「将軍」
あきらめきれないという思いをにじませながら、ペッピーは食い下がる。
「将軍。見たでしょう、やつのあの腕を。もしもやつがベノム討伐に加わるとしたら、大きな戦力になる。ワシはやつに訓練を受けさせてみたい。いや、実を言えば、チームの一員として迎え入れたいとさえ思っておるのです」
「……ペッピー。なぜそこまで」
人を信じられるのだ、という言葉を、ペパーはぐっと飲み込んだ。
チームの一員であったピグマの、ベノムでの手ひどい裏切り。リーダーであったジェームズの最期。それを経験してもまだ、この男は飛び立とうとしている。まだ若いパイロット二人をまとめるだけでも大変だというのに、この上また、暴走族の親玉などを仲間に引き込もうというのか。なぜだ。なぜそこまでして、きみは飛ぼうとするのだ?
迷いを断ち切るように、将軍は言った。
「何といわれても、私の考えは変わらない。コーネリアは法治国家だ。私は、法に従うだけだ」
「ならば、ベノム送りということになりますね」
それまで無言だったフォックスが、口を開いた。将軍の視線が、フォックスに向き直る。
「ライラット法典によれば『反逆の者はおしなべてベノムの地におもむき、かの星を流浪すべし』とあります。これに従うならば、ファルコはベノム送り、ということになる」
困惑を隠しきれないまま、将軍は答えた。
「だが……アンドルフがベノムに基地を築き、これまでベノム送りにしてきた政治犯たちを迎え入れて反乱軍を組織していることがわかった今、これまでのように犯罪者をベノム送りにしていては、わざわざアンドルフに戦力を提供してやるようなものだ……わかっているはずだ、君たちだって……」
「だが将軍はさっき、ご自分で言われたではないですか。『法は絶対なのだ』と」
すばやく、ペッピーが言葉を投げかけた。
それを聞くと、将軍はもはや返す言葉を失ってしまったようだった。深く思索するように顎に手を当て、両目を閉じると、どっかと椅子に座り込んだ。
そのまま、しばしの時間が流れた。
大きな息をつくと、将軍は椅子を離れ、3人に背を向けながら言った。
「法は絶対だ……ファルコ・ランバルディは反逆罪。それは変わらない」
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