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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

癌のガーディアンHsp90を標的にする

2015-09-20 06:22:21 | 癌の治療法
Key cellular enzyme could be effective drug target in urologic cancer cells

September 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910091527.htm

シャペロンのHsp90は、癌を守り増殖を助けるガーディアンguardianである
そしてAha1はHsp90を活性化する
以前の研究では、Aha1からHsp90を引き離すことにより、癌細胞のHsp90阻害剤への感受性は増大することが示された

ニューヨーク州立大学/State University of New York (SUNY) のアップステート・メディカル大学/Upstate Medical Universityの研究者は、
そのAha1の調節因子であるc-Abl1に対する化合物により、Aha1をHsp90から切り離すことに成功した
Aha1の調節因子を妨害することで、Hsp90阻害剤はより効果的に腎臓癌細胞の増殖を疎外することが可能だった
Hsp90阻害剤はこれまで乳癌、白血病(多発性骨髄腫)、胃癌の臨床試験で成功している

「今回の発見はHsp90阻害剤の臨床での効力を促進するだけでなく、Hsp90阻害剤との組み合わせ療法を目的とした将来の研究の基礎となるだろう」
UpstateのMollapourは言う

年間61000人が腎癌と診断され、14000人が死亡する
治療現場で一般的なタイプの腎細胞癌は化学療法に抵抗性である

「今回のような研究はHsp90阻害剤を腎癌での臨床試験に近づけるものだ」
Mollapourは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.07.004
c-Abl Mediated Tyrosine Phosphorylation of Aha1 Activates Its Co-chaperone Function in Cancer Cells.


Highlights
 c-Abl─(チロシン223リン酸化)→Aha1→Hsp90のATPアーゼ活性↑

Summary
Hsp90のATPを加水分解する能力はそのシャペロン機能のために必須である

コシャペロン/co-chaperoneのAha1は、Hsp90のATPアーゼ活性を刺激して、そのシャペロン機能を特定の『クライアント』タンパク質に合うように調整するtailor
しかしAha1とHsp90の結合を調節する細胞内シグナル伝達メカニズムは明らかではない

今回我々は、c-AblキナーゼがヒトAha1のチロシン223残基をリン酸化し、ヒトAha1とHsp90との相互作用を促進することを示す
この結果としてHsp90のATPアーゼ活性は増大し、Hsp90のキナーゼクライアントとの相互作用は促進され、
Hsp90のキナーゼクライアントではないグルココルチコイド受容体やCFTRのような分子へのシャペロン活性は低下する

我々はヒトAha1チロシン223のリン酸化がユビキチン化とプロテアソームによる分解につながることを発見した

c-Ablの薬理学的阻害はヒトAha1のHsp90との相互作用を妨げ、それにより癌細胞はHsp90阻害剤への感受性がin vitroとex vivoの両方で増大する



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150807092403.htm
Protein may trigger cancer cell's metabolism

以前の研究でHsp90の修飾(ニトロ化nitration)は神経変性疾患において神経系細胞を殺す引き金だとわかったが、今回の研究ではむしろ癌細胞を助けることが判明した

Hsp90のニトロ化はミトコンドリアへの酸素を制限し、エネルギー産生を減少させる
これは細胞にとって弔いの鐘の音death knellに聞こえるだろう

しかし、酸素消費の低下は実際には癌細胞を助ける
癌細胞は他のエネルギー源に依存し、低酸素への抵抗性を高めることになる

http://dx.doi.org/10.1074/jbc.M115.663278
Nitration of Hsp90 on Tyrosine 33 Regulates Mitochondrial Metabolism.
Hsp90のチロシン33のニトロ化はミトコンドリア代謝を調節する

Hsp90には他に4箇所のニトロ化しやすいチロシン残基が存在するが、
チロシン33のニトロ化だけでミトコンドリアの活性を低下させるのに十分だった

※nitrate: 硝酸塩(エステル)。一価の-ONO₂基を含む化合物の総称



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150419193713.htm
New subsets of lung cancer with KRAS gene mutations identified

KRAS変異の肺腺癌lung adenocarcinomaには3つのサブタイプKL, KP, KCがある
KLサブタイプにはHsp90阻害剤が有効
AACR2015
 

アレルギーと脳腫瘍

2015-09-19 06:07:50 | 
Hint of increased brain tumor risk five years before diagnosis

September 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909142108.htm

オハイオ州立大学の新しい研究によると、脳腫瘍と診断される5年も前に免疫機能の変化が生じるという
この脳腫瘍が症状を生じるのは典型的には検出されるわずか3ヶ月前である


研究者は脳腫瘍と診断される平均15年前に集められた血液サンプルを用いてアレルギーと関連する12のタンパク質との相互作用を分析することで、
後に脳腫瘍と診断されたグループと脳腫瘍にならなかった対照グループとの間でそれらの関係がどのように異なるのかを調べた

血液サンプルの分析によると、後に神経膠腫という脳腫瘍と診断された人々では、その診断の最大5年前には免疫系のタンパク質であるサイトカインによるシグナル伝達が少ないことが示された
この相互作用は健康な対照群でも強く維持されていた

今回分析したタンパク質はサイトカインと呼ばれ、アレルギーと関連する免疫応答の間に活性化する
今回の研究でサイトカインが選ばれた理由は、アレルギーが神経膠腫ならびに膠芽腫のリスク低下と関連づけられているからである

これらの腫瘍は免疫系を抑制する能力があり、それにより増殖が促進される
今回の結果は初期の腫瘍の成長が脳腫瘍と診断される何年も前に免疫機能の変化として検出可能になることを示唆する

「サイトカインはすべて互いに関連しているためどれが最も重要であるかは言えないが、神経膠腫患者では診断から5年以内にそれらの関係すべての弱体化が観察され、対照群ではそのようなことはまったく観察されなかった」


Schwartzbaumが神経膠腫または膠芽腫の診断前の5年未満に取られた55人のサンプルまで分析を狭めると、
後に脳腫瘍を発症する人々においてサイトカイン間の相互作用の減少が明確に現れた


全グループの血液サンプルの間では、アレルギーがこれらの脳腫瘍から保護することを示唆する別のサイトカインの関係を研究者は発見した
診断の20年も前のIL-4タンパク質レベルの高さ(IL-4はアレルギーの人で過剰に生産される)は神経膠腫を発症する可能性の減少と関連することを分析は示した
この関連はそのパートナーのタンパク質sIL4RAとその相互作用を考慮した時も保たれた

「このことはこのサイトカインの相互作用が腫瘍の発症するであろう20年前に保護的効果があることを意味する」
Schwartzbaumは言う

今回の結果は、アレルギーが神経膠腫リスクを実際に低下させることを示唆する発見を支持するものである
これらの脳腫瘍は免疫系に影響するので
研究者はまだ、
アレルギーが脳腫瘍リスクを低下させるのか、
アレルゲンに対する過剰に敏感な免疫応答にこれらの腫瘍が診断前に干渉しているかどうか
を確信していない

Schwartzbaumの研究グループは以前、
アレルギーに関する抗体を含む血液サンプルの男女は
アレルギーの徴候がない人と比較して20年後の神経膠腫リスクがほぼ50%低下することを報告している


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0137503
Association between Prediagnostic Allergy-Related Serum Cytokines and Glioma.
 


関連サイト
http://www.cancerit.jp/18611.html
総IgE濃度が高い場合、総IgEが陰性の場合と比較して、20年後の神経膠腫リスクが46%減少した。
Schwartzbaum准教授の次の研究は、免疫応答の一部として炎症を促進または抑制する化学伝達物質であるサイトカインの血清標本中の濃度を測定し、これらのサイトカインがIgE濃度上昇と脳腫瘍リスク減少の関連性に重要な役割を果たしているかどうかの調査である。


関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2012/08/120803094429.htm
アレルギーの人は脳腫瘍のリスクが低いかもしれない


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/9f5d96ebecff19834f708c991ad636be
IL-13はTh2系サイトカインであり、炎症と免疫システム調節で重要な役割を演じる
IL-13は構造的および生物学的にIL-4と類似性があり、初めにIL13Rα1と結合することにより機能することが知られている
その後IL4Rαをリクルートしてヘテロ二量体化し、主にJAK2-STAT経路を経由してシグナル伝達を変換する

IL13Rα2はIL-13に高親和性だがシグナルを伝達しないデコイ受容体であり、IL-13のシグナルを阻害する
興味深いことに、IL13Rα2の発現の高さは、神経膠腫gliomasと頭頸部癌の発症と関連し [18] [19]、
膵臓癌、卵巣癌、結腸直腸癌の浸潤と転移を促進することが示されている [20]–[22]
 

潜伏するHIVを再活性化させる新薬

2015-09-18 06:24:07 | 感染症
Researchers reawaken sleeping HIV in patient cells to eliminate the virus

An emerging class of drugs called Smac mimetics may lead to a safe, effective treatment to eradicate HIV

September 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909124102.htm

BIRC2はHIV-1の転写を抑制して潜伏させる
Smacを模倣する化合物のSBI-0637142はBIRC2を阻害して、潜伏するHIV-1を活性化する

Smac模倣物のSBI-0637142とヒストン脱アセチル化阻害剤のpanobinostatの組み合わせはウイルス再活性化の徴候を示したが、免疫系の活性化は引き起こさなかった
既に癌での臨床試験が行われているSmac模倣物のLCL161とpanobinostatの組み合わせでも同様の結果が得られた


http://dx.doi.org/10.1016/j.chom.2015.08.009
BIRC2/cIAP1 Is a Negative Regulator of HIV-1 Transcription and Can Be Targeted by Smac Mimetics to Promote Reversal of Viral Latency.
BIRC2/cIAP1はHIV-1転写の負の調節因子であり、cIAP1はSmacの模倣物mimeticsによって標的にしてウイルス潜伏の反転を促進することが可能である


Highlights
・Targeted RNAiスクリーニングにより初期ステージのHIV-1複製を阻害するホストタンパク質を同定する
・BIRC2/cIAP1はLTR依存的HIV-1転写の負の調節因子である
・Smac mimeticによるBIRC2枯渇は、NF-κBシグナル伝達を活性化してHIV-1潜伏を覆す
・Smac mimeticとHDAC阻害剤は、相乗作用によりHIV-1潜伏をin vitroとex vivoで覆す

Summary
ART療法はHIV-1複製を抑制するが、潜伏するウイルスリザーバーは残る

我々は対象を絞り込んで/targeted、RNA干渉スクリーニングを行うことで、ユビキチンリガーゼのBIRC2 (cIAP1) を同定した
BIRC2は非古典的NF-κB経路の抑制因子であり、LTR依存的HIV-1転写を強力に負へと調節する
(BIRC2はHIV-1を潜伏させる)

Smac mimeticsという小分子アンタゴニストによるBIRC2の低下はHIV-1転写を促進して、JLat潜伏モデルシステムの潜伏を覆した
ARTにより抑制された患者の休止状態CD4+T細胞を、HDAC阻害剤のpanobinostatとSmac mimeticsの両方で処理した結果、
潜伏リザーバーは相乗的に活性化された

これらのデータは、潜伏HIVリザーバーを消去するshock-and-kill戦略にとってSmac mimeticsが有用な薬剤であることを意味する
 

造血幹細胞移植後にAMLが再発する原因

2015-09-17 06:34:10 | 癌の治療法
Discovery offers hope for leukemia relapse post treatment

September 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910111911.htm

急性骨髄性白血病acute myeloid leukemia (AML) は骨髄が異常な白血球や赤血球、血小板を生じる病気である
強力な化学療法の繰り返しroundsが骨髄を傷害するため、多くの患者は回復のためにドナーから造血幹細胞を移植される
このドナー細胞は、移植片対白血病効果/graft-versus-leukemia (GVL) により残存する白血病細胞の排除も助ける

しかし、移植患者の中にはGVLが失敗して再発する者がいる
このような患者はそれ以上の化学療法に耐えられず、典型的には生存期間は5年未満である

患者がそうして再発に屈するsuccumbのを診てきたPenn State Milton S. Hershey Medical CenterのHong Zhengは、なぜ再発する者とそうでない者がいるのかを調べようと決めた


GVLに主に関与するのはT細胞である
T細胞はサイトカインを分泌して、直接、または間接的に白血病細胞を殺す
しかしやがて侵入者はT細胞を疲れ果てさせて『疲弊exhaustion』を引き起こす

Zhengたちは、AMLが再発した患者ではT細胞疲弊のマーカーであるPD-1 hi TIM-3+細胞レベルが著しく上昇することを発見した
このT細胞はサイトカインの産生が少なく、免疫系の戦士が元気にup to par働いていないという考えを裏付けるbolstering

この結果から研究者は抗PD-1抗体が使えるという考えに至ったのは割合すぐのことだった
Zhengは幹細胞移植後のAML再発患者にも抗PD-1抗体が使えるかを調べるための臨床試験を計画している


PD-1 hi TIM-3+細胞は、今よりも早く再発を診断するマーカーとしても使える可能性があると彼女は考えている
「臨床的再発を診断する2ヶ月前にこれらのマーカーが上昇することがわかった」
Zhengは言う

Zhengは現在、AMLへの幹細胞移植レシピエントにおいてT細胞の疲弊を引き起こす原因を調査中である
「仮説では慢性的な抗原刺激によりT細胞が疲弊するとされる
残存した白血病細胞が慢性的な刺激になり疲弊を引き起こすと我々は考えている」



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/500b68d6c8394c4861917a6a78510539
癌や慢性的なウイルス感染で「疲弊」したT細胞は、細胞表面のCEACAM1とTIM-3が特徴


膵臓癌とストロマの新しいサブタイプ

2015-09-16 06:47:31 | 
Pancreatic cancer subtypes discovered in largest gene expression analysis of the disease to-date

September 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150908104016.htm

膵管腺癌pancreatic ductal adenocarcinomaの分類


2011年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部のEric A. Collisson, MDによる研究で膵臓癌のサブタイプが同定されたが、
研究者はこれらの試みが周囲の大量のストロマによって混乱confoundedさせられると考えている
ストロマは正常な膵臓組織でも膵臓癌でも大量に混ざっているintermixed

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21460848
"Subtypes of pancreatic ductal adenocarcinoma and their differing responses to therapy."


この問題を解決するため、ノースカロライナ大学ラインバーガーのRichard Moffitt, PhDは、
ブラインド信号源分離/blind source separationという数学的アプローチを用いて癌組織とストロマを分離しようとした

彼らは次に、5つの研究所の組織サンプルでそれぞれのタイプの遺伝子発現を調べた
145の原発腫瘍と61の転移腫瘍、17の細胞系統、46の正常な膵臓サンプル、88の正常な膵臓外の癌化していない組織を分析した

分析の結果、『正常normal』『活性化activated』という膵臓ストロマの2つのサブタイプが発見された
『活性化』したサブタイプのストロマを持つ患者は予後が悪かった

「我々の研究はストロマについての矛盾する発見、つまりストロマは腫瘍の転移を促進するのか、それとも阻止するのかについての理解を助ける」
Yehは言う

分析ではさらに、膵臓癌腫瘍の2つのサブタイプが明らかになった
一つは『基底細胞様basal-like』で、悪い予後と関連する
このサブタイプの患者が手術の1年後に生きている割合は45%だが、もう一つのサブタイプの『古典的classical』では70%が生存する
また、basal-like tumorsはadjuvant therapyへの反応がより良い傾向があった

「もし腫瘍が悪性であるとわかっていれば、ただ腫瘍を取り除こうとするのではなく、最初にネオアジュバント化学療法neoadjuvant therapyで治療するのが重要かもしれない」
Yehは言う

※ネオアジュバント化学療法: 手術や放射線後のような主治療の後に行われるアジュバント療法に対して、主治療前の化学療法を意味する

「さらに、基底細胞様サブタイプは乳癌や膀胱癌の基底細胞型と非常に似ていて、それらは他の腫瘍サブタイプとは反応が異なる
我々はこれが膵臓癌でも真であるかどうかに非常に興味がある」


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3398
Virtual microdissection identifies distinct tumor- and stroma-specific subtypes of pancreatic ductal adenocarcinoma.
 

なぜ市中感染型MRSAは危険ではないのか

2015-09-15 06:05:56 | 免疫
Study points to a possible new pathway toward a vaccine against MRSA

Key finding of dueling bacterial toxins shows why hospital superbug is so deadly -- and its close relatives are not

September 9, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150909090623.htm

MRSAには、HA-MRSAとそれより毒性の低いCA-MRSAがある

※CA-MRSA/community-acquired-MRSA: 市中感染型MRSA


HA-MRSAとCA-MRSAはどちらも毒性の高いLUK-EDを分泌するが、
CA-MRSAはLUK-PVも分泌して、LUK-EDの作用と拮抗する


http://dx.doi.org/10.1038/ncomms9125
Counter inhibition between leukotoxins attenuates Staphylococcus aureus virulence.

白血球毒素leukotoxinsのLukSF-PVとLukEDは、お互いの細胞溶解活性と拮抗する

ヒトとマウスの赤血球に対するLukEDの溶血活性haemolytic activityのLukSF-PVによる阻害は、in vitroの細菌増殖を妨害した

LukSF-PVは、LukEDを阻害することにより、黄色ブドウ球菌S. aureusのビルレンスvirulenceとコロニー化colonizationに負の影響を与える
 

癌幹細胞をメトホルミンで窒息死させる方法

2015-09-14 06:00:44 | 癌の治療法
Pancreatic cancer stem cells could be 'suffocated' by an anti-diabetic drug

September 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910131931.htm

癌細胞は解糖系に頼るのが一般的だが、
ロンドン大学クイーン・メアリーのバーツがん研究所とマドリードのスペイン国立がん研究センター(CNIO)の研究者は
代謝に関してはすべての癌細胞が同様であるわけではないことを発見した

膵臓癌の癌幹細胞は、より効果的なタイプの代謝である酸化的リン酸化/OXPHOSを利用することが可能である
OXPHOSでは酸素とミトコンドリアを使うが、これは糖尿病の薬であるミトホルミンの標的にすることができる

しかし、膵臓の癌幹細胞の中には代謝をより柔軟に順応させてメトホルミンを回避できるものがあり、結果として癌は再発する
研究員たちはそのような抵抗性を妨げてすべての癌幹細胞にOXPHOSを使い続けるように強制する方法も発見した

研究者はこの新しい発見が幹細胞による酸素の使用を阻止して伝統的な治療の後の再発を防ぐための治療の開発に使えるだろうと考えており、臨床試験は来年後半に計画されている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.08.015
http://www.cell.com/cell-metabolism/abstract/S1550-4131(15)00406-4
MYC/PGC-1α Balance Determines the Metabolic Phenotype and Plasticity of Pancreatic Cancer Stem Cells.


Highlights
・膵臓癌幹細胞CSCsは、ミトコンドリアの酸化的リン酸化OXPHOSに頼り、代謝的可塑性metabolic plasticityの減少を示す
・ミトコンドリアの阻害は膵臓癌幹細胞の消去に有効である
・MYC/PGC-1αのバランスは、膵管腺癌細胞の代謝的表現型を制御する
・メトホルミンに抵抗する癌幹細胞においてMYCを標的にすることは抵抗性を妨げ、メトホルミンへの応答を回復する


Summary
抗糖尿病薬であるメトホルミンは膵臓癌幹細胞/CSCsを標的にするが、癌幹細胞から分化した子孫/非CSCsは標的にしない
これは異なる代謝表現型と関連がある

今回我々は、非CSCsが強く解糖系に依存する一方でCSCsは酸化的代謝(OXPHOS)に依存し、その代謝的可塑性が非常に限られていることを決定的に実証した
ゆえに、メトホルミンなどによるミトコンドリアの阻害は、エネルギー危機ならびにアポトーシスへと変換される

しかしながら、メトホルミンを投与している間に結局は抵抗性のCSCクローンが出現する
このCSCクローンは両者の中間の表現型である(解糖系/呼吸性)

機構的にはmechanistically、
CSCsがOXPHOSに依存するようになる重要な決定要素determinantとして、MYCの抑制とそれに続くPGC-1αの増大が確認された
これはメトホルミン抵抗性のCSCクローンでは無効化されるabolished

興味深いことに、
遺伝子的/薬理学的にMYCを阻害することにより、
ミトコンドリアにROSを誘導するメナジオン/menadioneに対する抵抗性は観察されず(メナジオンによるROSでアポトーシスしたということか)、
メトホルミンに対する抵抗性は妨げられるか覆された

ゆえに、この膵臓癌幹細胞の代謝の特異的な特徴は治療的な介入ができる方へ修正可能でありamendable、膵臓癌という致命的な癌に対してより効果的な治療を開発するための基礎を提供する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/b203a9eaf2fc7c1965c7e19a43e92e00
転移する癌はミトコンドリアを使う



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/aaeac9a22d739b53b1af889f3f37a814
癌幹細胞はミトコンドリアを使う



DNA編集が的を外れてリンパ腫が生じる

2015-09-13 06:49:26 | 
Blood cancers develop when immune cell DNA editing hits off-target spots

Team urges consideration of cutting-and-pasting errors when using enzymes for gene modification

September 10, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150910164235.htm

V(D)Jリコンビナーゼは、B細胞やT細胞のような免疫細胞の成熟の初期段階でのみはたらく

V(D)Jリコンビナーゼに関するDNA鎖の切断は、通常は、精密に調整された分子機構によって正確fidelityに修復されるが、
ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のRothのラボによる以前の研究では、
V(D)Jリコンビナーゼ (RAG1とRAG2から構成される) は
他の不適切な修復メカニズムへのアクセスを妨げることによりDNAの切断を正確な修復経路の下に送ることが示された

この監視プロセスshepherding processは、Rag2タンパク質C末端サブユニットが取り除かれると機能しない
監視プロセスの機能不全により発達中の免疫細胞のゲノムは不安定になり、
p53のような腫瘍抑制タンパク質が機能していないと悪性のリンパ腫がマウスにおいて生じる

Rag2タンパク質が短いtruncatedこれらのマウスで胸腺のリンパ腫をゲノムワイドに分析したところ、多くの的外れoff-targetなDNA再編成が欠失を引き起こしていた
以前の研究では、異なる間違い、つまり染色体の転座chromosome translocationがこれらのマウスのリンパ腫発症の根底にある可能性が示唆されていたが、
全ゲノムシーケンシングによって欠失deletionsがこれらのマウスリンパ腫の主なドライバであることが明らかになった

この再編成は、いくつかの既知の癌遺伝子ならびに腫瘍抑制遺伝子に影響を与えていた
(Notch1, Pten, Ikzf1, Jak1, Phlda1, Trat1, Agpat9)


また、クロマチンchromatinのゲノムワイド分析では、
Rag2タンパク質C末端サブユニットと染色体修飾との間の正常な相互作用が、酵素によるDNA標的認識の正確性fidelityの維持を助けることが示唆される

遺伝子発現はクロマチンchromatin、つまりDNAときつく結合しているヒストンタンパク質のメチル化やアセチル化のようなエピジェネティックな化学修飾によって調節される
あるヒストンの修飾はDNAを開き、別の修飾はクロマチンを閉じる
そうしてavailabilityを形成してDNAからタンパク質を発現させる


さらに、今回の研究で示唆されたV(D)Jリコンビナーゼによって間違って生じる的外れの消去ががんを引き起こす影響は、
ゲノムの特定箇所を特異的に修飾するための酵素(TALENS、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼのような)をデザインする際に考慮される必要があると研究者は言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2015.08.034
Off-Target V(D)J Recombination Drives Lymphomagenesis and Is Escalated by Loss of the Rag2 C Terminus.


References
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24753404
RAG2 mutants alter DSB repair pathway choice in vivo and illuminate the nature of 'alternative NHEJ'.
Roth DB.

>DNA double-stranded breaks (DSBs) can be repaired by several mechanisms, including classical NHEJ (c-NHEJ) and a poorly defined, error-prone process termed alternative NHEJ (a-NHEJ). How cells choose between these alternatives to join physiologic DSBs remains unknown.
DNA二本鎖切断はいくつかのメカニズムによって修復されうる
それには古典的NHEJ/c-NHEJと、オルタナティブNHEJ/a-NHEJが含まれるが、細胞がどのようにしてこれら2つを選ぶのかは不明だった

>Here, we show that deletion of RAG2's C-terminus allows a-NHEJ to repair RAG-mediated DSBs in developing lymphocytes from both c-NHEJ-proficient and c-NHEJ-deficient mice, demonstrating that the V(D)J recombinase influences repair pathway choice in vivo.
今回我々は、c-NHEJが熟達した/c-NHEJが欠損したマウスの両方において、RAG2のC末端の欠失が、RAGを介した二本鎖切断を、オルタナティブNHEJに修復させることを示す
このことはV(D)Jリコンビナーゼが修復経路の選択にin vivoで影響することを実証する



関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26234156
RAG Represents a Widespread Threat to the Lymphocyte Genome.




関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/1524a2901f5928ca17d0ccf185865a87
B細胞が急速に増殖するにつれてAIDの発現も増大するが、AIDは的外れoff-targetの損傷を引き起こして癌を引き起こす遺伝子をごちゃまぜにする



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/04/150420154925.htm
Hsp90はAID/activation-induced deaminaseを安定化させる
Hsp90が存在するとAIDは増加し、Hsp90が存在しないとAIDは減少する
AIDが多すぎると発癌性がある
eEF1aは、AIDが核に入らないように止める
 

変異したp53は癌の増殖を促進する

2015-09-12 06:19:08 | 
Mutated p53 tumor suppressor protein uses epigenetics to drive aggressive cancer growth

September 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902134929.htm

p53の機能獲得変異体/GOFは、重要なエピジェネティック酵素であるMLL1, MLL2, MOZに直接結合する

通常、MLL1はヒストンにメチル基を付け加えて、転写と細胞の増殖を促進する
ペンシルベニア大学の研究者は、変異したp53タンパク質がMLL1経路を利用tap intoしてゲノム全体のメチル化を変化させ、細胞の増殖を制御不能にすることを明らかにした
今回の発見はGOF変異p53がエピジェネティックな要素を直接調節するという初めての証拠となる


http://dx.doi.org/10.1038/nature15251
Gain-of-function p53 mutants co-opt chromatin pathways to drive cancer growth.

Abstract
p53をコードするTP53遺伝子は、ヒトの癌で最も頻繁に変異する遺伝子である
一般的なp53ミスセンス変異は、その腫瘍抑制機能を阻害して『機能を獲得gain-of-function/GOF』させて癌を促進する

今回我々は、p53のGOF変異体は染色体を調節する遺伝子chromatin regulatory genesの
 methyltransferases MLL1 (also known as KMT2A)、MLL2 (also known as KMT2D)
 acetyltransferase MOZ (also known as KAT6A or MYST3)
に結合して上方調節することを報告する
その結果、ゲノムワイドにヒストンメチル化とアセチル化が増加する

TCGAの分析では、p53 GOFの患者由来の腫瘍においてMLL1, MLL2, MOZの特定の上方調節が示されたが、
p53野生型/p53 nullの腫瘍では見られなかった


MLL1の遺伝子ノックダウンまたは薬理学的なMLL1 methyltransferase複合体の阻害により、癌細胞の増殖は著しく低下した



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/54d48391924d6eb528dd139546a5f981
>染色体を調節する遺伝子のMLL1、MLL2、MLL3、ARID1Aに変異があると予後が良い
 

メラノーマの4%は変異が通常の4倍

2015-09-12 06:13:14 | 
Rare melanoma carries unprecedented burden of mutations

September 7, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150907101450.htm

「我々のラボの研究は、メラノーマは一つではなく多くの異なるタイプがあることを示してきた」
UCSFで癌研究のGerson and Barbara Bass Bakar Distinguished Professorである首席著者Boris Bastian博士は言う

「我々は既にそれらの遺伝子プロファイルを発見し、グループに分類してそれぞれ個別に研究することが可能になっている
しかし、線維形成性黒色腫/desmoplastic melanoma/DMはこれまで手付かずのまま残されていた」


ダークブラウンに変色discolorationしていて急速に増殖する多くのメラノーマとは異なり、DMには色がなくunpigmented増殖も遅い
時々ちくちく痛むのを伴うきずあとのようなでっぱりbumpsという通常のメラノーマとは違う外観のために発見が遅れるか誤診され、肺に直接転移しやすい傾向があるため致死的になりうる


DMはメラノーマの4%を占めるが、
これまで十分な数の生検試料が得られなかったこともあって、遺伝子的な基礎は知られていない
少数の標本を基にした以前の研究では一般的なメラノーマと関連する変異を探したが成果はなかった

今回の研究でカリフォルニア大学サンディエゴ校、ニューヨークメモリアルスローンケタリングがんセンター、オーストラリアメラノーマ研究所から62人のDMサンプルを次世代シーケンサーにより配列決定したところ、
その非典型的な臨床的徴候atypical clinical presentationと同じく、DNAも非常に風変わりoddballであるようだ

サンプルからは他のメラノーマで見られる一般的な変異は検出されず、代わりに、他の癌としばしば関連する経路での変異が同定された
そして、その変異に対する標的治療は既にいくつか存在する


他のニつの発見は、どのようにしてDMが発症するのか、そしてどのようにして治療するのかについて興味深い説明を示唆する

一つ目の発見は、DM腫瘍が驚くほど多くの変異を持つということだった
ほとんどの充実性腫瘍solid tumorsは100万塩基対ごとに約2つの変異を持ち、一般的なメラノーマは約15の変異を持つ
しかしDM腫瘍は100万塩基対ごとに約62の変異を持つことが今回の研究でわかった

「我々がこれまで見てきた未治療でDNA修復系の異常がない腫瘍では、最も変異が多いものだった」
UCSFのHelen Diller Family Comprehensive Cancer Centerの一員であるBastianは言う


二つ目の重要な発見は、DM腫瘍で最も広く見られる変異の一つだった
それはNFKBIE遺伝子の発現を調節するプロモーター領域の変異であり、これまでどんな癌細胞で見られなかったものだ
NFKBIEは免疫応答の抑制に重要な役割を演じる遺伝子である

※NFKBIE: NF-Kappa-B Inhibitor Epsilon

「この遺伝子が癌で現れたpop upのは今回が初めてだ」
Bastianは言う

「しかも、既知の変異は、タンパク質をコードするエキソン内ではなくゲノムの調節領域という『ダークマター』に存在することはめったにない
このような調節性の変異は最も包括的なゲノム分析を除いては日常的に見逃されている」


変異の多い癌は制御を失って増殖する前に循環免疫細胞によって迅速に検出されて破壊されると多くの研究者は考えている
しかし、NFKBIEプロモーターの変異は、他の多くの変異が蓄積するのに十分なだけ長く免疫監視網のレーダーをかいくぐることを可能にする
それが最終的に細胞を癌の状態へと駆り立てるのだとBastianは推測している


このDM増殖メカニズムはまだ証明されてはいないものの、
免疫チェックポイント阻害療法がDMに対して特に有効なファーストラインになりうることを示唆する

Bastianは言う
「変異を多く持つ他のメラノーマは免疫チェックポイント阻害療法に感受性が高い傾向がある
『成功』した腫瘍はどうにかして免疫応答を抑圧するが、
この技術によりその制に干渉して免疫系を解放し、腫瘍をほとんど完全に縮小させることができるだろう」


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26343386
Exome sequencing of desmoplastic melanoma identifies recurrent NFKBIE promoter mutations and diverse activating mutations in the MAPK pathway.

>Newly identified alterations included recurrent promoter mutations of NFKBIE, encoding NF-κB inhibitor ɛ (IκBɛ), in 14.5% of samples.

14.5%にNFKBIEプロモーター変異

>Common oncogenic mutations in melanomas, in particular in BRAF (encoding p.Val600Glu) and NRAS (encoding p.Gln61Lys or p.Gln61Arg), were absent.

BRAF V600Eのような変異は見られなかった

>Instead, other genetic alterations known to activate the MAPK and PI3K signaling cascades were identified in 73% of samples,

代わりに、MAPKならびにPI3Kシグナル伝達カスケードを活性化させることが知られている変化が73%で確認された

>affecting NF1, CBL, ERBB2, MAP2K1, MAP3K1, BRAF, EGFR, PTPN11, MET, RAC1, SOS2, NRAS and PIK3CA, some of which are candidates for targeted therapies.


腸内細菌の増殖速度を計測する

2015-09-11 06:36:54 | 腸内細菌
How does your microbiome grow?

Reproduction rates of bacteria in gut may be a good indicator of health or disease

September 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902093256.htm

(極端に食事を変化させた被験者で細菌の増殖速度を計算した
食事法の変化により細菌の増殖速度ダイナミクスに全体的な変化が観察された
 上段: 平均
 下段: 特定の種類
 赤の方が増殖が速い)

腸内細菌が健康に与える影響について、新たな視点からのアプローチをワイズマン研究所の科学者がScienceで報告している
それは、様々な細菌の増殖速度を評価する方法である
この方法は既に細菌の増殖速度と2型糖尿病や炎症性腸疾患との興味深い関連を明らかにしている

このコンピュータによる新たな分析手法は、単一のサンプルによる静的な『スナップショット』から増殖のようなダイナミックなプロセスを明らかにするものであり、ゆえに診断法と新しい研究法の両方と関連するだろう


コンピューターサイエンス・応用数学部のEran Segal教授のラボは免疫学部のEran Elinav博士のラボと協力して、まず現在多くの微生物研究で使われている次世代ゲノムシーケンシング技術advanced genomic sequencing techniquesから研究を始めた
これはすべての細菌DNAを配列決定/sequencingして、短い配列から細菌の種類とその相対量relative abundanceを描き出す

しかしワイズマン研究所の研究チームは、このシーケンシング技術が持つもう一つの『情報』を明らかにした

「サンプルの細菌は、どの細菌が最善を尽くしているかを明らかにする:
つまり、増殖できるようにゲノムを複製しているかどうかである」
Segalは言う

「そのため、細菌のほとんどは1つ以上のゲノムを持つ
例えば、ゲノム1つともう半分だったり、ゲノム1つと4分の3を持つ」

ほとんどの細菌株は、前もってプログラムされた『開始』配列と『終了』配列を持っている
そのため、研究チームはサンプルで最も優勢prevalentな短い配列として『開始』箇所を同定することが可能だった
最も優勢prevalentではない、ゲノムのもう片方の末端は、DNAが最後に複製される場所である
研究者は、『開始DNA』と『終了DNA』の相対量relative amountsが個々の細菌株の増殖速度に変換できることを発見した


研究グループはこの公式化formulationをまずコントロールと観察がしやすい単一の細菌株で実験し、
次に複数の動物モデル系で行い、最後にヒトの微生物叢のDNAシーケンシングでテストした
彼らの方法は予想以上にうまくいった
推定される細菌の増殖速度は、観察された増殖率とほとんど同一であると判明した

「我々は今や微生物叢のダイナミクスがどれほど疾患への傾向と関連するのかについて述べることができる
微生物の増殖速度は他のどんな分析法でも明らかにできなかった我々の健康についての事柄を明らかにする」

例えば、ヒトの微生物叢のデータの検査では特定の細菌の増殖速度の変化が2型糖尿病と独特のuniquely関連があることを明らかにした
別の変化は炎症性腸疾患と関連があった

これらの関連は将来、疾患の検出や病原体感染の早期診断、プロバイオティクスや抗生物質の効果を判定するためのツールとして使える可能性がある
さらに、科学者たちはこの微生物叢の新たな理解が我々とその健康の内にある複雑でダイナミックな生態系ecosystemとの関連についてのさらなる研究の促進につながると考えている


http://dx.doi.org/10.1126/science.aac4812
Growth dynamics of gut microbiota in health and disease inferred from single metagenomic samples.

Abstract
今回我々は、様々な細菌メタゲノムシーケンシング読み取り深度のパターンthe pattern of metagenomic sequencing read coverage for different microbial genomesには、単一の溝troughと単一の頂点peakが含まれていることを示す
後者は細菌の『複製起点origin of replication』の配列と一致する

さらに、シーケンシング範囲での頂点と溝との間の比率は、種speciesの増殖速度を定量化する方法を提供する

いくつかの細菌の種類に関しては、相対量relative abundancesではなく、頂点と溝の読み取り深度比率peak-to-trough coverage ratiosが、
炎症性腸疾患ならびに2型糖尿病の徴候/症状発現manifestationと相関する

※coverage: 「次世代シーケンサー関係の英語の文献や話題を追っていると,よくcoverageという単語が出てきます.coverageはどう和訳するべきなのでしょうか?


Editor's Summary
シーケンシング読み深度のパターンが細菌の増殖速度を反映するのは、細菌のゲノムが円形circularであり、複製起点が一つだからである
 


微生物と遺伝と食事の相互作用が肥満につながる

2015-09-11 06:27:18 | 腸内細菌
Genetic factors drive roles of gut bacteria in diabetes, obesity

Study examines how bacterial, mammalian genomics interact to boost insulin resistance, other metabolic disorders

September 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150903131728.htm

消化管内の無数の細菌はヒトの代謝に大きく関与していて、それらは2型糖尿病や肥満、メタボリック症候群のリスクと関連がある
糖尿病や肥満のヒトと動物モデルはそうでないものとは異なる腸内細菌を持ち、科学者が微生物を肥満のヒトや動物から無菌動物に移植するとレシピエントは肥満や糖尿病にかかりやすくなる

Cell Metabolismで報告されたジョスリンのマウスを使った研究は、
宿主の遺伝子がどのように微生物の遺伝子と相互作用してそのような病態を作り出すのかを明らかにしたと
ハーバード・ジョスリンのKahn博士は言う

研究の結果、
遺伝的に肥満になりやすいマウスの系統は、
単に腸内微生物を別のマウスの環境と共有することによりその腸内微生物集団が変化するだけで
過剰な体重増に対して抵抗するようになるという

また、ジョスリンの科学者は
糖尿病や肥満、それと関連するメタボリック症候群に正または負の影響を与えるように思われる特定の細菌株を同定することに成功した
そしてそれは部分的には、ホストの動物の遺伝子構成に依存するという


ジョスリンの科学者は、3つの一般的なマウスモデル
 肥満と糖尿病の両方になりやすいマウス
 肥満になりやすいが糖尿病にはなりにくいマウス
 肥満にも糖尿病にもなりにくいマウス
は、腸内の微生物が初めから非常に異なることを発見した

マウスに高脂肪食を与えると、それらのマウスのすべてで腸内の微生物集団が劇的な変化を示す
やがてこれらの微生物集団は、同じ動物施設facilityで維持されているそれらのマウスとその子孫のすべてで似たようなものになる

ジョスリンの研究者は
3つのマウスモデルの世代を新しく育て、
それらのマウスから採取した微生物を無菌マウスに与えて
ドナーと同じように肥満や糖尿病になりやすいかどうかをテストした

微生物を移植したあと、糖尿病になりにくいマウスの中には、体重が増えて血糖レベルが上昇するものがあった
しかし別のマウスでは
「代謝的に悪い細菌でさえ、問題を引き起こさなかった」
とKahn博士は言う
「それらが問題になったのは、その細菌が増殖して影響を引き起こすような感受性をマウスが遺伝的に持つ場合だけだった」


研究で使われたDNAシーケンサーは3000種の細菌をマウスの腸内に同定し、その中でも約300種が比較的多かった
シーケンシングにより特定の細菌株の集団が実験の状況下でどれぐらい変化するかを定量化することが可能になり、
それにより研究者はマウスの障害との関連を探すことが可能になった

この分野の実験では概して個々の細菌株についてではなく細菌グループの役割を分析することが多い
しかしジョスリンの研究者は、肥満や高血糖のような状況と強く相関する特定の細菌株に焦点を絞った
それらの状態を引き起こすのを促進することが示唆されるような細菌株についてである


ジョスリンのチームは、無菌マウスに個々の細菌株のいくつか与えてインスリン感受性や代謝性パラメーターの変化を促進するかどうかを調べようと計画している
また、マウスに抗生物質を与えるなどして微生物集団を変化させた結果を調査したいとしている


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.07.007
Interactions between Gut Microbiota, Host Genetics and Diet Modulate the Predisposition to Obesity and Metabolic Syndrome.
腸内微生物、ホストの遺伝的特徴、そして食事は、肥満と代謝性症候群への素因を調整する


Highlights
・ホストの遺伝的特徴は、高脂肪食に応じた腸内微生物の変化を決定する
・環境的な履歴historyは、腸内微生物ならびに食事による変化への応答に対して強い影響を与える
・Specific bacterial taxa correlate with metabolic phenotypes within and across strains
・Diet, host genetics, and gut microbiota interact in development of metabolic syndrome

Summary
3つの同系交配系inbred strainsのマウス

※近交系: 近親交配を繰り返して作り上げた動物系統


肥満と糖尿病になりやすいマウス
obesity/diabetes-prone C57Bl/6J mice

肥満にも糖尿病にもなりにくいマウス@ジャクソン研究所
obesity/diabetes-resistant 129S1/SvImJ from Jackson Laboratory

肥満にはなりやすいが糖尿病にはなりにくいマウス@タコニック
obesity-prone but diabetes-resistant 129S6/SvEvTac from Taconic

そしてこれらの系統から新たに一般的な環境で作られた3つの派生系統derivative lines


これら全ての系統ならびに環境的に正常化された派生系統の代謝的パラメーターならびに腸内微生物の分析により、
腸内微生物、食事、育成場所、代謝的表現型の強い相互作用が明らかになった

系統依存的な相関ならびに系統に依存しない相関が特定の微生物と表現型との間に見られ、
それらのいくつかは糞便移植により無菌マウスレシピエントに移行することが可能だった

微生物の環境再プログラムにより、肥満になりやすい129S6/SvEvTacは、肥満に抵抗性になった


ゆえに、肥満/代謝性症候群の発症は、腸内微生物とホスト遺伝的特徴と食事の相互作用の結果である
許容的な(細菌が育つことが許される)遺伝的背景permissive genetic backgroundsならびに微生物の環境的再プログラムは、代謝性症候群の発症を緩和しうる



関連サイト
http://www.nutritio.net/linkdediet/news/FMPro?-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=50877&-lay=lay&-Find
>魚油の利点は腸内細菌が媒介している?



癌細胞を飢えさせて殺す方法

2015-09-10 06:55:21 | 癌の治療法
Scientists propose attacking bioenergetic metabolism to improve anti-cancer therapies

New breakthrough could improve the effectiveness of taxol, one of the most powerful anti-cancer agents used in clinical treatments

August 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150831123206.htm


(細胞分裂の画像。青は染色体、赤がミトコンドリア。黄色は分裂プロセス中にダメージを受けたミトコンドリア。このダメージにより細胞はエネルギー源としてグルコースに依存するようになる)

癌細胞はグルコースに依存するが、それを利用した治療的な戦略はこれまで存在しなかった

スペインの国立がん研究センターによる新たな研究は、
解糖系の阻害が特に癌細胞の分裂に障害を与え、それが特にタキソールのような化学療法と組み合わせるとさらに有効になりうることを証明した


癌細胞の典型的な特徴は、制御不能かつほぼ無制限の増殖能であり、現在はタキソールのような癌細胞の有糸分裂を妨害する治療薬が存在する

研究者たちが取り上げる議題の一つは、癌細胞が分裂速度を維持するために必要なエネルギーをどのようにして得るかということである
著者たちは分子生物学・生物化学的な技術を用いて、AMPKとPFKFB3というタンパク質がどのようにして有糸分裂中に著しく活性化して細胞の代謝を解糖系へと誘導するのかを、ワールブルクの理論に沿って説明する

「AMPKとPFKFB3が細胞分裂に応じたミトコンドリアへのダメージを検出すると、細胞はエネルギー源をグルコースに依存するようになる」
スペインCNIOの研究者であるElena Doménechは説明する

※PFKFB3/ 6-Phosphofructo-2-Kinase/Fructose-2,6-Biphosphatase 3
http://www.genecards.org/cgi-bin/carddisp.pl?gene=PFKFB3


研究者は、タキソールを投与して有糸分裂が阻害された癌細胞のグルコースの要求性requirementsも分析した
「タキソールのような有糸分裂の阻害剤により、癌細胞は通常よりもグルコースを必要とするようになる」

タキソールにより癌細胞がグルコースをさらに必要とするようになる事実に基づくと、
解糖系の阻害は有糸分裂阻害剤の抗癌効果を促進するはずである

ある意味、それは癌細胞にグルコースを必要とするように強制して、同時に、グルコースを使うことを妨害するということである
それにより癌細胞は飢えで死ぬ


論文の著者たちは乳癌の細胞モデルとマウスモデルを使い、実際に
タキソールのような有糸分裂の阻害剤は
PFKFB3の阻害剤でグルコースの代謝能を抑制した時に
より効果的であることを発見した

「これまでPFKFB3阻害の治療的価値が議論されてきたが、我々の研究はそれが有糸分裂阻害剤と組み合わせることで極めて有効になりうることを示唆する」
Malumbresは説明する


http://dx.doi.org/10.1038/ncb3231
AMPK and PFKFB3 mediate glycolysis and survival in response to mitophagy during mitotic arrest.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/dfcb999fdeae70ab72096799bc592d75
>ミトコンドリアのシトクロムcオキシダーゼのサブユニットを1つだけ阻害するとワールブルク効果が見られた
>シトクロムcオキシダーゼの妨害はミトコンドリアが細胞核へ「SOS」に似たストレスシグナルを出すように活性化させ、細胞を間違った方向へ変化させる
 


プロテアソーム阻害剤が効かない理由

2015-09-10 06:36:37 | 癌の治療法
Cellular recycling complexes may hold key to chemotherapy resistance

September 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902082930.htm

26Sプロテアソームは、触媒コア複合体の20Sと、それに両側からフタをする調節複合体の19Sから構成される

19Sは分解されるようタグ付けされたタンパク質を認識してフォールディングをほどき、20S複合体へと送る
そこでタンパク質はペプチドに分解されて新しいタンパク質にリサイクルされる


タンパク質の分解とその調節は、増殖するためにタンパク質を作り続ける癌細胞の燃料の供給源として特に重要である
化学療法薬のボルテゾミブbortezomibはこの依存を利用してプロテアソームを標的とする

ボルテゾミブはmyelomaとmantle cell lymphomaのような血液がんでは非常に有効である(少なくとも最初は)
しかし、ほとんどの癌はプロテアソーム阻害剤への抵抗性を初めから持つ


この抵抗性の原因を調べるためホワイトヘッド研究所のSantagataたちは遺伝子を分析し、
それが19S複合体の発現の減少によって生じることを明らかにした
この比率変更により20S複合体のみで構成されるもう一つのプロテアソームが作られる

「我々はこれを適応のためのトレードオフメカニズムfitness tradeoff mechanismかもしれないと考えている
腫瘍の細胞の増殖はわずかに遅くなるが、プロテアソーム阻害剤に拮抗できるようになる」
eLifeで発表された論文の首席著者のTsvetkovは言う

Tsvetkovによると、
正常な細胞もこの仕組みを使ってタンパク質凝集のような自然に生じるタンパク質ストレスに対処しているという
19Sサブユニットの発現レベル低下はおそらく、マイクロRNAなどの様々なエピジェネティックなメカニズムによる

「このメカニズムにより、正常な細胞と悪性腫瘍細胞の両方が感受性のある状態から抵抗性の状態へとシフトすると我々は提案する
これにはDNAの変異のような永続的な変更は必要ない」
Santagataは言う

「抵抗性の仕組みがわかったので、抵抗性の細胞を殺す方法を見つけたいと考えている」
Tsvetkovは付け加える


http://dx.doi.org/10.7554/eLife.08467
Compromising the 19S proteasome complex protects cells from reduced flux through the proteasome.

19Sの大幅な減少は細胞毒性を生じるが、適度modestな減少は細胞を阻害剤から保護する
 


肥満細胞は悪党なだけではない

2015-09-10 06:29:31 | 免疫
A possible cure for allergies?

September 8, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150908094114.htm


(スイス、日本、アメリカの科学者たちは、マスト細胞がアレルギー反応を引き起こす『悪党』であるだけではなく、『良い面』も持っていることを明らかにした
マスト細胞は制御性T細胞を作り出してアレルギー反応を抑制する)

マスト細胞はIL-2を分泌して制御性T細胞(Treg)を誘導する
Tregは気道でIL-10を分泌してアレルギー性炎症プロセスの抑制を誘導する

Tregは過剰な免疫応答とその結果として起きる炎症を鎮圧できることが以前から知られていたが、
Tregを治療として使うには大量に必要であり実現するのは容易ではなかった
血液中にTregは少なく、試験管でも作成するのは難しい

それがマスト細胞を使うことで、簡単にそして大量に作ることが可能だったという

「我々が発見したメカニズムは、アレルギーを制御する新たな方法の基盤となりうるだろう」
慶應義塾大学の森田英明は言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.immuni.2015.06.021
An Interleukin-33-Mast Cell-Interleukin-2 Axis Suppresses Papain-Induced Allergic Inflammation by Promoting Regulatory T Cell Numbers




関連サイト
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/research/papers/post_64.php
>今回の研究成果は、マスト細胞はIL-33で活性化されると制御性T細胞だけを選択的に増やし、その結果気管支喘息を抑制する作用があることを初めて明らかにしました。


関連サイト
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25043027
>The alarmin IL-33 promotes regulatory T-cell function in the intestine.
(アラーミンのIL-33は腸において制御性T細胞の機能を促進する)