ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「ことばは光」福島智著

2023-04-26 15:33:45 | 

先日見た映画「桜色の風が咲く」にインスパイアされて、福島智氏の本も読んでみました。

「ことばは光」福島智著(道友社 2016年)

Amazonkindleの読み放題に入っています。

すごくいい本でした。

短編エッセイ集なのですが、一つひとつのエッセイは読みやすく、かつ時にユーモアにあふれています。

もちろん、福島智氏の全盲全聾の半生は生半可な苦労ではなかったはずですが、

随所に語られるのは、命とは何か、人が生きるとは何か、私たちは何のために生まれてきたのか、

という根源的な問いかけです。

それが実にシンプルな言葉で語られ、しかも具体的なエピソードも豊富で、次々と読み進まずにはいられず、一気読みしました。

映画で語られていたように、彼は3歳で右目を9歳で左目を、18歳で聴力を失い、全盲全聾になります。

一時は絶望のどん底に陥りますが、不思議な力で立ちあがり(おそらく生まれ持った力と周囲のおかげなのでしょう)大学受験を決意し、都立大に合格し、博士号を取得し、東大教授になるという偉業を成し遂げます。

海外にも積極的に出かけて行き、アメリカではヘレン・ケラーの生家を訪れたりもしています。

とにかく、並外れた人です。

もちろん生まれ持った才能(努力する才能も含めて)もあるのでしょうけれど、

なんていうか、福島氏には彼独特の使命感があって、私たちを鼓舞してくれている、そんな気がします。

中味を少し抜粋すると・・

「宇宙人 は 本当に いる だろ う か?・・ 私 は いる と 思う。 いや、 い て ほしい。 い たら 面白い では ない か。 特に 人類 が 宇宙人 と 初めて 接触 し た とき、 どう やっ て コミュニケーション を 図る かを 考える と、 わくわく する・・」

小松左京氏との会話では、
「盲 ろう の 状態 自体 が、 いわば SF 的 世界 な ん です。 でも、 そう 考え て みる と、 不思議 と 生きる 勇気 が 湧い て くる ん です・・」

一瞬でも目が見えるようになったら何を見たいか、という質問には、
「宇宙 です ね。 夜空 の 星座 や 満月。 あるいは 朝日 や 夕日 でも いい。 とにかく、 宇宙 を 感じ られる もの が 見 たい です ね」

また、
「人間 って 長生き し ても、 せいぜい 百年 くらい です よね。 ある 個人 の ささやか な 人生 は、 宇宙 の 無限 の 時間 の 流れ から すれ ば、 無 に 等しい 一瞬 の 幻 みたい な もの じゃ ない か。 そういう こと が、 ひどく 気 に なっ た 時期 が ある ん です。 その 答え は 小松左京 の SF 作品 が 教え て くれ まし た。 人 は その 一瞬 の『 幻』 の 中 に こそ、 永遠 の 美 と 喜び を 感じ取れる 存在 なの だ と・・」

そして、
「 自分 の 人生 に あまり 不満 を 感じ ない で 済む コツ」をこう語る。
「 自分 の 人生 の「 主語」 を 常に 自分 に する、 という こと だ。 つまり、 自分 が 人生 で 何 を し たい のかは、「 自分( あなた)」 が 考え、 どんな 生き方 を する の かも「 自分」 が 決める、 という こと で ある・・」

あるいは、吉野弘の詩の一節に衝撃を受けた時のこと、
「生命 は/ その 中 に 欠如 を 抱き/ それ を 他者 から 満たし て もらう の だ」 という 一文 に 触れ た 時、 心 の 中 に パーッ と 明るい 光 が 射す よう な 衝撃 を 受け まし た。 この 命 の 関係 性 に対する 捉え 方 は、 すごく 温かく て 力強い・・」

引用しているときりがないほど、彼の中から生まれる言葉たちは私たちに勇気と希望をくれます。

ぜひ、一読してほしい本です。

 

コメント
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