「鏡のなかの鏡」ミヒャエル・エンデ著 丘沢静也訳 1990(1985)岩波書店
うわ、めんどくさくて面白い。
あの世、死後の世界やら転生やら高次の世界ってところだろうかね。
それらは一般には不安もなく静かで穏やかな世界として認識されることが多いが、この作品の中では不安と苛立ちの中で過ごす一種の地獄のように描かれる。そっちの世界に行っても、人はさらにモノを知らずモノが見えずに苦しむ。生まれ変わるのはそう簡単であるはずがないと考えれば納得だ。
まあ、そういう読み方が正しいのかどうかわからないが、作品は自分を映す鏡だったりするわけで、死後の世界に期待し過ぎてはいけないと思うので、まあ、悪くないんじゃないだろうか。
4節の「駅カテドラル・・・」では金を抱えた乞食たちと金でできた建物、子供用の棺にも札束が詰まる。それはなにか「モモ」と同様にアニメ「C」を思わせる。「金は全能」「金は神、信仰」そして、「富は自分自身の将来の利益からやってくるのだ」
オカルトで盲目的な高次世界の存在は認めたくないが、多くの人が求めるということが「ないものを求める」行動なのか、「あるから求める」行動なのか、そういったものの存在もいつかは科学で解明される日が来ると感じ、その日を信じるがゆえに、そういった世界があったほうが嬉しいと思う自分の予感を信じたい。
それにしても、この作品を何も知らずに手にしたなら、最後まで読み通す自信はない。「モモ」の解説を読んでいたからこそ、それなりに楽しめたのだろう。一応、宝物的作品として記憶しておこう。