リッスン・トゥ・ハー

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Dublin,IRELAND(世界のドア)

2006-11-04 | 若者的字引
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レンガ造りの壁、白い柱に支えられた青緑のドア-上に分度器のような窓。何本もの尖った背の低い塀に囲まれている。呼び鈴は獅子が輪を咥えたもの。長い年月を経て獅子の牙が丸くなってしまった。鋭く睨む瞳も失った。だからといって獅子は決して悲観しない。替わりに手に入れたものだってある。俺は、と獅子は月が雲に隠れた短い闇夜の間に閉じていた瞳をかっと開いてつぶやく。俺は獅子だということを忘れようとしているのかもしれない。誰にも愛されるドア-についた装飾の一部として生きている。笑うかもしれない。奴らは俺のことをあざ笑うかもしれない、しかし。すぐに月が顔を出す。後ろで、つまり室内で甲高い笑い声。そうさ、俺はドア-なのだ、彼らを守る。ドア-なんだ、何が悪い?目を閉じる。くすんだ獅子は小さく低く唸って、輪をさらに強く噛む。


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