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眠っているウイルスがALSを引き起こす

2015-10-04 06:39:32 | 
Dormant viral genes may awaken to cause ALS

NIH study may open an unexplored path for finding treatments

October 1, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/10/151001094725.htm

(ヒトとマウスの脳の研究により、ヒトが生まれつき持っていて表面的には不活化しているウイルス遺伝子がALSを引き起こすことが示された)

NIHの科学者は、ヒトのゲノムに埋め込まれた古代のウイルス遺伝子の再活性化が、いくつかのタイプの筋萎縮性側索硬化症(ALS)においてニューロンの破壊を引き起こすことを発見した

Science Translational Medicineで報告された今回の研究結果は、ヒトの内因性レトロウイルス遺伝子/human endogenous retroviral genes (HERVs) とALSとの間の関係を示唆し、
HIVを抑制するために使われるのと同様に抗レトロウイルス薬がALS患者を助ける可能性があるかどうかという問題も提起する

現在、アメリカに1万2千人以上いるALS患者への効果的な治療は何ら存在しないが、
まれにon rare occasion、HIVに感染したAIDS患者がALSのような症状を生じることがあり、
その患者の多くは抗レトロウイルス薬で回復が可能である

以前の研究で、レトロウイルスがコードする逆転写酵素reverse transcriptaseがALS患者で血中に発見されたが、その役割は不明だった

これらの観察から、Nath博士と彼の研究チームはレトロウイルスとALSとの間に関係があるのかを調べようとするようになった
意外なことに、彼らは内因性、つまり遺伝によって受け継がれるレトロウイルスがALSに関与するかもしれないということを発見した

彼らは初めに、ALS患者の脳サンプルには通常より高いレベルのmRNAが存在することを示した
このmRNAはヒト内因性レトロウイルスK/human endogenous retrovirus K (HERV-K) という遺伝子によってコードされる

HERV-K遺伝子によってコードされるタンパク質の一つ、envはALS患者の脳サンプルでは発見されたが、
健康なヒトやアルツハイマー病からは発見されなかった
研究者はさらに、HERV-K遺伝子の活性化が健康なヒトニューロンを殺すということも実験で示した


HERVsのALSでの役割をテストするため、科学者は遺伝子操作によりマウスのニューロンでHERV-Kのenv遺伝子を活性化させた
その結果マウスは通常より早く死亡し、バランスと歩行に問題が生じ、それは年とともに悪化がだんだん進行したprogressively worsened with age
科学者がマウスの脳、脊髄、筋肉を調べたところ、ALSで失われる細胞として知られる運動ニューロンmotor neuronだけが損傷を受けており、神経系の他の部分の細胞は健康なままだった

「我々はALSの間の運動ニューロンがこれら遺伝子の活性化に影響されやすいsusceptibleかもしれないということを示した」
Nath博士は言う


科学者は最後に、HERV-K遺伝子の活性化がTDP-43によって制御される可能性を示した
TDP-43はALSと強い関連がある遺伝子調節タンパク質であり、HIVウイルス産生を制御することが知られている
ヒトのニューロンで遺伝学的にTDP-43の発現を促進させるとHERV-KのmRNAならびにタンパク質の産生は増加し、
それに対してTDP-43を阻害するとHERV-Kの逆転写酵素の活性は減少した

Nath博士たちは現在、ジョンズ・ホプキンス大学のALSセンターと共同でALS患者のサブセットにおいて抗レトロウイルス治療がHERV-Kの複製の制御に有効かどうかを研究している


http://dx.doi.org/10.1126/scitranslmed.aac8201
Human endogenous retrovirus-K contributes to motor neuron disease.

ウイルスの再活性化は、転写因子のTDP-43によって調節される



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/175c3949066248b3c8e14ae86955ed27
脳細胞からの毒素はヒトALSモデルでニューロン損失の引き金を引く



関連サイト
http://ta4000.exblog.jp/19133502/
SLE患者のCD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞では、HERVの一つである長い散在性反復配列/LINEの「L1」のメチル化のレベルが低下している
 


癌細胞の一歩先を行く

2015-10-04 06:13:07 | 癌の治療法
Keeping one step ahead of cancer cells

September 15, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150915090657.htm

BRD4阻害剤は、現在臨床試験中の癌の治療では最も有望な新薬の一つである
オーストリアのウィーンViennaにある分子病理学研究所/Research Institute of Molecular Pathology (IMP) とベーリンガーインゲルハイム/Boehringer Ingelheimの研究チームは、
急性骨髄性白血病/acute myeloid leukemia (AML) という白血病細胞がどのようにしてBRD4阻害剤による致死的効果を回避できるのかについて明らかにした

BRD4: Bromodomain-Containing Protein 4。BET系ブロモドメインファミリータンパク質の一つ。他にBRD4の他にBRD2,BRD3,BRDTがある

※BET: bromodomain and extra-terminal。ブロモドメイン繰り返し配列および特異的末端配列

※ブロモドメイン: ヒストンのアセチル化リジンを認識して結合し,制御タンパク質を集めてクロマチン構造や遺伝子発現を制御する機能を持つドメイン


これまで科学者たちは癌の変異をほとんど完全に明らかにしてきた
しかし、効果的な癌治療へ向けた『翻訳複合体translating complex』の遺伝学的な知識を得ることは現代医学にとって非常に困難な挑戦であることがわかってきた

癌細胞を攻撃する新たな方法を見つけるため、IMPのJohannes Zuberのラボは『機能的遺伝子スクリーニング/functional genetic screens』というシステマティックかつバイアスのない方法で癌細胞の脆弱性を探った
2011年、この技術を使った初めての研究でZuberたちはニューヨークのコールド・スプリング・ハーバーと共にBRD4が急性骨髄性白血病/acute myeloid leukemia (AML) の『アキレスの踵』であることを発見した
この発見からBRD4は白血病の新たな治療の標的として認識されるようになり、わずか4年後の現在では複数のBRD4阻害剤が臨床試験に入っている
そしてその内のいくつかは既に有望な結果を報告している



 新たな癌治療に対する抵抗性はほとんど理解されていない
 Resistance to new cancer therapies is often poorly understood


BRD4は転写を調節する因子として知られ、何百もの遺伝子の活性を制御する
それらの遺伝子はBRD4阻害剤により一斉にsimultaneouslyスイッチが切られる

白血病でBRD4によって制御される特に重要な遺伝子の一つはMYCという癌遺伝子であり、MYCは白血病細胞の限界がない増殖に必要である
BRD4阻害剤はこの重要な癌遺伝子のMYCを停止させ、それにより白血病細胞は死ぬか正常な血球へ発達する
しかし阻害剤に感受性があるのはほんの一部のサブタイプだけで、BRD4阻害剤が有効な場合もあれば抵抗するものもあった

その理由を理解するためZuberたちは遺伝子スクリーニングを初めて実施し、PRC2という複合体が失われていることを発見した
PRC2複合体は正常な発達中に遺伝子を不活化することが知られているが、複合体が喪失することで白血病細胞はBRD4阻害剤に抵抗するようになる
これらの細胞をさらに分析したところ、MYCや他のBRD4によって調節される遺伝子は再び元に戻り、白血病細胞はBRD4がなくてもこれらの遺伝子を活性化する方法を見つけてしまうことがわかった



 癌細胞は回避することを『学ぶ』
 Cancer cells "learn" to evade the effects of BRD4 inhibitors


研究者は次に、阻害剤を投与している間に抵抗性を獲得した細胞と、阻害剤に初めから抵抗性だった細胞とを比較した
すると、どちらの場合でも非常に似た経路を使ってMYCのような重要な遺伝子をオンに切り替えることがわかった
それにより白血病細胞はBRD4阻害剤によって死ぬことを回避する

「それはまるで、初めから阻害剤に抵抗する細胞が既に知っていることを、知らなかった細胞があとから『学ぶ』かのようである」
ポスドク/博士課程終了後の科学者/postdoctoral scientistのPhilipp Rathertが説明する

特に重要な経路の一つはWNTシグナル伝達であることがわかった
WNTは結腸癌などでMYCを活性化することが知られている


MYCがどのように調節されるのかをさらに詳しく調べるため、
Zuberは、最近『STARR-seq』というエンハンサーの活性を直接かつ定量的にゲノムワイドで調べることができる技術を開発してエンハンサーの研究に革命を起こしたIMPのAlexander Starkのラボに協力を求めた
エンハンサーとはプロモーターから遠く離れた場所で遺伝子の調節に関与するDNA領域のことであり、クロマチン構造を調整する因子をリクルートして距離や位置に関係なくプロモーター上の転写機構と直接相互作用する
そしてエンハンサーによる標的遺伝子の転写の調節は多くの場合細胞の種類に特異的であり、特定の条件でしか機能しない

STARR-seqにより、BRD4阻害剤に抵抗する白血病細胞は非常に小さいエンハンサー領域を通じてMYCを活性化させることがわかった
そのエンハンサー領域にはWNT経路の要素が結合して、BRD4阻害剤の後にエンハンサーが活性化する



 白血病治療の成功を予測する新たなバイオマーカー
 A new biomarker to predict success of leukemia therapy


今回の研究結果を確認するため、研究チームはウィーンメディカルスクールのPeter ValentとともにWNTシグナル伝達のマーカーを計測した
分析の結果、WNT活性が低い患者はBRD4阻害剤に感受性が高く、WNT活性の高さは抵抗性と関連した
これはBRD4療法の成功を予測する『バイオマーカー』になるかもしれないという


まとめると、白血病の細胞はBRD4阻害剤に抵抗するが、それはBRD4の標的遺伝子の調節を再配線することによる
この『転写の適応性/transcriptional plasticity』は、これまで知られてきた抵抗性の仕組み、例えば薬剤の結合箇所を変異させたり薬剤をポンプで排出するなどの方法とは異なる

今回の研究は癌細胞が標的治療に適応するということを再び示すものではあるが、
IMPとBoehringer Ingelheimの研究チームは今回のような適応メカニズムを理解することで癌細胞を打ち負かすための組み合わせ療法の開発につながると考えている

Zuberは言う
「我々はこれまで癌細胞が標的治療に抵抗することを学んできたが、しかし癌細胞の『逃走ルート』のレパートリーは限られている
彼らに共通する逃走ルートを理解することで、次の効果的な標的治療を予測できるようになるだろう
そうして我々は常に癌細胞の一歩先を行く」


http://dx.doi.org/10.1038/nature14898
Transcriptional plasticity promotes primary and acquired resistance to BET inhibition.