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ラパチニブが効かなくなるのは「裏切り者」のせい

2015-10-21 06:03:27 | 癌の治療法
Turncoat protein regulates sensitivity of breast cancer cells to drug

October 12, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151012132257.htm

乳癌細胞はどのようにして広く使われている抗癌剤のラパチニブlapatinibに対して抵抗性を獲得するようになるのか?
それを説明する鍵は、腫瘍を抑制する分子と癌遺伝子との間の、驚くべき逆説的な関係なのかもしれない

Cancer Cellで発表されたペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院の研究によると、
ラパチニブはHER2陽性の乳癌細胞においてFOXOという抑制分子を活性化するが、
FOXOは裏切って遺伝子発現を制御するエピジェネティックな調節分子と共に働くようになる
このラパチニブによって引き起こされる関係はc-Mycの発現を誘導し、ラパチニブへの感受性を低下させて最終的に癌は再発する

「エピジェネティックな経路がHER2+乳癌の増殖にとって重要であり、
このエピジェネティックな因子がHER2阻害剤であるラパチニブへの感受性を低下させる」
癌生物学の教授であり主席著者のXianxin Hua, MD, PhDは言う


human epidermal growth factor receptor 2 (HER2) は、乳癌の一部で上方調節されている
HER2経路は多くの癌で変異する腫瘍のドライバだが、
この経路の阻害剤は癌細胞に急速に適応されてしまうため限られた成功しか収めていない


通常、FOXOは癌細胞の増殖を制御する『いいやつ/good guy』の分子であり、一方でc-Mycは癌を促進する『悪いやつ/bad guy』であると考えられている
しかし、FOXOは抗癌剤の治療中に癌細胞への感受性を低下させるエージェントとなり、『いいやつ』から『悪いやつ』へ切り替わる

「FOXOとc-Myc、そしてエピジェネティックな経路のトライアングルが判明したため、
我々はc-Mycをエピジェネティック阻害剤を使って止めることが可能である」
Huaは言う

「多くのエピジェネティックな調節因子が薬の感受性低下に関与する
それらはこのタイプの癌の治療を改善するための新たな標的にすることができるだろう」

今回の研究で通常は拮抗するFOXOsとc-Mycから構成される適応経路adaptation pathwayが明らかになり、
それらはエピジェネティックな化合物によって調節される
この複雑な相互作用が示されたことにより、研究者はHER2+乳癌で攻撃できる新たな経路を手に入れることになる/Unraveling this complex interaction now gives researchers another point in the HER2 cancer pathway to hit.


http://dx.doi.org/10.1016/j.ccell.2015.09.005
An Epigenetic Pathway Regulates Sensitivity of Breast Cancer Cells to HER2 Inhibition via FOXO/c-Myc Axis.

Highlights
・スモールヘアピンRNA/shRNAのスクリーニングによりHER2+乳癌細胞ではMLL2複合体が重要であることが明らかになった
・HER2阻害剤ラパチニブによるFOXOsを介したc-Mycの誘導が薬への感受性を低下させる
・FOXOsは、逆説的にparadoxically転写因子のc-Mycを誘導し、それはMLL2/GCN5/BRD4依存的である
・ラパチニブとBRD4阻害剤/IBETは、相乗作用してHER2+乳癌細胞をin vivoで抑制する

Summary
HER2+はヒト乳癌の一部で上方調節されるが、癌はHER2キナーゼ阻害剤に対してしばしば急速に適応的な応答を示す

我々はMLL2を含むエピジェネティックな経路がHER2+細胞の増殖に重要であり
MLL2が癌細胞のHER2阻害剤ラパチニブへの感受性を低下させることを発見した

ラパチニブにより誘導される転写因子FOXOは通常は腫瘍を抑制するが、
MLL2と関連するエピジェネティックな調節因子のカスケードと協力して逆説的にc-Mycをエピジェネティックに上方調節し、
癌細胞のラパチニブへの感受性を低下させる

c-Mycを抑制するエピジェネティックな阻害剤はラパチニブと相乗作用して癌細胞の増殖をin vivoで抑制するが、
それは部分的にはFOXO/c-Mycという軸axisを抑制することによる
これはつまりエピジェネティックに調節されるFOXO/c-Mycという軸が治療改善の潜在的な標的であることを明らかにする



関連サイト
http://cancerstem55.w3.kanazawa-u.ac.jp/study.html
大部分の慢性骨髄性白血病(CML)では、FOXOは細胞増殖をおさえる働きをしていることが知られています。BCR-ABLは異常なシグナルを発信してFOXOの働きを妨げ、CML細胞を増やします。イマチニブなどの治療薬はBCR-ABLを抑制してFOXOの働きを助け、CML細胞を治療すると考えられています(図左)。

しかしCMLの癌幹細胞では、実はFOXOはイマチニブに対する抵抗性に関わっていることをわれわれは世界で初めてつきとめました。また、周囲の細胞が作り出すTGF-βが癌幹細胞のFOXOを活性化していることを見出しました(上図右)。



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/efa9b37871681a6a0d8a0b3bf923aa85/
白血病ではMYCがBRD4によって制御され、BRD4阻害剤はMYCを停止させて白血病細胞は死ぬ



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http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/54d48391924d6eb528dd139546a5f981
膵臓癌で染色体を調節する遺伝子のMLL1、MLL2、MLL3、ARID1Aに変異があると予後が良い