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興味のある科学/医学ニュースを適当に翻訳していきます。

癌細胞をオートファジー阻害に脆弱にする

2015-09-09 06:29:36 | 癌の治療法
Inducing metabolic catastrophe in cancer cells

August 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150831101507.htm

癌細胞は腫瘍内部のようなストレスの多い環境でもオートファジーによって生き残るが、このプロセスを阻害しても癌細胞は死なない
科学者たちは癌細胞がオートファジー阻害に弱くなるような方法を探してきた


ボストン・ハーバードメディカルスクールの研究者はオートファジー阻害剤のspautin-1とそれを改良した阻害剤に抵抗性の卵巣癌細胞の系統を使った研究で
8200以上の化合物をスクリーニングすることで
quizartinibが癌細胞の脆弱性を高める効果が最も高いことを発見した

quizartinibは、FLT3を阻害する
FLT3は造血幹細胞の正常な発達に重要であり、急性骨髄性白血病/AMLの標的であることが確認されている
quizartinibは現在臨床試験中であるが、それ以上の有用性valueがあるかはまだ十分調べられていない


実験の結果、quizartinibとspautin-1改良版は様々な系統の腫瘍細胞を殺したが、通常の細胞には無害だったunscathed

quizartinibのみを投与すると癌細胞の重要な代謝経路である解糖系が阻害され、さらにマクロオートファジーmacroautophagyを活性化した
quizartinibとspautin-1改良版を両方とも投与すると、マクロオートファジーを開始することはできなかったが、
シャペロン介在性オートファジー/chaperone-mediated autophagy/CMAのスイッチを入れた
細胞の大部分を消化するマクロオートファジーとは異なり、CMAは特定の分子を選択的に消去する

CMAの標的の一つはヘキソキナーゼ2/Hexokinase2 (HK2) という酵素である
HK2はグルコース代謝で重要で、癌細胞ではしばしば過剰発現している
FLT3阻害剤quizartinibとオートファジー阻害剤spautin-1改良版の組み合わせは、HK2を抑制することで癌細胞が取り込んだグルコースの代謝を妨害し、溜め込んだ栄養素を動員mobilizeできないようにして癌細胞を殺す

今回の研究は、FLT3阻害剤とオートファジー阻害剤の組み合わせが癌治療の新しい方法となりうるエビデンスを提供する


http://dx.doi.org/10.1083/jcb.201503044
Degradation of HK2 by chaperone-mediated autophagy promotes metabolic catastrophe and cell death.

受容体型チロシンキナーゼ/RTKのFLT3は
AMLではない癌細胞をオートファジー阻害剤に対して脆弱にして、
シャペロン介在性オートファジー/CMAの過剰な活性化につながる

我々の研究データはFLT3が重要な細胞栄養状態のセンサーであることを実証し、
代謝の調節ならびに癌細胞死におけるCMAの役割と分子メカニズムを明らかにする

重要な事にHK2はCMAの基質であり、CMAによるHK2の分解はグルコースの有用性availabilityによって調節される



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/06/150610143628.htm
FLT3阻害剤のsorafenibとヘッジホッグ経路阻害剤のIPI-926の組み合わせは、マウスで血液と骨髄で急性骨髄性白血病/AML細胞の割合を半分まで減らした
FLT3は受容体型チロシンキナーゼで、骨髄の幹細胞の増殖やB細胞の分化を促進する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/88293d6c5e379025e306d9b16010f6d3
オートファジー阻害剤とmTOR阻害剤を組み合わせると、それぞれ単独よりも2倍から3倍多く肺癌細胞を殺す
 

癌細胞のスプライセオソームを阻害する

2015-09-09 06:20:18 | 癌の治療法
Disruption of a crucial cellular machine may kill the engine of deadly cancers

September 2, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150902134935.htm

「悪性腫瘍の約30%は、癌遺伝子のMYCがドライバである」
ベイラー医科大学のThomas F. Westbrook博士は言う

「我々はMYCによって駆動される癌細胞を殺す新しい方法を発見した
それは癌細胞の中にあるスプライセオソームという分子機構を阻害することによる」

WestbrookたちはMYCによる癌がスプライセオソームに生存を依存することを発見した


「スプライセオソームは多くのタンパク質から構成される複雑な機構である」
筆頭著者のTiffany Hsuは言う

「この機構は、不要な段階を消去することによって癌細胞が取扱説明書を『読む』のを助ける
スプライセオソームを阻害すると、癌細胞はもはや増殖して生存するための説明書を理解することができなくなる」


MYCは癌細胞を配線し直してrewires、必要な建築材料を作るような多くの物事を変化させる
しかしこの再配線は新たなストレスをもたらし、癌細胞に弱点を作る
「このストレスを悪化させる方法を知ることができれば、正常な組織を傷つけることなく癌細胞だけを殺すことができるだろう」
Westbrookは言う

スプライセオソーム阻害剤はすべての癌に対する答えとなる可能性は低いだろうが、
いくつかの悪性腫瘍、たとえばトリプルネガティブ乳癌のような特に悪性の癌に対しては有望な候補である


http://dx.doi.org/10.1038/nature14985
The spliceosome is a therapeutic vulnerability in MYC-driven cancer.

BUD31はスプライセオソームコアの組み立てならびに触媒活性に必要な構成要素である
BUD31と関連のあるスプライセオソームコアの要素(SF3B1とU2AF1のような)も、発癌性のMYCに耐性を持たせるtolerateためには必要である


特に、MYCの過剰活性化はmRNA合成の前駆体の総量を増加させる
これはプレmRNAを処理するスプライセオソームコアへの負担の増大を示唆する

MYCが過剰に活性化した細胞におけるスプライセオソームの部分的な阻害により、
全体的にイントロンが残存しglobal intron retention、プレmRNAの成熟に広範囲の障害が生じ、多くの必須細胞プロセスが調節を失った



関連サイト
http://cancerbiology.blogspot.jp/2013/06/cell-eric-lander_23.html
>スプライス因子群は以前は抗癌剤の対象にはなっていなかったが、いまや評価は変わった。スプライス因子に対する小分子や自然薬剤が報告されている。



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/05/150514132750.htm
RNA splicing machinery offers new drug target

転写因子MYCは、スプライセオソームspliceosome複合体を適切に成熟させるPRMT5のスイッチを入れて、スプライシングを最適化する
MYCがドライバの癌ではスプライシングを標的にできる可能性がある

http://dx.doi.org/10.1038/nature14351
MYC regulates the core pre-mRNA splicing machinery as an essential step in lymphomagenesis.

http://dx.doi.org/10.1038/nature13537
Selective transcriptional regulation by Myc in cellular growth control and lymphomagenesis.


「私を食べて」シグナルは樹状細胞の食欲を刺激する

2015-09-08 06:40:38 | 癌の治療法
'Eat me' signal whets appetites for tumor-devouring dendritic cells

August 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150831120316.htm

年老いた細胞の多くと癌細胞のほとんどは、細胞表面にCD47を発現する
CD47の存在はこれらの細胞を保護し、マクロファージが貪食しないようにする

スタンフォードの研究者たちは以前、CD47に対する抗体を使ってこの「私を食べないで」というシグナルを無効化し、
それによりマクロファージが癌細胞を破壊できるようになることを発見した

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22451913
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22451919
※「CD47はマクロファージと樹状細胞上のSIRPαのリガンド」とある


シカゴ大学メディカルセンターのYang-Xin Fuたちは今回のNature Medicineの論文で、
以前の研究はヒトの腫瘍をマウスに移植したもので行われたものであり、マウスは著しい免疫不全でもあったことを指摘した

彼らは、より適したモデルは腫瘍をマウスから遺伝的に同一のホストマウスへと移植し、それは完全に機能する免疫系を持つべきだと主張する
その方がより有益でありinformative、臨床的にみて適切だろうという

研究者たちはそのようなマウスを使って彼らのアプローチをテストし、
CD47の阻害による治療的効果の大部分bulkがマクロファージではなく樹状細胞に依存することを発見した
樹状細胞はインターフェロンの分泌を引き起こして免疫系を活性化し、CD8+T細胞をプライミングprimingする
研究者は抗CD47抗体による腫瘍の排除には自然免疫応答と適応免疫応答の両方が必要であると記している


より真に迫った/life-likeモデルを使ってシカゴ大学の研究者は次のことを示した

・樹状細胞はマクロファージよりキラーT細胞のプライミング能が強い
・樹状細胞は免疫を刺激するインターフェロンI型の分泌を引き起こして適応免疫を加速する
・STING (stimulator of interferon genes) 経路は樹状細胞によって活性化されるが、この経路は抗CD47抗体療法による抗腫瘍効果には『絶対に必須』である
・抗CD47の投与前に化学療法を単一用量で投与すると、抗CD47抗体の後に化学療法を投与するよりも、効果があるようである(A single treatment with chemotherapy before, rather than after, CD47 treatment appeared to be most effective.)

※論文では、抗CD47抗体を12日目と17日目に投与し、化学療法をその1日前の11日目に単一用量single dose投与するか、もしくは15日目・18日目・21日目の三回three doses投与している


http://dx.doi.org/10.1038/nm.3931
CD47 blockade triggers T cell–mediated destruction of immunogenic tumors.
CD47の阻害はT細胞を介した免疫原性腫瘍の破壊を引き起こす



関連サイト
http://amrit-lab.com/c/AM429.html
>ガン細胞の「私を食べないで」シグナルCD47をマスクする新しい治療方法開発
>マウスの体内に人間の膀胱ガンを移植して行ったモデル実験では強いガン抑制効果が見られました。
 


アスピリンは免疫療法のスーパーチャージャー

2015-09-08 06:39:09 | 癌の治療法
Aspirin could hold key to supercharged cancer immunotherapy

September 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150903131416.htm

フランシスクリック研究所のCaetano Reis e Sousa教授は言う

「がんの中にはPGE2を作ることで免疫系を回避するものがあるというエビデンスが増えつつある
癌細胞のPGE2を作る能力を奪い去ることができれば、この保護的バリアを効果的に取り除いて免疫系の力を完全に解放するだろう」

「免疫療法と同時にアスピリンのようなCOX阻害剤を与えることは、治療の効果に大きな違いを生じる可能性がある」


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.08.015
Cyclooxygenase-dependent tumor growth through evasion of immunity.

(PGE2→IL-6,CXCL1,G-CSF)

Highlights
•腫瘍のシクロオキシゲナーゼ/COXはプロスタグランジンE2/PGE2を誘導して、骨髄細胞の機能を破壊するsubvert
•COX阻害剤は、チェックポイント阻害療法と相乗作用を示す


Summary
メラノーマや癌細胞が抗腫瘍免疫を回避するメカニズムは完全には理解されないままである

今回我々は、
正常な免疫反応能を持つ/免疫応答性のimmunocompetentホストにおいて
BrafV600E変異マウスメラノーマ細胞により形成される腫瘍の増殖は
PGE2の産生を必要とすることを示す

PGE2は(T細胞による適応)免疫を抑制して、腫瘍促進性の炎症を刺激する

BrafV600Eマウスメラノーマモデル、NrasG12Dメラノーマモデル、乳癌細胞と結腸癌細胞において
COX/プロスタグランジンE合成酵素を遺伝子的に取り除くと
免疫による制御に脆弱になり
古典的な抗癌免疫経路への炎症性プロファイルの移行を引き起こす

前臨床データはCOX阻害が抗PD-1阻害と相乗作用を示すことを実証する



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/cfc18ae69a82170f04021e53350c2efa
PGE2による炎症が結腸癌細胞を転移させる
 

乳癌幹細胞は正常な幹細胞からは生じない

2015-09-07 06:02:04 | 
Variations in cell programs control cancer and normal stem cells

September 3, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150903121944.htm

(乳腺を再構成する際に乳腺幹細胞と乳癌幹細胞が利用する『上皮間葉転換(EMT)を誘導する転写因子』は異なっていて、
しかも両者は異なる細胞状態で存在する
正常な乳腺幹細胞は、幹細胞性stemnessを維持するためにSlugというEMT誘導転写因子に依存し、細胞の状態は上皮細胞でもあり間葉系細胞でもある
対照的に乳癌幹細胞は、原腸形成gastrulationのEMT誘導転写因子であるSnailを発現し、ずっと間葉系に近い状態である)


ホワイトヘッド研究所によると、乳癌幹細胞と正常な幹細胞は異なるタイプの細胞から生じる
それらが利用するtap into幹細胞プログラムは、異なってはいるが関連するものであるという


腫瘍の源となる細胞tumor-initiating cellsは、転移の種を体中にまいて再発を引き起こす
この源の細胞が、幹細胞、特に癌幹細胞と言われるものであるかどうかが議論されてきた
この疑問は純粋に意味論である
つまり、それら細胞のアイデンティティと細胞内部の活動についての科学者の理解を表している

「我々の研究は、正常な幹細胞プログラムと癌幹細胞プログラムとの間の関係を初めて確定した
乳腺の状況に限ってではあるが」
ホワイトヘッド研究所の設立関係者Founding MemberであるRobert Weinbergは言う

「少なくとも乳腺においてはこの関係は十分確実なものであり、乳腺は他の上皮組織にとって非常に良いモデルであると思われる
腫瘍の源となる細胞は実際に癌幹細胞であるが、癌幹細胞は正常な幹細胞からは生じない」
Weinbergラボの発見はNatureで発表される


ラボの以前の研究で、
 癌幹細胞は上皮間葉転換/EMTを経た後に現れるものであり、
 EMTは新しい腫瘍の種をまくために必要な運動性motilityと柔軟性flexibilityを細胞に与える
ことが証明されている
さらに、EMTは細胞に通常の化学療法に抵抗する能力をもたらす


筆頭著者のXin Yeはマウスモデルを使って、正常な乳腺と癌の乳腺の中でどの細胞が、
互いに関連するマスター調節因子のSnailとSlugを発現するのかを示した
どちらも幹細胞の性質を乳腺細胞にもたらすが、
Slugは、その(乳腺の)部分に関しては、悪性度の高い癌と関連する間葉系細胞的な性質を特に強力に誘導する


Yeは、乳腺組織の異なる層で異なるタイプの細胞が発現し、これらのマスター調節因子によって影響されることを確定した

Slugは乳房組織において乳腺の再構築活性を調節するが、
Slugは乳管mammary ductの基底層basal layerで見られる正常な幹細胞において高レベルで発現している

Snailはショウジョウバエの胚発達の状況で初めて発見された因子である
Snailは乳管の管腔層luminal layerの腫瘍の源となる細胞で発現されている
Snailは悪性の性質を癌細胞に与えるが、
Slugは正常な発現レベルの時はそのようなことはできない


「Snailが陽性の癌幹細胞は、正常な幹細胞を内部に持つ細胞とは異なる細胞集団において生じる」
Weinbergは言う
彼はMITの生物学の教授であり、MIT/ルートヴィヒ分子腫瘍学センターのディレクターでもある

「正常な幹細胞は乳管の層の一つに存在するが、癌幹細胞は別の層から生じる
それが意味するのは、癌幹細胞は正常な幹細胞から生じるのではないということだ
これはずっと論議の焦点だったが、我々はついに証拠を得たのだ!」


この癌幹細胞の源についての根本的な洞察insight、そして正常な幹細胞と癌のそれとの間の違いは、新たな癌の治療へとつながる可能性がある

「正常な状態と癌の状態では多くの事柄が異なって調節されることを我々は認識し始めている」
Yeは言う

「癌幹細胞と正常な幹細胞である必要すらまったくない
実際、癌と正常では本当に異なっている
もし違いをうまく認識できれば、この疾患を治療するチャンスを我々は手に入れるだろう」


http://dx.doi.org/10.1038/nature14897
Distinct EMT programs control normal mammary stem cells and tumour-initiating cells.

この考えを支持するように、
我々や他の研究者は
 SlugというEMT誘導転写因子/EMT-TFが、正常な乳腺幹細胞の乳腺再構築活性のマスター調節因子として作用し、
 SlugをSox9とともに乳癌細胞で強制発現させると効率的にTIC/Tumour-initiating cellsの状態への開始を誘導する
ことを確定した(8

※8)http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22385965


しかし、これら以前の研究は異種移植モデルと培養細胞系統に焦点を当て、異所性ectopicにEMT-転写因子を発現させたもので、しばしばそれは生理学的レベルではなかった
今回我々は遺伝子工学によるノックインレポーターマウス系統を使った
 


関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/e16429384871b143627248cedd6ad0b3
インテグリンβ3サブユニット(CD61)は、αv(CD51)と会合することで(αvβ3)、転写因子Slugを誘導して幹細胞化を促進し、妊娠中の乳腺発達と乳癌の悪性化の両方と関連する
 

スタチンで筋肉痛が起きる理由

2015-09-06 06:25:45 | 代謝
Statin side effects linked to off-target reaction in muscle mitochondria

September 1, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150901134944.htm


(スタチンは副作用として筋障害/ミオパチーが起きることが多い。Schirrisらは、スタチンラクトンがミトコンドリア複合体IIIのQo部位を的外れにoff-target標的にすることを明らかにした)

スタチンを服用する人の4分の1に、筋肉痛や硬直stiffness、痙攣cramp、脱力weaknessが起きる

※a cramp in the leg: こむら返り

※weakness: 脱力。随意運動・動作が障害されること



Cell Metabolismの9月1日号でオランダの研究者は、スタチンが的外れな反応を引き起こして筋肉のミトコンドリア機能を混乱させ、これらの副作用を生じる可能性があることをマウスとヒトで示す

「スタチンなど多くの薬剤の副作用はミトコンドリアと関係があるが、その正確なメカニズムは不明だった」
首席著者の一人でオランダのラドバウド大学メディカルセンター・ミトコンドリア病ナイメーヘンセンター/Nijmegen Center for Mitochondrial DisordersのFrans Russelは言う

「今回の研究は筋肉への副作用がない新たなコレステロール低下薬の合成や、これらの影響に拮抗する新たな方法の開発につながる
どちらも現在研究中である」


スタチンは体内で酸型acid formとラクトン型lactone formという2つの形で存在する
酸型のスタチンは肝臓のコレステロール産生を低下させるが、酸型は体内でラクトン型に変化し、ラクトン型は治療的効果がない


Russelは共著者のJan Smeitinkたちとともに、ラクトン型が意図せずunintentionallyミトコンドリアのATP産生に干渉することを発見した
マウスの筋肉においてラクトン型は酸型よりもミトコンドリアの機能を約3倍強く阻害した
この発見はスタチンの副作用に苦しむ患者の筋肉の生検でも確認され、ATPの産生は減少していた
ラクトンはミトコンドリアの酸化的リン酸化経路の一つ、複合体IIIのQo部位を阻害する


「様々なスタチンのミトコンドリアへの影響と、複合体IIIがスタチンの筋障害の予測マーカーとして使えるかについてはさらなる研究が必要だが、
酸型からラクトン型へ変換する酵素の個人差はスタチンによる筋肉痛の感受性の違いの説明となりうるだろう」
Russelは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.08.002
Statin-Induced Myopathy Is Associated with Mitochondrial Complex III Inhibition
スタチンによる筋障害は複合体IIIの阻害と関連する

Highlights
・ほとんどのスタチンラクトン型は、酸型より強く複合体IIIを阻害する
・複合体IIIのQo部位は、スタチンラクトン型のoff-targetである
・複合体IIIの活性は、スタチンによる筋障害の生じた患者で低下している
・複合体IIIへの電子の流れを集中させることにより阻害は弱まりうる


Summary
スタチンの最も重要な副作用は筋障害myopathyであるが、そのメカニズムは不明だった

C2C12の筋芽細胞myoblastsにおいて、いくつかのスタチンラクトンは呼吸能を低下させ、複合体IIIの活性を強く阻害するようである(84%阻害)
概して、ラクトン型は相応するcorresponding酸型よりも3倍強く細胞毒性cytotoxicityを引き起こす

スタチンラクトンのoff-targetとして複合体IIIのQo部位を同定した

スタチンによる筋障害の生じた患者でも確認され、複合体IIIの活性は18%低下していた

C2C12筋芽細胞における呼吸の阻害は複合体IIIへの電子の流れを集中させることにより弱まり、呼吸はコントロールの89%まで回復した



関連サイト
http://ta4000.exblog.jp/18404873/
>高用量の経口イソトレチノイン治療を受けた患者のうち、2%から5%で関節痛と筋肉痛が起きる可能性がある

>C2C12: マウス由来の筋芽細胞株



https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A6%E3%83%93%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%B7%E3%83%88%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%A0c%E3%83%AC%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BC
複合体III

Qo site
 ubiquinol oxidation site
 ユビキノール酸化部位/ ユビキノールが酸化される部位

Qi site
 ubiquinone reduction site
 ユビキノン還元部位/ ユビキノンが還元される部位
 

イルカのメタボが飽和脂肪酸で改善

2015-09-06 06:12:03 | 代謝
Research with dolphins provides hope for prevention of diabetes in humans

A modified diet higher in heptadecanoic acid, a saturated fat present in some fish and butter, reversed metabolic syndrome in dolphins

July 22, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150722144627.htm

オメガ3脂肪酸がヒトの健康サプリメントとして人気があるので、NMMFの研究チームは49頭のイルカとエサの魚で55の脂肪酸を研究した
驚くべきことに、飽和脂肪酸の一つ「ヘプタデカン酸」がイルカの代謝に最も有益な影響があるようだった

National Marine Mammal Foundation/NMMFのVenn-Watsonは言う
「ヘプタデカン酸の血中濃度が最も高かったイルカは、インスリンとトリグリセライドがより低かった」

研究では魚によってヘプタデカン酸の濃度が高いものとそうでないものがあることもわかった


ヘプタデカン酸/マルガリン酸/C17:0の脂肪酸は、魚やチーズ、バター、全脂肪乳に多い
ヘプタデカン酸の摂取は、イルカでのフェリチンferritinの減少ならびにメタボリック症候群の軽減と関連した


ヘプタデカン酸の濃度が低かった6頭のイルカは、この脂肪酸が多い魚を与えられた
メタボリック症候群の指標/indicators、例えばインスリン上昇、グルコース、トリグリセライドは、6ヶ月以内に正常化した

驚くべき結果は高かったフェリチンレベルの低下である
高フェリチンはメタボリック症候群への基本的な前兆underlying precursor to metabolic syndromeである

「この食事を与えると、3週以内に6頭のイルカすべてで血中フェリチンレベルの低下を観察した」
Venn-Watsonは言う


http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0132117
Increased Dietary Intake of Saturated Fatty Acid Heptadecanoic Acid (C17:0) Associated with Decreasing Ferritin and Alleviated Metabolic Syndrome in Dolphins.



関連サイト
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2014/022236.php
飽和脂肪酸でも炭素原子が奇数(15、17)のものの血中比率が高かったグループでは、糖尿病のリスクは低かった。



<コメント>
イルカの代謝はまったくヒトの参考にはならないという話も


http://kettouchi-iji.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/victo.html




なぜランニングをするとハッピーになるのか?

2015-09-06 06:04:55 | 代謝
Why does running make us happy?

September 1, 2015 Source:University of Montreal

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150831085456.htm

「持久運動の報酬効果はrewarding effects of endurance activityは、レプチンによって調整される
レプチンは、ドーパミンニューロンを通じて身体運動physical activityを阻害する」
CRCHUMの研究者であり筆頭著者のStephanie Fultonは言う

レプチンは脂肪組織から分泌され、空腹感feeling of satietyを制御するのを助ける
そしてレプチンは身体活動にも影響する

「脂肪が多いほどレプチンも多く、食べたいという気分になりにくい
我々の発見はレプチンが走る動機付けmotivationにおいても重要な役割を演じることを示す
走ることは食物を探すことにつながる」
Stephanie Fultonは、モントリオール大学の栄養学部Université de Montréal's Department of Nutritionの教授でもある


事実、摂食と運動を調整するホルモンシグナルは近い関係にあると考えられている
哺乳類の持久走能力endurance running capacity、特にヒトのそれは、食料を見つけるチャンスを最大化するために進化してきたと考えられる
今回の研究は、レプチンが
 エネルギーバランスの調節と
 食料を見つけるための身体活動に没頭させるengaging in
その両方で重要な役割を果たすことを示唆する


研究では、レプチンによって活性化される分子のSTAT3を抑制するよう遺伝子を修飾したマウスと、通常のマウスの身体活動を比較した
これらのマウスに回し車を1日7キロメートル走らせた
STAT3は中脳midbrainのドーパミンを作るニューロンで見られる
この『中脳辺縁系のドーパミン作動性経路mesolimbic dopaminergic pathway』は、動機付けを促進する脳内の高速道路のようである

「ドーパミン作動性ニューロンにSTAT3を持たないマウスはかなり多く走るが、
通常のマウスはそれほど活発に走らない
なぜなら、レプチンがドーパミンニューロンのSTAT3を活性化させ、
『体内のエネルギーの蓄えは十分で、これ以上活動して食料を探しに行く必要はない』というシグナルを伝えるからだ」


レプチンはヒトの動機付けにおいても重要なのか?
答えはイエスだ

「これまでの研究でレプチンとマラソンの走る時間marathon run timeの相関が明確に示されている
つまり、レプチンレベルが低いほどパフォーマンスは高い

我々のマウスの研究では、レプチンが身体運動をした時に経験する報酬作用rewarding effectsにも関与することが示唆される
ヒトでは、レプチンレベルの低さは運動の動機付けを増してランナーズハイを得やすくするのだろうと我々は推測している」


マウスやヒトのような哺乳類は一般に、効果的な食料獲得行動に対する報酬returnを増すように進化してきたと考えられている
結局Ultimately、ホルモンは脳に「食べ物が足りない時は、走って追いかけるchase some downのが楽しい」という明確なメッセージを送っているのである


http://dx.doi.org/10.1016/j.cmet.2015.08.003
Leptin Suppresses the Rewarding Effects of Running via STAT3 Signaling in Dopamine Neurons


中脳の腹側被蓋野ventral tegmental area (VTA) のドーパミン作動性ニューロン
 


膠芽腫の治療に有効な組み合わせ治療

2015-09-05 06:09:59 | 癌の治療法
Researchers develop a likely new combo treatment for the deadliest form of brain cancer

September 1, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/09/150901141105.htm

T細胞を抽出して体外で増殖させ、NY-ESO-1/New York Esophageal Squamous Cell Carcinomaで再プログラムする
それを膠芽腫glioblastomaのマウスモデルに注入して戻し、免疫応答を生じさせて脳腫瘍を標的にする
(養子細胞移入/adoptive cell transfer)


膠芽腫は通常はNY-ESO-1を発現しないが、
NY-ESO-1を標的とするT細胞を注入する前に、デシタビンdecitabineを投与することで腫瘍細胞はNY-ESO-1を発現するようになる

この新しい方法は、研究では約50%で膠芽腫の治癒に有効だったwas nearly 50 percent effective at curing glioblastoma

「脳腫瘍は免疫系を回避するのが得意だが、それは免疫系が認識できる特定の標的を発現しないからだ」
カリフォルニア大学ロサンゼルス校のジョンソン総合がんセンターの一員であり、神経外科neurosurgery教授のLiauは言う

「デシタビンを投与することで、腫瘍の標的をあらわにできることが判明した
いったん標的が明らかになれば、遺伝的にプログラムしたT細胞を投入して腫瘍細胞を攻撃させることができる」


※デシタビン/decitabine

※5-アザシチジン/5-azacytidine

※5-アザ-2-デオキシシチジン/5-aza-2-deoxycytidine

>Decitabine, or 5-aza-2'-deoxycytidine




http://dx.doi.org/10.1093/neuonc/nov153
Efficacy of systemic adoptive transfer immunotherapy targeting NY-ESO-1 for glioblastoma.



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150720114749.htm
T-cell receptor therapy achieves encouraging clinical responses in multiple myeloma
NY-ESO T cell receptor therapy found to be safe, with no cytokine release syndrome cases

多発性骨髄腫multiple myeloma
T細胞受容体/TCR療法

多発性骨髄腫の約6割で見られるNY-ESO-1抗原を攻撃するようT細胞を調整した
癌精巣抗原のNY-ESO-1は、腫瘍の増殖と予後の悪さと関連することが以前示されている

自家幹細胞移植autologous stem cell transplants/ASCT後のハイリスク疾患のない患者20人でのフェーズI/II試験で、
90%が注入後2年のフォローアップに到達し、約7割が完全奏効またはほとんど完全奏効だった

研究では平均して24億のNY-ESO-engineered CD3 T細胞を、ASCTの2日後に投与した
この新しく作られた細胞は、増殖してNY-ESO-1とLAGE-1を発現する細胞を探して殺す



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2014/11/141111092728.htm
Promising prognostic biomarker candidates for ovarian cancer uncovered

卵巣癌

癌精巣抗原/cancer testis antigens/CTは、精巣以外の正常な組織では発現しない抗原

CTの中から5つに絞った
特に、NY-ESO-1は免疫系が認識しやすいので、免疫療法で標的にしやすい

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0107193
Differential Antigen Expression Profile Predicts Immunoreactive Subset of Advanced Ovarian Cancers

http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0111586
Connecting Prognostic Ligand Receptor Signaling Loops in Advanced Ovarian Cancer
 

ウイルスへの警報により癌細胞を妨害する

2015-09-05 06:08:08 | 癌の治療法
Researchers thwart cancer cells by triggering 'virus alert'

August 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150827130145.htm

ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの研究者たちは、免疫系の『ウイルス警報virus alert』の引き金を引く方法を発見した
これは癌に対する免疫療法への応答を促進する可能性がある


Cell誌の8月27日号で発表された報告によると、研究者たちはウイルス防御警報システムと脱メチル化薬の5-アザシチジン/5-azacytidineへの感受性、その両方と関連する遺伝子グループを発見したという
5-アザシチジンは、それらの遺伝子が脱メチル化というプロセスを通して作用する能力を化学的に変化させる


今回の研究は結腸直腸癌の癌幹細胞を標的にするDNA脱メチル化剤の能力に焦点を当てた
Cell誌の同号では、カナダのオンタリオがん研究所/プリンセスマーガレットがんセンターのDe Carvalho博士、ヴァンアンデル研究所のPeter Jones博士による同様の発見が報告されている



腫瘍は、メチル基を付け加えて遺伝子をサイレンシングする細胞のシステムを勝手に用いてco-opt、遺伝子の機能を切ってしまうことが知られている
通常、そのような『エピジェネティック』な制御は多くの遺伝子で生じていて、それには過去にウイルスに感染したDNAの痕跡leftoverが含まれる
それらの遺伝子でエピジェネティックな制御が取り除かれると、ウイルスを含む遺伝子配列が活性化して、免疫系への警告が引き起こされる


「免疫療法への主な障害は、免疫系を機能させないようにする腫瘍の能力である」
キンメルがんセンターのStephen Baylin博士は言う

「免疫系は存在するが、武器を持たない軍隊のように何もせずブラブラしているhang around
しかし腫瘍細胞でウイルス防御遺伝子をサイレンシングしているエピジェネティックなプロセスを脱メチル化薬で無効化すると、
免疫療法はより効果的に作用して癌細胞を殺すことができる」


Baylinたちはヒトの卵巣癌、結腸癌、皮膚癌で研究し、De Carvalhoたちは結腸癌細胞で研究した
どちらの研究でも、癌細胞が5-アザシチジンに曝されるとウイルス防御経路のスイッチが入った
いったん経路が活性化すると、腫瘍細胞はインターフェロンというシグナル伝達タンパク質を分泌して、免疫系の癌と戦う他の細胞を目覚めさせるrouse


次にジョンズ・ホプキンスの研究チームは、ウイルス防御経路の遺伝子シグネチャーsignatureを作成した
国立癌研究所のTCGA腫瘍サンプルで科学者はその遺伝子シグネチャーを用いて
発現が低い腫瘍サンプルと発現が高い腫瘍サンプルを識別した
発現が高いサンプルは5-アザシチジンがなくても免疫療法薬に応答するが、
発現が低いサンプルは免疫療法への応答を加速するためにエピジェネティック薬が必要かもしれないとBaylinは言う

その経路の発現と免疫療法への応答との間の関連を探して、研究者は
免疫療法薬のイピリムマブ/ipilimumabで治療されたメラノーマ患者21人の腫瘍細胞の、ウイルス防御経路の発現レベルに注目した
分析の結果、
ipilimumabに応答した患者の8人中7人の癌細胞ではウイルス防御経路の発現レベルが高く、
ipilimumabへの応答が限定的だった患者12人の癌細胞はウイルス防御経路の発現が低かった

ipilimumab単体では効果が限られるメラノーママウスモデルにおいて、
ipilimumabに5-アザシチジンを加えると腫瘍の応答が改善した

もし今回の発見が確かめられて臨床試験にまで拡張されれば、ipilimumabや他の免疫療法(チェックポイント阻害剤)の後に5-アザシチジンが投与され、癌細胞の防御を弱めて免疫系による発見と破壊を促進するだろうとBaylinたちは言う


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.07.011
Inhibiting DNA Methylation Causes an Interferon Response in Cancer via dsRNA Including Endogenous Retroviruses.
DNAメチル化の阻害は、内因性レトロウイルスを含む二本鎖RNAによる癌細胞のインターフェロン応答を引き起こす


Highlights
・DNMT阻害剤は、癌細胞の二本鎖RNAセンサーを活性化することによりインターフェロン応答を引き起こす
・DNMT阻害剤は、内因性レトロウイルス/ERVの脱メチル化と発現を誘導して、二本鎖RNA応答が生じるのを助ける
・DNMT阻害剤によるメラノーマでのウイルス防御遺伝子発現は、患者の免疫療法への応答と一致するtrack with
・DNMT阻害剤療法は、メラノーママウスモデルにおいて抗CTLA-4免疫療法への感受性を上昇させるsensitize


Summary
DNAメチル基転移酵素阻害剤/DNA methyltransferase inhibitors (DNMTis) は、ウイルス防御経路を通じて癌細胞の免疫シグナル伝達を上方調節する

卵巣癌においてDNMT阻害剤は細胞質の二本鎖RNA (dsRNA) を感知させ、I型インターフェロン応答とアポトーシスを引き起こす
dsRNAセンサーのTLR3とMAVSのノックダウンはこの応答を2倍低下させ、
インターフェロンβまたはその受容体の阻害はこの応答を妨害した

この応答には、過剰にメチル化した内因性レトロウイルス (ERV) 遺伝子の発現上方調節が伴い、
ERVの過剰発現はこの応答を活性化する

ERV発現ならびにウイルス応答遺伝子発現の基礎レベルは原発卵巣癌において有意に相関し、
後者のシグネチャーはTCGAの多くの腫瘍タイプの原発サンプルを低発現グループ対高発現グループへと分類するseparate into

免疫チェックポイント阻害療法の治療を受けたメラノーマ患者において、腫瘍のウイルス防御シグネチャーviral defense signatureの発現の高さは臨床的応答が長続きすることと有意に関連し、
DNMT阻害剤療法はメラノーマの前臨床モデルにおいて抗CTLA4療法への感受性を上昇させる



擬似的なウイルス感染で癌幹細胞を標的にする

2015-09-05 06:06:42 | 癌の治療法
Viral infection in colon cancer stem cells mimicked; druggable target identified

August 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150827122048.htm

「擬似ウイルス感染により、免疫系は癌細胞を破壊すべき感染として調べるようになる」

プリンセスマーガレットがんセンターの研究チームはヒト結腸直腸癌を使った前臨床実験ならびに生物情報科学的分析により、化学療法薬のデシタビンdecitabineを低用量で用いると擬似的にウイルス感染を真似ることにより癌幹細胞を標的にできることを証明した
デシタビンは既にFDAによって骨髄異形成症候群と白血病の治療薬として承認され、結腸直腸癌を含めたいくつかの固形腫瘍で臨床試験が行われている
De Carvalho博士たちの研究によれば、この薬はDNAを化学的に修飾してエピジェネティックに作用し、ウイルスを認識する経路を活性化させる

今回の実験は2007年のNatureで発表された研究が元になっている
それによると『すべての結腸直腸癌が等しいわけではない』
腫瘍はむしろ階層hierarchyの中で組織化organizedされ、その階層は幹細胞サブ集団によって維持される
幹細胞は疾患の源であり、治療抵抗性を生じ、自己再生して腫瘍を再生する

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17122772
"A human colon cancer cell capable of initiating tumour growth in immunodeficient mice."
>Purification experiments established that all CC-ICs were CD133+;
>the CD133- cells that comprised the majority of the tumour were unable to initiate tumour growth.


De Carvalhoは言う
「我々の発見が持つもう一つの重要な意味は、デシタビンが抗ウイルス応答を誘導するため非常に免疫原性immunogenicであり、免疫療法の薬剤と組み合わせることが有効であるかもしれないということだ」

De Carvalho博士はビデオで彼の研究について語っている
https://www.youtube.com/watch?v=2K-vCbPggS8


http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2015.07.056
DNA-Demethylating Agents Target Colorectal Cancer Cells by Inducing Viral Mimicry by Endogenous Transcripts.
DNA脱メチル化剤は、内因性転写によるウイルス擬似感染を誘導することにより、結腸直腸癌細胞を標的にする


Highlights
・5-AZA-CdRは、dsRNAsの形成ならびにMDA5/MAVS/IRF7経路を誘導する
・DNA脱メチル化に対する抗増殖応答はウイルス擬似感染viral mimicryにより仲介される
・5-AZA-CdRによる癌幹細胞/CICsの標的化は主にウイルス擬似感染によって仲介される
・MDA5/MAVS/IRF7経路は潜在的に結腸直腸癌に対する新たな薬剤開発の標的となりうる

Summary
DNA脱メチル化剤は臨床的に抗腫瘍能を示してきたが、その作用メカニズムは不明だった

我々は結腸直腸癌細胞で低用量の5-アザ-2-デオキシシチジン/5-aza-2-deoxycytidine/5-AZA-CdRがウイルスを擬似的に誘導viral mimicryすることにより癌幹細胞/colorectal cancer-initiating cells (CICs) を標的にすることを示す

これは少なくとも、部分的には、内因性レトロウイルス配列由来dsRNAsの誘導、MDA5/MAVSというRNA認識経路の活性化、そしてその下流のIRF7活性化と関連する

事実、MDA5, MAVS, またはIRF7をそれぞれ個別にノックダウンすることでウイルス認識経路を妨害すると、5-AZA-CdRの直腸結腸癌幹細胞/CICsを標的にする能力は阻害された

さらに、dsRNAのCICsへのトランスフェクションは、5-AZA-CdRの効果を真似た
 


関連サイト
http://first.lifesciencedb.jp/archives/6293
>腫瘍にも正常な組織の幹細胞と類似した自己再生能と子孫の腫瘍細胞を供給する能力をあわせもつ“腫瘍幹細胞(がん幹細胞)”が存在するという説があり,近年,この説を支持する報告が多数みられるようになった4,5).

 

腫瘍ではトランスポゾンが活性化している

2015-09-04 06:40:21 | 
'Jumping genes' unusually active in many gastrointestinal cancers, studies find

Rogue gene insertions could one day speed diagnosis

August 17, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150817181306.htm

胃腸の癌では、トランスポゾンのLINE-1が異常に活性化している

LINE-1は挿入により癌抑制遺伝子を不能disableにすることが以前報告されたが、トランスポゾンの癌発症への関与がどれぐらい一般的なのかは不明だった


Genome Researchの研究
・結腸癌、膵臓癌、胃癌では、癌の早期からLINE-1の挿入が生じていた

http://dx.doi.org/10.1101/gr.196238.115
Widespread somatic L1 retrotransposition occurs early during gastrointestinal cancer evolution.


Nature Medicineの研究
・膵臓癌ではLINE-1の挿入が生じていたが、健康な膵臓には存在しなかった
・転移した腫瘍では挿入の多い傾向が存在した

http://dx.doi.org/10.1038/nm.3919
Retrotransposon insertions in the clonal evolution of pancreatic ductal adenocarcinoma.


Proceedings of the National Academy of Sciencesの研究
・食道癌とバレット食道を比較した

http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1502474112
LINE-1 expression and retrotransposition in Barrett’s esophagus and esophageal carcinoma.


「これらの挿入が、癌の発症を促進するのか、癌の副産物なのかは重要な疑問である」という
それがどうであれこれは早期検出の強力なツールとなりうるだろう



関連記事
http://www.sciencedaily.com/releases/2015/07/150710080316.htm
'Jumping genes' may drive esophageal cancer

トランスポゾンのL1因子は、自らを引っこ抜いてuproot移動するが、それがたまたま細胞増殖を制御する遺伝子の中に移動することがある
研究者は、これがそれぞれの腫瘍サンプルごとに100回起きるという証拠を発見した
腫瘍の中には700回起きるものもある

http://dx.doi.org/10.1186/s12864-015-1685-z
Mobile element insertions are frequent in oesophageal adenocarcinomas and can mislead paired-end sequencing analysis.

関連サイト
http://ta4000.exblog.jp/19133502/
※Long INterspersed repetitive Element (LINE): 長い散在性反復配列。転移因子 (トランスポゾン) の一つ。LINEの代表はL1因子
 

AAV2ウイルスは肝臓癌の発症を促進する

2015-09-04 06:07:48 | 
A new virus in liver cancer

August 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150827111637.htm

この患者たちの悪性細胞を詳細に調べたところ、AAV2(アデノ随伴ウイルス2型)がDNAをゲノムに挿入する時に細胞の増殖に重要な遺伝子を標的にすることがわかった
AAV2はこれらの遺伝子の過剰発現につながり、研究者によるとこれは腫瘍の発症を促進する可能性があるという

AAV2はこれまで無害と考えられ、遺伝子治療のベクターとして使われてきた


http://dx.doi.org/10.1038/ng.3389
Recurrent AAV2-related insertional mutagenesis in human hepatocellular carcinomas

These AAV2 integrations occurred in known cancer driver genes, namely
 CCNA2 (cyclin A2; four cases)
 TERT (telomerase reverse transcriptase; one case)
 CCNE1 (cyclin E1; three cases)
 TNFSF10 (tumor necrosis factor superfamily member 10; two cases)
 KMT2B (lysine-specific methyltransferase 2B; one case),
leading to overexpression of the target genes.

※TNFSF10: TRAIL
 


ニトログリセリンを癌の治療薬として再利用する

2015-09-03 06:15:51 | 癌の治療法
Exploding the drug deadlock: Repurposing nitroglycerin for anti-cancer treatments

August 27, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150827083701.htm

多くの癌の治療が失敗する原因は腫瘍内の低酸素状態である
窒息状態stifling conditionsにより、治療を腫瘍に行き渡らせるpenetrateのは難しい

ニトログリセリンはこの状況を改善する

「腫瘍の低酸素を改善するのに加え、ニトログリセリンは抗癌剤の送達を改善させる優れた可能性を持つ」


http://dx.doi.org/10.3332/ecancer.2015.568
Repurposing Drugs in Oncology (ReDO)—nitroglycerin as an anti-cancer agent.



関連記事
http://blog.goo.ne.jp/news-t/e/c3124edbd023ba26daebb2aaa35f2939
>世界中の癌研究者の国際共同研究であるReDOプロジェクトの主な活動は、癌の全く新しい治療法だが手付かずとなっている薬の源を示す、ありふれた薬剤の根拠を推進することである。
>今後の論文は、ニトログリセリン(狭心症を治療するのに用いられる)、イトラコナゾール(ありふれた抗真菌薬)、ジクロフェナク(医師の処方なしで売れる鎮痛剤)、クラリスロマイシン(抗生物質)の潜在的な抗癌剤としての作用についてである。
 


アルツハイマー病で30年間見過ごされてきたペプチド

2015-09-03 06:13:58 | 
Alzheimer’s disease: Overlooked for 30 years, there is a new kid on the block

August 31, 2015

http://www.sciencedaily.com/releases/2015/08/150831112504.htm


同じAPPから、2つの異なるペプチド、β-アミロイドとη-アミロイドが切り抜かれるsnipped
これはニューロンの活動に正反対の影響を与え、その作用は通常は注意深くバランスが取られているに違いないと
ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン/Ludwig-Maximilians-Universitaet Muenchen/LMUのHaass教授は言う

LMUの研究者はη-アミロイドの神経細胞機能への影響も調べた
β-アミロイドは神経細胞を過剰に活性化することが知られているが、
η-アミロイドはこの影響と拮抗antagonizeすることがわかった

※η: エータ


LMUのWillemたちは、
β-セクレターゼの阻害は確かにβ-アミロイドを減少させるが、
それには膨大なmassive量のη-アミロイドの生成が伴うことを確認した

「この結果としてニューロンの活動が弱められ、脳の機能は損なわれる」
現在進められている臨床試験では予期しない副作用のどんな徴候に対しても警戒look-outする必要があるとHaassは示唆する


http://dx.doi.org/10.1038/nature14864
η-Secretase processing of APP inhibits neuronal activity in the hippocampus.


APP─(セクレターゼ)→CTF: carboxy-terminal fragments/C末端断片


APP─(βセクレターゼ)→ CTF-β + sAPPβ ─(γセクレターゼ)→ Aβ + AICD

APP─(ηセクレターゼ)→ CTF-η + sAPPη ┬─(αセクレターゼ/ADAM10)→Aη-α
                    └─(βセクレターゼ/BACE1) →Aη-β


CTF=carboxy-terminal fragments(C末端断片)

α-secretase/ADAM10 (a disintegrin and metalloproteinase 10)
β-secretase/BACE1 (β-site APP cleaving enzyme 1)
η-secretase/エータ-セクレターゼ


η-secretaseは、APP695の504–505で切断する
CTF-ηはさらに
 ADAM10によってAηペプチド (Aη-α) に切断され、
 BACE1によってAηペプチド (Aη-β) に切断される


遺伝子的ならびに薬理学的にBACE1活性を阻害すると、CTF-ηとAη-αが大量に蓄積する

マウスに強力potentなBACE1阻害剤を投与すると、 海馬の長期増強hippocampal long-term potentiation/LTPは減少した

in vivoのsingle-cell two-photon calcium imagingによると、海馬のニューロン活性はAη-αによって弱められるattenuatedことが示された