰、宇宙の中の人間と人間の中の宇宙を全体化するという役割を担っています。当美術館も、微力ながら引き続きその一端を務めていければと思っています。
 皆様のご多幸をお祈り申し上げますとともに、本年もよろしくお願い申し上げます。

                                2020年 元旦