「宇宙嵐のかなた」 |
ヴァン・ヴォークト |
創元推理文庫 |
1970年発行 1952年 |
3つの短編をつないだ作品らしい。そのためだろうか、作品の流れがおかしく読みにくい感じがした。
混成人の能力を考えると、繁殖能力が低かったとしか思えなかったりする。デリアン、非デリアン、混成人が1万5千年の時を過ごした社会。その能力からして、<50の太陽>を支配できなかったってのは馬鹿らしい。
良く言えば息をつかせぬ展開、悪く言えば雑多なご都合主義的闇鍋状態。
で、複雑に入り組んだ体制化の人間関係を軸にしたラブロマンス?
軸がはっきりしなくて読者に作品の再構成を強いているかも。少なくとも私は読んでいて苦しかった。楽しくない。アイデアが面白いだけ。
1万5千年前、物質送信機が発明され、その初期の装置は人間の転送には向いていなかった。
その初期の装置で転送された人間は、精神と肉体は頑強だが創造性をなくし、その為彼らデリアンはロボットとののしられた。そのデリアンを支援する人々とともに彼らは地球帝国を追放されたのだった。
それから1万5千年。グロリア・セシリー艦長の率いる地球帝国の戦艦、スター・クラスター号は大マゼランを訪れ、そこに彼らを発見。地球外の統治権力を認めぬ彼女は、地球帝国の圧倒的科学力を備えた巨艦の力を盾にコンタクトを取ろうとする。
2つの心を持ち、他人の意思を操ることの出来る混成人の世襲指導者モルトビーは<50の太陽>の要請により、スター・クラスターを宇宙嵐に誘き入れるが、スター・クラスターはその強烈な嵐の攻撃にも耐えて見せる。その時、グロリアとモルトビーは二人きりになる機会を得、互いに情を寄せる。(心理改造も影響していた)
混成人の実質的指導者ハンストンはスター・クラスターの登場から、地球帝国へ潜入し同型艦を盗み出していた。その戦力とテクノロジーを盾に<50の太陽>内でクーデターを起こす。スター・クラスターと地球さえ始末すれば、そのテクノロジーを研究する時間が出来、地球帝国を恐れることもなくなるのだ。
モルトビーはハンストンの企みを挫き、心理改造によって恋心をなくしたグロリアに再びその気持ちを持たせるのだった。