寿退店

久々に速水のパパから電話があった

電車内だったので鞄の中で

バイブが知らせるが出られない

店に着いてからコールする

贔屓の店で飲んでるから来いとのお誘い

大急ぎでメイクを終え

タクシーに飛び乗る


人間ドックで検査してもらったそうだ

どこも悪くなかったらしく

一ヶ月ぶりに飲むとの事


そう言えばパパが可愛がってたＭちゃんが

寿退店する

お店で見つけた彼とゴールイン


Ｍちゃんは昼はコンパニオン

夜はクラブで働いている

実家は鹿児島で

要介護のお祖母ちゃんの世話の為

度々帰っている

Ｍちゃんに母親は居ないらしく

父親がお祖母さんと同居なのだが

細かい事は近所に住むおばさんが見てくれる

おばさんも旦那さんが病気で

付きっ切りという訳にもいかない

もう少し父親がしっかり見てくれれば

私もラクになれるんだけど…

と、いつもこぼしている


嫁ぎ先は勿論東京なので

実家にもこれまでみたいに頻繁には帰れない

そうなれば父親がもっとしっかりするのでは

との期待もかかっている


ところでＭちゃんが働いてた店のママは

彼女が辞める事を口止めしていたらしい

速水のパパはその店とは長い付き合いなのに

水臭いとおかんむりだった

寿退店なら最後のご奉公じゃないけど

それを理由にお客様を呼べるのに…


私も以前勤めていた店では

事前に辞める事が決まってる場合

お客様には内緒にしてなさいとママに命じられた

それでも最後の日だけは

ご贔屓にしてもらった方達に来ていただいた


Ｍちゃんは、先輩のマイコ姐さんが

速水のパパに知らせなければ

知らない内に辞めていたって事になる

今月は忙しくて飲みに行けないと言っていたパパも

時間を作って駆け付けたのだ


しっかり者のＭちゃんだから

旦那さんは尻にしかれるかもしれない

マイコ姐さんが

「女は男を立てなければダメよ

　　　　　　　　男の上を行っちゃダメ　　　　

　　　　　　　　　　　　　私もそれで失敗したんだから…」


私とＭちゃんは大きく頷いたのだった