「悲鳴伝」西尾維新 2012講談社NOVELS
理不尽に理不尽をかけたとんでもない幸せなバッドエンド
期待以上に引き込まれた。
人類の3分の1が命を失った『大いなる悲鳴』
読み始めは「おいおい、あやしいな」と身構えて用心していましたが、そうなんだから仕方ない。仕方ないじゃないか。仕方ないんだと思って読んで止められなくなる。
感動しない少年空々空(そらからくう)感情があるような演技をしていた。だが、その必要はなくなる。
まあ、誰にでもある一面ではあるのだろうが、その完全形らしい。だから、この展開、この作品。
裏切られる展開も当たり前に受け入れてしまう。
『大いなる悲鳴』を『大飯なる』と読み替える私は放射脳!
でも、3・11があったから出来た作品なんだろうと思ってもいいよね。
災害と社会と政治と無自覚な当事者たちや傍観者たち。
P472 「スルーして、見過ごして、見ない振りして―前兆をすべてやり過ごしておいて、そしてことが起こってから『いつかこんなことになるんじゃないかと思っていた』などというのだ。」
P479 「システムをどれほど厳密に構成しようと、それを扱うのが人間である以上、完璧なシステムなどというものは存在しない」
そして『大いなる悲鳴』は再びやってくるのだ。必ず。
P507 実に空々しい、空々しい言葉だった。