今回はあらすじであり、完全ネタバレですのでご注意ください。
「御行奉為」
山岡百介 考物 京橋 蝋燭問屋生駒屋若隠居
小股潜りの又市 御行 札撒き 念仏長屋(麹町)
事触れの治平 備中屋 念仏長屋(麹町) 元盗賊(蝙蝠組、野鉄砲の島蔵の手下)
山猫廻しのおぎん 傀儡師 一流料亭のお嬢 祗右衛門の娘
《野鉄砲》武蔵国多摩郡八王子千人町
山岡百介の生立ち、事触れの治平の過去
山岡百介は幼い頃分かれた兄、八王子千人同心の山岡軍八郎に呼ばれ故郷を訪れる。
軍八郎が百介を呼んだのは、巷談風説を収集している百介に、同役浜田毅十郎の変死(額に打ち込まれた石礫)について意見を聞くためである。
百介の話を基に野襖(及びそれを操る貒(まみ))狩が行われ、その最中、軍八郎の上役(小頭)の田上兵部が殺されるが、大狸は退治され一件落着。
百介と軍八郎の下に又市、治平、軍八郎の下男の老人(野鉄砲の島蔵)が現れ真実を語る。
今回殺された二人は元々は島蔵の手下だった男で、野鉄砲の製法を手に入れようと裏切り、島蔵の娘と孫(治平の妻と子)を殺して逃げたのだった。
そして今回の事件はその意趣返しであった。
《狐者異(こわい)》小塚原縄手
おぎんの過去 又市の過去
(統括者)頭浅草弾左衛門配下公事宿世話係、稲荷坂の祗右衛門(ぎえもん)はその立場を利用し無宿に悪事を働かせた。やがて悪事も表沙汰になり捕まり首を切られる。15年前のことである。
だが、祗右衛門は蘇り香具師の元締めとなり、5年の後再び獄門となる。更に10年後同じく獄門。
三度蘇った祗右衛門は狐者異であると、又市は百介にその封じ方を伝える。
北町奉行所定町廻り同心田所真兵衛は百介から聞いた方法で祗右衛門を討つ。それは次のような方法であった。祗右衛門を追い詰めその額に札を貼り首を切る。そして札をつけたままその首を焼く。
生駒屋の離れ、百介の下に又市とおぎんが訪れ真相を語る。
本当の祗右衛門は徳の高い人物で、立場を利用して悪事を働くような人ではなく、最初の処刑で死んでいた。それを裏で操っていた北町奉行所吟味方筆頭与力、笹森欽蔵は祗右衛門の秘密を知り利用したのだ。その秘密とは身分の釣り合わぬ相手との間に娘(おぎん)を儲けていた事だ。そしておぎんの母親も笹森の手に落ちた。
笹森は一度覚えた甘い汁の味が忘れられず祗右衛門を再度仕立てた。
それを暴こうとして失敗した(黒幕を暴けなかった)又市は髷を落とし、棲む世界を変える事となったのだ。
最後に首を焼かれた祗右衛門は又市に攫われた笹森欽蔵であった。笹森欽蔵の額には大きなほくろがあり、札はそれを隠す為の手段であり、首を焼いたのはその正体を知られない為であったのだ。
《飛縁魔(ひのえんま)》(神田鍛冶町)泉州堺
ストーリーがつづき物へ、アニメとは違えてくる 火の閻魔 丙午
名古屋の廻船問屋金城屋の跡継ぎ栄吉は、友人の貸本屋誉め転ばしの平八に山岡百介を介して又市へ人探しを依頼する。
探すのは、12年前に金城屋主人亨右衛門との婚礼の席から逃げ出した白菊。
又市は白菊は飛縁魔であると告げ、予告通りに亨右衛門の造った白菊御殿は炎上、その中で白菊は消え去った。
亨右衛門の中から白菊は消え去り、栄吉へ身代を譲る。
白菊と龍田は幼馴染みだった。器量も技量も同等であったが、白菊は人に好かれるたちであり、龍田は常にねたみを感じていたのであろう。数々の嫌がらせの後、白菊から奪った男橡屋清八と龍田の祝言の日に白菊を殺めて清八ともども火をつけ焼いてしまう。白菊は死んでいたのである。亨右衛門が情けをかけたのは白菊を名乗る龍田だったのである。だが、龍田は火付けの癖が付き、それを亨右衛門に知られた事に気付き、またも祝言の日に逃げ出した。亨右衛門は白菊(龍田)のために火をつける立派な屋敷白菊御殿を造ったと言うのに。
又市は亨右衛門の中から白菊(龍田)を祓ったのだった。
そして、その龍田は「七人みさきと言う怪事」が続く北村藩にいると言う。その情報にはおぎんの師匠で育ての親御燈の小右衛門が絡んでいるらしい。
白虎のおきょうと朱雀のおきく(龍田)は…? つづく
《船幽霊》四国土佐讃岐国
七人みさき 飛火槍 御燈の小右衛門の過去
四国を旅しようとする百介に、おぎんがついてくる。白菊御殿で焼けた人形の代わりを作ってもらうと言う口実で御燈の小右衛門を捜すつもりだ。
怪異を騙った盗賊騒ぎに巻き込まれる二人。だが、それは川久保党(御燈の小右衛門が昔いた山の民)の秘密(飛火槍)を手に入れようとする高知藩御船手奉行関山兵五の姦計であった。
関山に捕まった川久保党と百介たち。それを救ったのは関山の手管を逆手に取った又市と祭文語りの文作の仕掛けであった。
飛火槍は川久保党に伝わる秘密であった。時代が移り川久保の主方の久保家が基金の為貧窮し、その秘密を小松代藩へ売ることとなり、実験で誤って山崩れを起こしてしまう。それにより貧窮から救うはずの久保家が滅亡し、もはやそれを売る必要もなくなった。なんやかやで飛火槍を売ることは拒むが小松代藩へは火薬技術者が派遣されることとなった。
小松代藩へ派遣させた川久保小右衛門(御燈の小右衛門)と千代は許婚であった。だが、千代は小松代藩山奉行(のち次席家老)関山将監によって藩主に差し出される。小右衛門は関山を斬り城を出る。
千代は側室となり楓姫と志郎丸をもうけるが、跡目争いに生命の危険を感じ志郎丸を連れ城を出る。楓姫は北林藩へ嫁に出される。その後、小松代藩は血筋が途絶え取り潰しとなった。
北林家の正室となった楓姫は北林藩の先代藩主北林義正の病死後飛び降り自殺。
そういった事情の中での祟り話を利用し、川久保党を追い詰めた関山兵伍だったが命を落とす。そして川久保党はその地を離れ、あやかしの伝説だけが残った。
おぎんは北林藩へ向かう。つづく
《死神或は七人みさき》北林藩
又市と治平の出会い 凶事の正体 死神の誕生
飛火槍事件《船幽霊》で行動をともにした東雲右近が北林藩で最悪の体験をし、悠然と旅を満喫して江戸へ戻った百介たちの前に現れる。
百介の下に集められる情報は、9年前から起きている江戸と北林藩での残虐な凶行が、北林藩藩主弾正景亘(北林虎之進)の犯行である事を示していた。弾正景亘は四神党と名乗る4人の仲間ともに凶行に及んでいた。そのうちの2人が白虎のおきょうと朱雀のおきく《飛縁魔》である。そして、彼らは参勤交代で移動していながら、どちらでも犯行を繰り返した。しかも、毎年7人の残虐な死体が晒され、犯人がわかっていながらお咎めがない。
東雲右近に誘われ北林藩に入った百介は又市たちの大掛かりな仕掛けを目にする。
荒れ捲くっている北林藩の中へ祟りを使って人心をまとめ、城への落雷(飛火槍)により弾正景亘と四神党を討ち、それでいて藩主弾正景亘が一身に祟りを受け藩士領民を救った事にして藩を救った。新しい藩主には楓の弟の義景(志郎丸)が捜し出された。
ここで死神とされるのは弾正景亘である。彼は幼い頃、目の前で母を斬り殺される。それは彼の父親である北林義虎の命を受けた樫村兵衛(家老)の手によって行われた(彼女は樫村の元妻でもあった)成長し江戸に出た彼はそこで御燈の小右衛門が作った人形を見、それをなぞって凶行を行うようになった。
彼がそのような行動をとりながらお咎めがなかったのは、北林藩の隠し金山があったからだ。彼の後には幕府の中枢にいて金の上がりを吸い上げる黒幕が居り、彼の殺戮と凶行を揉み消していたのだ。
彼は殺人を悪い事とは感じていなかった。何の信心も持たず、祟りや妄信を信じなかった。先代の北林義政(腹違いの兄)《船幽霊》は彼により薬殺され、その正室である楓《船幽霊》は陵辱され裸で突き落とされた。これを楓の母親千代の元許婚であった小右衛門が目撃し仕掛けをはじめ、それに他の小悪党たちが乗ったのだ。
そして、作品として描かれないが、「千代田の城の鼠」裏で糸を引く黒幕との抗争に入っていくのである。
《老人火》事件から6年後の北林藩
百介生涯最後の旅行、自分の立場の自覚
百介は戯作を開板し認められるようになっていた。それに合わせたように小悪党どもは姿を消した。
樫村兵衛と御燈の小右衛門には幕引きが必要だった。互いに引いてもらうまで閉めることですら出来ずにいたのだ。百介はそこに立ち会う羽目になる。
相討ち、共倒れ。
そこに表れた黒い御行、八咫の烏。そして黒装束の女。
小右衛門の躰から火柱が上る。これは天狗の仕業とされるのだ。
「これが―今生の別れとなりやしょう」
「御行奉為」
※追記2010年01月05日
あれだ、コメント欄で「もう終わりでしょ」と答えている時点で、「後巷説百物語」がありまして2003年には直木賞受賞しているとか。もうね、調べもしないで恥ずかしい限りです。wikipedia