猫でした、それは

阪急宝塚駅前でバッタリお会いしたお客様

「あら」
互いに、びっくりした感もなく
当然のように、近くの椅子に腰掛け・・・

「今から戸籍謄本取りに、ほら田舎の土地の件で、ね」

・・・ほら、ね、って何のことか知りません、が
確かにめんどくさそうな書類の束を手にされていました

私の悪い癖、知りもしないのに
「たいへんですね～」
あ～毎度いい加減です、全く


さて、その方、写真がご趣味で
たった今、現像してきた、という写真集を見せて下さいました

御歳78歳にして、先月ベトナムで撮ってきたという
秘境ばりの写真の数々

おべんちゃらが苦手な私も
あらま！
食い入るばかりの素敵な写真の数々

子供・老人の笑顔が際立ちます

その中で、

「あっ」

写真集を繰る手が止まりました
それは赤い服装のおばあさんに抱かれる黒い猫の写真

正直、平凡な写真でした

今まで私が「これ良いですね」と感嘆の声を
上げてきたものとは、作品の質が違いました

でも

アカン、もう一回見たい

そして、その写真集を見た後に、もう一度その写真まで戻り

「でも、私はこの写真が一番好きです」
つい、おべんちゃらを言ってしまいました

その方は少し不思議そうに首を傾けられました
なぜならそれまで私が反応する作品はご本人も納得される
芸術的一枚でした
　
でも、これは誰が見ても平凡なポートレイト
それでも意を決して

「これ下さい！」

厚かましくもお願いしました

実は先日、我が家に来た老猫
それに瓜二つだったのです
ベトナムの、秘境で、おばあさんに抱かれた黒猫が！

ふてぶてしい顔、人間なんて、と不信感丸出し、
黄金のピスタチオの目、
目の上の禿げ具合、
まさに、まさに、我が家に来た黒猫でした

驚きです
そして笑いました

ベトナムにもいるのか、こいつは！

慣れない環境でせつない背中を見せる我が家の猫

きゅ～ん

猫との生活が始まりました



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