「安部公房全集018 1964.01-1964.09」 1999新潮社(2008年、3刷)
小説「榎本武揚」シナリオ「砂の女」小説「他人の顔(講談社版)」と入っているから3刷も納得。
「榎本武揚」は面倒くさいな。まあ、それなりに一生懸命読んじゃうんですけどね。
榎本本人が登場するわけじゃなく、資料から都合よく探っていく元憲兵の執念。ってか、ウィキペディアで見ると戯曲の方が面白そうだ。
忠誠とか時代による善悪とか。考えたくない気持ち悪いことに見えてくるわ。まあ、覚えておいた方がいいことだけど。
新撰組とか土方とか、「銀魂」のイメージでそのままはまるわ。わはは。「桶さえあれば、水はいつでも汲めるものです」なんて、将軍暗殺篇そのまんまじゃないですか。
「砂の女」映画シナリオだから小説での解説が台詞になっていたりするわ。まあね、読みやすいけど読むなら小説の方がやっぱりいいわ。
「他人の顔」ってどういう話だったかな~と思ったんだけど、顔が変わるイメージから「多崎つくる」と勘違いしちゃったわ。ああ、蛆の湧いた顔に精巧な仮面を付けて奥さんを騙したつもりが騙されたって話だったな。講談社版は加筆修正、ほぼ2倍に。
ああ、ラストの変更(追加)は主人公に理解を示したり許すような一部読者に対する拒絶か?完全な破壊を求めたのかもしれない。そのための空気銃。
P416~417の「死を抱える国家」の痴漢の多さに、〔痴漢の多さ=自殺の多さ〕という日本の姿を見た。こんな感じでストーリーの9割が読み飛ばしても大丈夫な作品なわけですが、それを倍増させることによって主人公の壊れ具合を増大させたわけですね。(自己と他人との境界に対する考察を深めるためらしい)
妻が気付いているヒントは正体に気付いていたアパートの子供だけではなく、主人公自身が妻の体の細部を知っていたこともそのまま逆を想うだけで良かった。それに気付かない一方的な主人公、その態度はそのままラストにもつながっていく。
で、この先には「シナリオ版」もあるんだよね。楽しみなような、面倒くさいような…どうしてもストーリーや設定ばかり見てしまうからなぁ。