夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

ベストセラーとさおだけ屋

2008年02月19日 | Weblog
 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』が今までに150万部以上もの大ベストセラーになった。一流の会計士が、会計学を苦手とする、数字に弱い人のために、会計学を分かり易く解説した本だと、書かれている。
 となると、対象は我々一般人である。絶対に企業の経営者や商売人などではない。会計学を知らない経営者や商売人などあり得ない。会計学を知らないために損をしている我々が対象である。
 ところが、私にはどうにも関係の無い事ばかりである。著者の挙げている数字も計算も間違ってはいないが、どうにも生活に結び付かない。
 私がおかしいのかも知れないので、お知恵を拝借したい。

 さおだけ屋は金物屋の副業らしい。本業の商品を利用し、本業の人手と運搬具である車を使っているから、たとえさおだけが売れなくても、損はしない。売れれば、それだけ利益が挙がった事になる。こんなおいしい副業は無い。と著者は言う。
 さて、我々一般人として、その副業はどのように出来るのか。ケース別に考える。

・主婦……家事のほかに、介護や家事手伝いなどの副業をするとしよう。しかしその場合の買い物は、自分の買い物のついでなどでは出来ない。掃除や洗濯も自分の家事のついでには出来ない。それぞれに、きちんと時間を取らなければならない。
 これでは本業を利用した副業とは言えない。
・学生……大学生が家庭教師や塾の教師、テストの採点や評価などの副業をするとしよう。しかし、相手は小中学生が多く、あっても高校生どまりだ。それに対して自分の大学での勉強を利用するなどとても無理だろう。
・勤人……本業を利用した副業は御法度である。隠れてやっていて、ばれたら、処分を受けるか解雇される。これは本当に厳しい。転職にしても、同一業種は絶対に駄目で、円満退職にはならず、退職金も出ない。たとえ違う業種だとしても、元の会社は競合業種だと言い張って、退職金を支払わない算段をする。そうした訴訟は非常に多い。著者が知らない、は通用しない。

 著者は自分の例を挙げて、本業に関わる事を書いて本にすれば良いなどと脳天気に言うが、そんなのは、千人に一人くらいしか存在しない。現に出版社がそう言っている。それにもし成功して作家になれたら、副業などとは言っていられない。多分、本業は出来なくなる。

 著者は本業ではなく、あるいは趣味でもない仕事を副業にしたら、とても楽しめないし、ストレスばかりになる、と言う。本業関連の副業が出来ない事は上述したが、趣味で始めても、仕事となれば、楽しさだけでは出来ないはずだ。楽しみで出来ると言うのなら、それは趣味の範囲を出ない。仕事とはそんな甘い物ではない。
 テレビでは趣味で店を始めた、などの例を見る。しかしその人は全身全霊で仕事に打ち込んでいる。とても趣味では済まない。客だって、趣味に毛の生えたような店なら、寄り付かないだろう。
 著者はあまりにも仕事を舐めている。多分、自分が会計士の傍ら、本を出したり、それがぅまく当たって、テレビに出たり、新聞や雑誌などから依頼を受けたりで、案外気楽にそれらをこなしているから、そうした考えが生まれるのだろう。
 著者は平気で本業を利用した副業を勧めているが、もしそれで首になった人が現れたら、著者は損害賠償の責任を負う事になる。それでもよろしいのですね。
 ただ、今の所、そうした話は聞かない。多分、本業を利用して副業をするサラリーマンなどは居ないので、実害は出ていないのだろうと考えている。

 まずはタイトルが潰れているのだが、内容もまた我々の暮らしとはまるで縁が無い。企業が損得しか考えず、勘定だけで、感情抜きの考えで運営しているのは当然である。一連の不祥事を見れば一目瞭然。しかし我々は感情たっぷりの生活を送っている。もし企業のように損得だけで考えて暮らしている人がいたなら、私は到底、お近づきにはなれそうもない。企業のような不祥事を起こすような人なら顔を見るのも嫌だ。

 そんな当たり前の事が、会計士としての専門家である著者には見えないのである。ほかにも面白い事が書かれているので、この続きはまた、折を見て。