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大江健三郎の思い出

2023-03-13 15:56:33 | 日記
 今しがた、大江健三郎が3日に亡くなったの知った。
 少し年上だが、同世代を代表する作家として、そして戦後文学の数少ない後継者のひとりとして僕は常に敬意を払ってきた。分野は違うけれど、先に西部邁の自死を耳にした時のように、言われようのない寂しさに襲われている。持病を抱え、いつ迎えが来るかもしれないわが身を振り返りながら、自分なりの戦後を総括する原稿に取り組んでいた矢先だけに、同時代人大江の死はことのほか胸を衝く。
 
 大江文学に接したのは十代最後の頃からだったが、当時すでに世に知られた(流行作家)でもあった大江が、僕が所属していた大学のペンクラブの依頼にこたえ、薄暗い地下室の部室で、数人、いや十数人だったか、年下の学生たちの大江文学だけでなく文学論一般についての座談に気軽参加してくれたことが、今では何よりも強く印象に残っている。それはその後、僕が大江文学を読み続ける契機にもなったからだ。
 だが、今の僕には、言われようのない寂しさが募るばかりで、その大江文学の読書遍歴について語る力は持ち合わせていない。
 ただただご冥福を祈るばかりである。


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